ココネ なう。 - 発話動詞の speak, talk, say, tell
2011.02.17.
今日は、発話動詞の speak, talk, say, tell を取り上げたいと思います。

言語は単語の数でも文法的にも有限です。でも言語で表現する状況は無限にあります。
つまり、有限で無限に立ち向かうといった感じですね。
その場合、言語には2つの原理のようなものがあります。経済性の原理と分業の原理です。
経済性の原理とは、1つの単語をできるだけ経済的に使う、つまり、いろいろな状況に同じ語を適用させるということです。
その結果、多義性という現象つまり、1つの単語に複数の意味があるといったことが言語の実情です。
run, take, get などとても使い勝手のよい動詞ですね。
broad, sweet, hot などもいろいろなものを形容するのに使われます。

でも、経済性の原理だけだと言語表現があいまいになる、そこで分業の原理が必要なのです。
つまり、差別化ということです。take よりも steal の方が具体的ですよね。
take でも「盗む」という意味が文脈的には可能ですが take illegally (不法に)これが steal です。
そして、steal よりも plagiarize のほうがより具合的。
つまり、steal one's idea [document] が plagiarize (剽窃する)ということで、
take > steal > plagiarize こんな風に専門化というか分業が行われていきます。
同じことが、move > fall > sink においても言えます。
move downward = fall そして fall in the liquid = sink つまり、sink は液体の中を下方に移動するつまり「沈む」。
このように take > steal > plagirize と move > fall > sink はパラレルの関係にあります。
ここまでの話は縦の関係、つまり、どんどん意味が具体的になるという話です。

今日のテーマの speak, talk, say, tell は横の関係、つまり、この4つはどれも基本動詞ですが
基本動詞間での差別化、差異化が問題になるということです。

では、具体的な話をします。
speak と talk の違いは何でしょうか?
Sound of Silence という名曲をご存知ですか?サイモン&ガーファンクルという人たちの曲です。
その中で、 talking without speaking というフレーズが出てきます。
talking without speaking です。つまり、手話で話しをしているという感じですね。
チンパンジーは人間の言語を理解するし人間の言語みたいなものをある程度使うこともできます。
でも、彼らは speak はできません。
子供の言語習得では how to talk が話題になり how to speak とは言いません。

つまり、speak は「言語音を出す」「しゃべる」ということです。
Could you speak a little louder? だとか Could you speak more slowly?
これは「声の出し方」を調整してくださいと依頼する表現です。
「彼女の話し声は素敵だ」これを She has a nice speaking voice. といいます。
もちろん、She speaks four languages. だと「4つの言語音を出す、つまり、4言語をしゃべる」ということですね。
電話で Can I talk to Mr. Brown? (ブラウンさんはおられますか)と相手、そして当人が電話を受けた時、
Speaking. と答えます。Talking. はまだ始まっていないんですね。「今、しゃべっているのが当人だ」ということです。
Actions speak louder than words. これは成句で「行動は言葉より雄弁である」といった意味ですが、
英語では actions speak louder つまり、声が大きいということ。発想が日本語とは少し違います。
家にオウムを飼っている人が My parrot speaks. これは人間の言語音を出す、ということですね。
もしそのオウムに親近感を持ち、会話をしている感覚があれば My parrot talks. ともいうでしょう。

つまり、 speak が「言語音を出す、しゃべる」だとすると talk は「言語的なやり取りをする」つまり、双方向のやり取りです。
言語的といっても talking without speaking というのがあるように、音声言語とは限りません。
だから、Apes can talk. といった言い方は可能なのです。(註:ape 類人猿)
TVでのトークショーなんかは典型的にやり取りが感じられます。
また、首脳会談のことを summit talks と言います。
これは、各国の首脳が膝を突き合わせて話し合うということが連想される表現ですね。
Money talks. という言い方があります。日本語では「地獄の沙汰も金次第」
つまり、地獄に行くかどうかは金がものを言うということです。
もし、Money speaks. といえばお金が人間の言語をしゃべり出すというSFになってしまいます。
Money talks. の talk にはやり取りがあるため「交渉」の意味合いが生まれるのです。
でも、talk は「言語的なやりとり」ということがポイントで、内容があるかどうかは別です。
そこで、He talked a lot but didn't say much.(彼はよくしゃべったが大したことは言わなかった)という表現があるのです。

「内容」に強調する場合はsay を使います。say の名詞形には a saying があります。
この a saying は「ことわざ」といった、内容にかかわるコトバです。
Say "Cheese." だと"Cheese" が say の中身です。

次に、 tell は内容を伝えるということまで含みます。As I said before, "...."
これは「前にいったように」という意味でその内容を "...." で表します。
ところが、tell の場合は As I told you before, "...." と you を付ける必要があります。
つまり、 tell は「ある内容を相手に伝える」ということですね。
おもしろい表現に My age is beginning to tell on me. これは一般的な表現がどうかわかりませんが、
ぼくのアメリカでの教授が使っていた表現です。つまり、「もう年ですね」ということですが、
My age is beginning to tell on me. なので「年が私に何やら告げている」ということです。

すると、英語では分業の原理に従って
「言語音を出す、しゃべる」は speak、「言語的なやり取りをする」は talk、「内容を発する」は say、
そして「内容を誰かに伝える」は tell 、ときれいに分業が行われています。
日本語だと「話す」と「言う」の区別が基本的ですが、speak / talk, say / tell の区別は明確ではありません。

このように、言語には分業の原理が働いているということを今日紹介した発話動詞を通して理解していただけたら幸いです。
分業の原理が働くということは「形が違えば、意味が違う」ということです。
同じ意味の2つの表現があれば必ずいずれかが消滅するということですね。

ぼくがこのことに気づいたきっかけは take after = resemble のとらえ方でした。
つまり、「似ている」ということを resemble とも take after とも表現できると単純に考えていたのです。
ところが、He takes after John. 「彼はジョンに似ている」といったら、米国の先生が二人は兄弟か?と聞かれたんです。
そこで、 resemble と take after の違いを調べると次のことがわかりました。
resemble は「他人のそら似」でもいいし、彼は猿に似ている、という状況でもOKです。
ところが、take after は2つの条件を満たす必要がある。
1つは、血縁関係であること、2つ目は、年下が年上に似ているということ
つまり、「お母さん、あなたに似ているね」この場合には take after は使えないということです。
また、彼は猿に似ている、という状況で take after を使うとずごく違和感がある。
そして、先ほどの2つの条件は take after によって説明できるということがわかりました。
つまり、after は時間軸で、遺伝の法則に従ってという意味合いがある。だから、血縁関係でなければならない。
年下が年上にという条件は原理的に Jane takes after her mother. のようにしないと、
誰かの後から何かを take しているということなので
年下が年上の人の容姿だとか性格を take するというのは自然な話ですね。

このように、分業の原理は、形が違えば意味が違うということにつながるのです。
今日は、これぐらいにします。

《生徒 : chatについては talk>chatと考えていいのでしょうか?》
いい質問ですね。chat は talk の部類です。announce は tell / declare は say
《生徒 : tweetは?》
それは考えてください。
では、今日もありがとう。これからも続けます。