ココネ なう。 - 句動詞 part2
2011.02.21.
昨日は、句動詞についての全体像の話をしました。
今日は、具体的な話ということになりますが、
昨日、出席されていない方のためにポイントだけを要約しておきたいと思います。
3つあります。

第一に、句動詞は動詞+空間詞(副詞、前置詞)の形で表現されますが、
空間詞の役割は (1) 意味をさらに拡張すること、(2) 曖昧な意味を鮮明にすること、の2つです。
take は意味が広いですね。でも、ズボンの裾を詰めるという意味では take それ自体は使えません。
しかし、 take up と up を加えることでズボンの長さを詰める、という意味で使うことができます。
これは take の意味を up によってさらに拡張するというものです。
一方、 cut だけでは切り込むなのか分離するのかがわかりません。
しかし、 cut in だとか cut off といえば意味は鮮明になります。

第二のポイントは、句動詞の意味タイプは4つあるということを話しました。
これが第二のポイントです。その4つとは以下の通りです。
(1) ある状態になる(2) ある状態にさせる(3) ある状態を保持する(4) 〜してある状態になる(する)
この4つです。後で、具体的な例をあげていきます。

3つ目のポイントは、
句動詞の意味は動詞のコアイメージと空間詞のコアイメージの結合で理解するとよい、というものでした。
句動詞の働き、句動詞の意味タイプ、句動詞の意味の捉え方、この3つについては、昨日は、話しました。

今日は、さらに、具体的なお話をしたいと思います。
衣類を身につける、という場合に put on と言いますね。
ズボンをはく、帽子をかぶる、上着を着る、これらは全部 put on です。
また、装飾品や化粧品の場合にも put on を使いますね。
ところが、衣類を脱ぐ、という場合、put off ではなく、take off になります。
どうして身につけるは put on で、脱ぐは put off ではないのか?
こういった疑問がでるかもしれませんが、イメージで句動詞を捉えるとなんなく理解することができます。
put は「何かをどこかに位置させる」というイメージです。on は「接触」のイメージです。
そこで、身につけるというのは put on がぴったりです。
もし put off といえば、「どこかから分離して、そしてどこかに位置させる」という意味合いになり、
脱いだ後、どこかに衣類を置くということが含まれてしまいます。
むしろ、身に付けたものを「手にして、離す」という行為が脱ぐということなので、take off がぴったりなのです。
foundation を塗るという場合put on some foundation あるいは put some foundation on といい、
それを取るときはtake it off となりますね。
これを put it off といえば何かを離して、どこかに置くといった感じで不自然なのです。
このようにコアイメージの結合で句動詞を理解するとどうして put on と take off なのかがわかるようになります。

今日は、out を伴う表現を見ていきたいと思います。
授業のポイントは、イメージの結合の仕方に4通りがある、ということです。
第一に、 out の状態になる、come out や go out があります。
第二に、 out の状態にする、bring out や put out があります。
第三に、 out の状態を保持する、hold out, keep out があります。そして、
第四に、〜して out の状態になる(する)があり、take out などがそれに含まれます。

1つずつ見ていきましょう。come out は外から見ていれば「出てくる」のイメージがあり、
「月が現れる」「花が咲く」「結果が出る」などの意味合いになります。
The stars are out. それは星が出ている、ということですね。
His book will come out next week. 彼の本が来週出版される。また、
Everything has come out as we wanted. すべて望んだとおりになった。こんな感じです。
共通のイメージは、何かが出てくるということです。
go out になると、「出て、行く」というイメージで、外出する、電灯が消える、すたれる、こんな意味で使われます。
The fire soon went out. その火事はすぐに消えた。
That fashion went out a long time ago, and unlikely to come back.
これは、そのファッションはずっと前にすたれて、復活しそうにもない、といった感じです。
go out といえば go out with の形で「異性と付き合う」の意でよく使われますね。
She is going out with a new boyfriend. のようにです。
一緒に外に出かけるということから、付き合う、という意味に展開した例ですね。
come out も go out も意味タイプの1つで out の状態になる、ということで共通。

次に、out の状態にする、この意味タイプの動詞に bring out があります。
His report brought out the details of the accident. 彼の報告書は事故の詳細を明らかにした。
この場合、詳細を OUT の状態にしたということですね。
bring out にはこんな使い方もあります。
He coached her to bring out her wonderful singing voice.
ある男性が女性をコーチして、その女性のすばらしい歌声を引き出した、ということです。
また、out の状態にする、の bring out には
She brought out a new Broadway musical. のような使い方もあり、
彼女は新しいミュージカルを発表した、ということですね。
つまり、 bring は「何かをもたらす」そして bring out で「何かを out の状態にもたらす」
だから「出版する」「明らかにする」「才能を引き出す」こんな意味合いになるのです。
out の状態にするのタイプに put out があります。
これは「out の状態に何かを位置させる」という感覚で、いろいろな使われ方があります。
たとえば「犬を外に出して」という場合、Put that dog out. これは文字通りの意味ですね。
タバコの火を消すも put out を使い、Please put your cigarette out when you enter the room. のように使います。

3つ目の意味タイプは、out の状態を維持する、というもので
hold out がその典型です。hold は「何かを一時的に押さえておく」というのがコアです。
すると、「手を差し出す」というイメージが出てきます。
つまり、手を表に出した状態を維持すると手を差し出していることになります。
She held her hand out in welcome. 歓迎する意味で片手を差し出した、といった意味合いです。
しかし、hold out は自動詞の意味で「持ちこたえる」という状況でよく使います。
敵に攻撃されて2年間持ちこたえたという文章がありましたが、
The city held out for two years under siege. こんな文章でした。
町それ自体が自らを表にさらしてそのままの状態を維持した、といった感じでしょうか。
もちろん、I can't hold out anymore. 「もうもちこらえられないよ」ということです。

4つ目の意味タイプは、何かをして out の状態にする(なる)というもので take out が典型的です。
つまり、 take out は「何かを手にして外に出す」という take --> out の順番ですね。
The dentist took my wisdom tooth out very professionally. 歯科医は私の親知らずを見事に抜いた。こんな感じです。
Could I take your daughter out for dinner tonight?
これは「今夜あなたの娘さんを夕食にお連れしたいのですがよろしでしょうか」こんな意味合いですね。

今日は out を使った句動詞のいくつかを紹介しましたが、
動詞のコア+空間詞のコアの結びつき、これが put out や take out の本質を理解する上では必須で、
それぞれのさまざまな使い方の根底にはその結合イメージが働いている、ということです。
ほかの句動詞を扱う際にも考え方は同じです。
英語は前置詞を使う言語ですよね。これは助詞を使う日本語との大きな違いです。
句動詞の場合は前置詞というより機能的には副詞ですが、意味的には前置詞であれ副詞であれ共通したものがあるんです。
前置詞の中心的な意味は空間関係を表すということから副詞・前置詞という分け方をせず、空間詞と呼んでいます。
句動詞ほど英語的な発想のものはない、とある言語学者が話していましたがぼくも賛成です。
句動詞は意味がとらえにくいという理由から敬遠される傾向があります。

以前、話したかもしれませんが、ヒラリークリントンはある大会でオバマに勝ち目がない状況で、
次のように言いました。大統領候補者選出の戦いのときです。
I'm not going to give up, never never give in.
つまり、 give up と give in を使い、決してあきらめないということを伝えたのです。
ここで注目すべきは、give up と give in をあえて使っているということです。
give は「自分のところから何かを出す」これがコアです。
すると、 give up は何かを出して、宙にポンと投げ出す感じですね。
I'm not going to give up これは、選挙なので戦いで race です。
それを途中で放り出すようなことはしない、という意味合いですね。
そして、 never never give in この give in ですが、選挙は陣営同士の戦いです。
Obama camp と Clinton camp の戦いということで give in は「自らを出して、相手のところに入る」という感覚なんです。
だから日本語では「相手の軍門に下る」これに近いかもしれません。
She is not the type who gives in easily.こんな言い方があります。
「彼女は簡単に言うことを聞くような子ではない」こういった意味です。
who give in とは who gives SELF in で自らを give して相手のところに入るということなんです。

これは句動詞を理解するポイントですので、最後に、1つだけ例をあげて終わりにします。
The plane took off. という言い方があります。
飛行機が離陸した、ということです。この take off は自動詞です。
自動詞の場合の理解の仕方には、「自らを(SELF)」を補って考えるというのが言語学でいわれていることです。
つまり、The plane took SELF off (the ground). 飛行機は自らを take(取り込んで)、off (the ground)する
これが The plane took off. の解釈なんです。
もちろん、take off は「離陸」と覚えていてもかまいません。ただ、take off を使いきろうとすれば
take off のイメージが take off のすべての用例の背後にあるということを知るのがベストで、
The plane took off. でどうして「飛行機が離陸した」の意味になるんだろう、と疑問に思ったとき、
先ほどの「自動詞の場合は自らを take して」と解釈するんだ、と考えると納得がいくという話しです。

今日は、これぐらいで終わります。句動詞の面白さにぜひ、ぜひ注目してください。
そして、句動詞が使えるようになれば、英語的な感覚が自分のものになるはずです。
では、また、さようなら。