むかしなつかし「人形劇三国志」各話へのツッコミネタバレあり

あらすじ

曹操は詔を悪用して他の武将たちを争はせやうと企むが、玄徳はそれと察して断る。
曹操は、玄徳の母を人質にしやうと図るが、淑玲が先回りをして玄徳の母を助け、徐州へとつれていく。
曹操に敗れ行き場を失つてゐた呂布は、貂蝉を使者にたて、玄徳と和議を結ばうとする。
玄徳は徐州の牧を呂布に譲らんとするが、呂布は関羽と張飛の無言の圧力を感じ取り、小沛を借り受けることにする。
曹操は、今度は袁術には玄徳を討て、と、そして玄徳には袁術を討て、といふ詔を発させる。
袁術がひつかかつてしまつたので、玄徳も動かざるを得ない。仕方なく、玄徳は張飛を城の守りに残して出陣する。
張飛は、酒の勢ひで曹豹に乱暴を働き、恨んだ曹豹は、呂布のもとに走り、徐州を売る。
張飛は、死ぬつもりで玄徳の前に出て詫びる。
一方、呂布が徐州を奪つたことを知つた袁術は、呂布に玄徳軍挟撃策をもちかける。
呂布は、承諾するが、雨に乗じた玄徳軍に逃げられてしまふ。
袁術とのあひだに亀裂が生じたことにより、呂布は、陳宮から玄徳を頼るやう進言を受け、それに従ふ。
玄徳は呂布と結び、小沛の城に入る。

一言

なんといふめまぐるしい回だらう。
裏切つては結び、結んではまた裏切るといふ、この忙しさ。
しかも、それだけではない。
今回は、玄徳と淑玲、関羽と貂蝉、そして張飛と美芳の再会といふ、なんだか桃色な展開もいろいろあるのだ。まあ、張飛と美芳の再会はそんなに桃色ぢやないけど……。
さらに張飛の胸毛も拝めるといふ、なんなんだ、この盛りだくさんな回は。

さて。

この回から、オープニングの題字がすこし変はる。これまでより線の太さにめりはりがついて、こつちの字の方が個人的には好み。特に「川本喜八郎」といふ文字のちよつと横につぶれた感じがいいんだなあ。

また冒頭、「敗軍の将」といふことで呂布が出てくるのだが……うちしほれてゐる貂蝉のうつくしいことといつたら。
玄徳と呂布のほかに曹操の地位を脅かす存在、といふことで、袁紹と袁術が出てくる。紳助竜介がそれぞれについて一言云ふんだけど、袁紹について「したたかさうな奴」はともかく、袁術について「強さう」はどうなんだ、袁術が「強さう」つて。

演義でいふと、十四回の途中から十五回の冒頭、なのだらうか。
徐晃が曹操軍に入つたりといふくだりはもちろんない。人形劇的には、これはもう前回で終はつたところなんだらうな。

玄徳が詔を偽物と見破るので、曹操は程昱にはかつて、玄徳の弱味であるところの母親を人質に取らうとするのだが、これを立ち聞きしてしまふ淑玲つて、出来過ぎ、かなあ。
このころの程昱は聲が松橋登。玄徳のことを「手強い相手になつてきましたなあ」とか云ひながらも、なんだか楽しげといふか嬉しげなのがなんとも不気味。
一応、曹操はまづ密偵をはなつて玄徳の母の存在の有無を確認し、それからわざわざ典韋に兵を率ゐさせてその身を拘束せんとする。淑玲はこの間に玄徳の母のもとにむかふ。女の足で間に合ふのか。疑問だなあ。
そして、さらに楼桑村から徐州へ向かふ。凄過ぎるぞ、淑玲! これも愛の力、なんだらうか。

特に道中のあれこれなどはなく、あつけなく玄徳の母と淑玲は徐州の城にたどりつく。
玄徳とその母の再会を見て、泣く張飛が例によつて可愛いぞ。きちんと挨拶する関羽がまたそれらしくてよし。
淑玲があらはれると、関羽が咳払ひをして、それとなく玄徳の母と張飛をその場から連れ出して、玄徳と淑玲をふたりきりにしやうとするところがいい。さういふところ、張飛は頼りにならないので、いつのまにかさういふ「気配りの人」になつてしまつたのか、それとももともとさういう人なのか……。ちよつと気になる。
玄徳の腕に抱かれた淑玲がほんとに「うつとり」つて感じで目を閉じるんだよねえ。役者だなあ。ここで、画面がほんのり桃色になる演出もなんだかすごい。ならなくてもいいのに、と思つたりもする。

そんな気配りの人つぽい関羽が、夜になつて城の外に出ると、胡弓の音がする。関羽は、「聞き覚えのある曲」と思ひ、淑玲か、とひとりごちる。えー、淑玲、胡弓とか弾くかなあ? あまりさういふ印象はない。たしなみとして、弾けたりするかなあ。
かういふ展開なので、当然弾いてゐるのは貂蝉。呂布が和議を結びたがつてゐる、といふことを知らせに来たのだといふ。
……そんなことに、貂蝉を使ふか? あり得ないなー。
あり得ないけど、ここはやはり関羽と貂蝉との再会を描きたかつたんだらうなあ。
貂蝉は、自分は今は呂布の妻でその前は董卓の妻であつた、そんな男から男へ身を任せるやうな女とはことばを交はすもけがらはしいとお思ひでせうね、とかいふやうなことを云ふ。
玄徳と淑玲のことについてはあんなに気が利くのに、ここではなにも云へない関羽がまたそれつぽくてよい。
ここの貂蝉のセリフは、「でも、あなたはわたくしを愛してゐてくださるでせう?」といふやうな感じにとれないこともない。だけど、貂蝉にさう云はれちやあなあ。
それに、貂蝉の気持ちもわかる。「初めてお会ひしてからずつと、関羽さまただお一人なのでございます」つて、そりや関羽はすてきだもの。
「はしたないことを申し上げました。お忘れ下さいまし」つて、忘れられないよ、貂蝉。
「呂布の前は董卓の妻」といふやうなことを貂蝉が云つたあと、目を閉ざす関羽もすてき。

貂蝉から、呂布が手を結びたがつてゐると聞いて、玄徳は即承諾する。しかも、徐州城を呂布に譲るつもりだとまで云ふ。張飛がいきりたつのはもちろん、関羽まで一言しやうとするけど、玄徳はがんとして耳を貸さない。陳登と曹豹が、「さすが玄徳殿」みたやうなことを云ふのがちよつとふしぎではある。曹豹はともかく、陳登、呂布でいいのか、徐州を任せるの。む、玄徳でもさう変はらないと見てゐたのかな。曹操に睨まれる、といふ点では呂布でも玄徳でも同じやうなものか。
玄徳の返事を聞いて出て行く貂蝉が、ほんの一瞬関羽の方を見るのもいい。

呂布が兵を引き連れて徐州城にあらはれ、玄徳が印璽を渡さうとする。関羽と張飛の形相を見て、受け取らないことにする呂布、といふのは、演義通り、といつていいだらうか。

ここで紳助竜介から「三国志」ミニ情報といふことで、刺史・大守・県令の説明がある。

玄徳と呂布が結んだと聞いて、今度は曹操は駆虎貪狼の計をはかる。これも演義では荀彧なのだが、人形劇では荀彧は死の直前まで出てこないからなあ。
夏侯淵が、自分が呂布を打ちに行く、といふやうなことを云ふ。このころの夏侯淵は熱血漢な感じなのかな。若い、とでも云ふか。
「勅命といふもの、まことにありがたいものよのう」といふ曹操がたまらんなあ。

袁術は袁術なので、もう即玄徳を打てといふ詔を真に受けてしまふ。
玄徳のもとにも袁術を打てといふ詔が来て、これまた曹操の計略とわかつてゐても袁術が先に動いてゐるから対応しないわけにはいかない。

演義では、関羽は相談役として必要だからついてきてもらひたい、張飛は酒癖が悪くて軽卒なところが心配だといつて、城の守りを誰にするか決めかねる玄徳だが、張飛が「酒断つから」といふので、おいていくことにする。
人形劇では、玄徳は袁術と戦ふつもりは毛頭なく、さうなると戦好きの張飛は用無し、酒癖は心配だが、けして飲まないといふ約束で城の守りを任せることになる。
張飛が残ると聞いて、ちよつと不安さうな淑玲がいいよね。

張飛は、めでたいことがあつたといふ曹豹にさそはれて、「明日から禁酒」とかいふので飲んでしまふ。
曹豹も、なあ、酔つてたんだらうなあ。
呂布の和議を受け入れることにしたとき、曹豹は「呂布将軍が来てくれれば千人力」といふやうなことを云つて喜ぶんだが、そこで張飛に難癖つけられてるんだよね。張飛に呂布の話をしてはいけないつてわかつてるはずなんだがなあ。
やはり、酒はおそろしいのだらうなあ。

演義では、曹豹の娘はすでに呂布の妻になつてゐることになつてゐるが、ここでは呂布から娘をもらひうけたいと云はれた、といふことになつてゐる。
そんなことを聞かされたら、張飛、怒るにきまつてるぢやんねえ。
演義はここでは曹豹は「女婿に免じて許していただきたい」と云ひ、誰かと問はれて、呂布である、と答へる。すると張飛が「貴様を殴ることは、呂布を殴ることだ」といふ名言を吐くんだが、ここは人形劇にはなし。いいセリフなのにねえ。

呂布に泣きつく曹豹が、まるでこどものやうだ。「顔を見てくだされぃ」とか、泣き言つぽい。

張飛はへべれけで使ひものにならない。ならないが、玄徳の母と淑玲を救はんとするのだが、曹豹はすでにこの二人を人質にとつてゐる。矛を捨てないとこの二人を斬る、と曹豹が云ふと、「捨ててはならん」といふ玄徳の母が、わかつてはゐてもやつぱりいい。淑玲も「お母様は私が守ります」とか、なんだかかつこいいぞ。

張飛は、曹豹を矛で刺して、徐州城をあとにする。

夕暮れに、ひとり泣く張飛。
え、もう夕暮れ? それともこれは朝焼けなのだらうか。
そこにあらはれる美芳がいいんだなあ。美芳、いいよなあ。
死なうとする張飛に、「どうせ死ぬのなら、玄徳さまに全部話してそれから死ねばいいぢやない」と云ふところとか、ほんとにいい。馬にまたがつて「もうお前にも会へんのかと思ふとそれはそれでつらいな」といふ張飛に、「バカ、つまんないこと云つてないで、さっさとお行き」と憎まれ口を叩いて馬の尻をはたいておきながら、張飛の背にむかつて「戻ってくるんだよ、元気で。きつとだよ」とつぶやくあたりとかも。もう、美芳、ほんとにいい女だよなあ。

張飛の告白に、「一緒に苦しまうではないか」とか云ふ玄徳つてまあ、どこまで人間ができてゐるのやら。
関羽もなあ、玄徳の母と淑玲は無事だらう、とかいふやうなことを云ふ。玄徳と関羽は、呂布の為人を理解してゐるつてことか。

袁術から玄徳を挟撃しやうと誘はれて、いろいろもらへるからつてーんで呂布は承諾する。
雨に乗じて玄徳軍はうまいこと逃げ果せる。
呂布は玄徳を見つけたものは二階級特進とか云ふけど、「二階級特進」つてなんだか不吉な響きだよね。

玄徳を倒せなかつたんだから、約束したものは渡せないといふ袁術に、呂布は「だましたのか」と怒りまくるところ、陳宮に止められる。
袁術ともことを構へねばならなくなつた呂布は、陳宮に「自分に味方してくれるものはゐるか」と問はれて、玄徳をそれとなく示唆する陳宮。

「人といふものはな、張飛、信じれば必ず信をもつて報ひてくれるものだ」つて、玄徳、いい人過ぎ! つまり、曹操のことは信じてなかつたつてことか。

玄徳が帰つてくると、徐州城内の人々がこぞつて喜んでるやうす。
玄徳の母と淑玲は、呂布と貂蝉によくしてもらつたさうだ。

呂布に徐州城をゆづられるも、玄徳は小沛へ行くといふ。
ここの呂布の聲はやさしげな感じ。そんな聲で「今後は兄弟同様仲良くして行きたいものだな」つて玄徳に云ふんだけど、それは君次第なのではないかな。

最後に、程昱と何やら謀議に及んでゐる曹操がうつる。いいぞいいぞ。

脚本

小川英
四十物光男

初回登録日

2012/11/24

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