むかしなつかし「人形劇三国志」各話へのツッコミネタバレあり

あらすじ

玄徳が荊州の大守になつたことを快く思はない荊州の豪族たちは、馬良を送り込むが、馬良は玄徳の仁徳に敬服する。
江東では、周瑜が孫権の妹・貞姫を妻合はすといふ口実で玄徳を呼び寄せ、あはよくばその命を奪ふやう孫権に献策する。
孫権からの手紙を受け取つた玄徳は、趙雲・孔明が止めても江東に行くといふ。孔明は、ならば趙雲を供に連れ、自分の策をつめた三つの錦の袋を持つていくやうに云ふ。
南徐についた玄徳は孔明のことばにしたがつてまづ一番目の袋を開け、そこにあるとほり喬国老のもとをおとづれる。孫権と周瑜とのあひだだけの謀議だつた玄徳と貞姫の婚儀のことなど、喬国老の知るよしもない。喬国老は、これまたなにも知らなかつた呉国太にこの話をしてしまひ、呉国太は自分の知らぬまになにをするのか、と、孫権と周瑜とを叱りつける。
一方貞姫はこの婚儀に納得がいかない。一夜、武装した侍女たちを連れて玄徳の寝所を襲ふが、逆に玄徳から求婚されてしまふ。
翌日、甘露寺で玄徳に会つた呉国太は一目で気に入つてしまひ、かくして玄徳と貞姫とは華燭の典を挙げることになつた。

一言

演義の第五十四回の途中から五十五回冒頭まで、あと、第五十二回から馬良登場の場面、といつたところか。
演義では、伊籍から馬良がいいつスよー、と聞いて、玄徳が馬良を召し抱へる、といつた流れなのだが、人形劇では、荊州の豪族たちが玄徳に反旗を翻さんとしてをり、その中のひとりが馬良、といふ設定。
馬良が馬家の長男といふことになつてをる。んー、普通に考へたら四男ぢやないのかな。これで打ち止めと思つたら馬謖が生まれて、「幼」といふ字を字に持つことになつた、そんな感じぢやないのかなあ。
ところで馬良、眉が白いのは当然として、鬢も白ければ、メッシュのやうに白髪が頭を走つてゐる。なんだかやうすがいいぞ。髭もなんとなく灰色つぽい。
趙雲の先導で、馬良は城中の人となる。
馬の動きまでなんだかえらさうだぞ、馬良。
そして、座り方もえらさうすぎる馬良。腰でも悪いのか、と思ふほどの姿勢の悪さだ。
でも、椅子自体がよくないのかもなあ。玄徳の座つてゐる椅子は立派だけど、馬良のはなんだか質素だもの。
かつて劉表に仕へた荊州の豪族たちが自分にしたがふ気がないのなら、自分は荊州の大守の座をしりぞき、豪族の求める人間にゆづる、などと云ふ玄徳に、趙雲は思はず「殿!」と叫ぶ。そんな趙雲に、無言で首を横に振つてみせる孔明。
孔明もまた、馬良に玄徳のことばはほんたうである、と、保証してみせる。
無論、そんなことで納得する馬良ではないが、その場はひとまづ帰ることにする。
馬良は、いろいろ修羅場をくぐり抜けてきたのかなあ。もしかしたら、蔡瑁あたりと影で丁々発止やりあつてゐたのかもしれん。玄徳と孔明とが、豪族たちのよいやうに大守を決めたがよい、といふことばをすなほには受け取ることができない。まあ、それが当然とも思ふが。
馬良は、城門を過ぎやうといふところで、兵隊たちが近寄つてくるのを、「自分を捕へにきたのだな」と読む。だが、実際はちがつて、兵隊たちは、相手がさきほど趙雲についてきた客人と知ると、礼儀正しく馬良を送り出す。
ここにおいて、馬良は、思ふ。玄徳つてバカなんぢや……ぢやなくつて、ほんとに人がいいのではないか、と。
枯れ野の中、馬上の馬良が背後を振り向く場面がなんともいい。
次の場面では、馬良は玄徳の前に頭をさげ、疑つて申し訳なかつたとか詫びてゐる。かくして玄徳は馬良を得たのだつた。
ああ、馬良、玄徳にたぶらかされてるよ!

南徐城。
やはり周瑜は黄色のイメージなんだな。
玄徳軍を攻めよ、と主張する周瑜に、「でも曹操と戦つたばかりで兵も疲弊してゐるしなあ」とかしぶる孫権。
「殿、ころんでもただ起きるわたしではございませぬ」つて、周瑜、そこはつつこんでもいいところなのかな。ころんだわけではなくて、馬から落ちたんだらう。
周瑜は、孫権の妹・貞姫をぜひ嫁にもらつてくれといつて玄徳を江東に呼び寄せ、人質にしやうといふ腹である。さうしておいて、玄徳を返してほしくば、荊州を渡せ、と、迫るつもりなのだつた。
まあ、確かに、「美人局」と云はれても云ひ返せない策ではある。
うわー、悪そーな顔で場面が切り替はるなあ、周瑜。

後ろ姿だけ見たら諸葛瑾のやうな出で立ちの呉の使者だが、聲は三谷昇。
演義では呂藩が使者となつてやつてくることになつてゐる。一旦は孫乾を使者として呉に送り、玄徳は乗り気ではないものの、孔明が「易を立てたら大吉と出た」とこの縁談を勧める。
人形劇では、そこらへんがすつぽりなくなつてゐて、孔明はどうやらこの縁談には反対の模様。
しぶい表情で孫権からの書状を読む玄徳に、「どう、なされました」つて、なぜことさらに「どう」で区切つて訊くのか、孔明よ。
孫権からの手紙を、趙雲にも読ませるか。いいのか。まあ、いいのか。
孫権の聲で読み上げられる手紙。「皇叔にぜひ妹をもらつてほしい」といふ内容なのだが、「本気ぢやないもんねー」といふのが透けて見えるのがすばらしい。
「孔明、貞姫に近づくなと忠告してくれたことがあつたな」と、玄徳が問へば、
「はい、亡き淑玲さまへの殿のお気持ちと、仁徳と礼節を尊ばれる殿のご気性、いつの日にか周瑜将軍がその殿の弱味につけこんでくると思つたからでござまいす」と、孔明は答へる。
さういふことだつたのかー。「これは危険だ」つてかういふ意味だつたのね。と、いまになつてわかる真実。あのときは貞姫に惚れてしまつたのかと思つたよ、孔明。
孔明は、江東は玄徳を人質にするか最悪殺すつもりだらうと云ふ。
趙雲は、そんなのことはればいいではありませんか、といふやうなことを云ふが、玄徳は、江東の大守である孫権からの正式な招待ゆゑ、ことはるわけにはいかないと断言する。
「さすがは江東の知恵袋の周瑜将軍、よくぞこの策に気づいたものだ」とか、妙に周瑜をほめるな、孔明。
「感心してゐる場合ではありませんぞ、孔明殿」つて、ほんとだよな、趙雲。
「危険を承知で行動しなければならないこともあるものだ」と云ふ玄徳に、
「おなじ危険なら、殿、わたくしは殿にここにとどまつていただきたいのですが」と、どこまで本気なのかわからない孔明のことば。
「いや、それはできない」、江東との戦だけは避けねばならない、といふ玄徳。
「江東にも、わたしを敵と見るものばかりとはかぎらない。心を開いて話せばきつてわかつてくれるものもゐやう」つて、さうだよなあ、玄徳はいままでさうやつてあれこれ乗り切つたり乗り切れなかつたり、まあでも最終的には生き延びてきたんだもんなあ。
「わかりました」つて、ことさら云はなくても、孔明にはわかつてゐたんだらう。
「おそらく、わたくしどもがどんなに反対しても動きますまい」と、一度は玄徳のことばを尊重する孔明。尊重しておいて、
「ですが、条件がございます」と、自分の云ひ分も通さうとする。
学んでるよな、孔明は。玄徳は一度云ひ出したらきかないもんな。とくに民の幸せとかいふことがかかはつてくると、それが玄徳の思ひ込みであらうとなんだらうと、とにかく、頑として持論を通さうとするもんな。
人形劇の孔明は、さういふ玄徳に無理強いをすることなく、しかし自分の策は策として実行していかうとstruggleしてゐる、まあ、そんな苦しんでゐるやうには見えないが、さういふ方法を取る。
……演義とかもさうか。
「まづ、趙雲殿に、同行していただきます」と、孔明が云ふと、
「当然です。殿がなんと云はれやうとついてまゐりますぞ」つて、頼もしいなー、趙雲。
「もうひとつ、わたくしの身替はりといつてはなんですが、三つの錦の袋を持つて行つてくだされ」と、いふ孔明のセリフの最後にかぶせて、オルゴール調のBGM。
「南徐に着いたら第一の袋を開き、年の暮れには第二の袋、そして、危急のときには第三の袋を開いてください。必ず役に立つはずです」つて、三本指を出す孔明。このためだけの手なのか! 贅沢だなあ。三本指の男・諸葛孔明(違。
「それは心強い」つて、本心から云つてるところかいい奴だなあ、趙雲。

南郡城の関羽と張飛。
張飛は、玄徳が趙雲を連れて江東に行つてしまつたことに憤りを隠せない。が、関羽はもうちよつと達観してゐる。
いまにも兵を引き連れて玄徳を引き戻さんとする張飛を、関羽はいさめる。
関羽の云ふことを聞き入れて、張飛は「いま自分たちにできることは、南郡城を曹操の手から守ることだ」とか云ふて、陰にひそむ間者を片付ける。
そこに居合せた勝平が、間者の落とした袋を見て、もしや自分の父親では、と、張飛を止める。勝平はなにも云はずに泣きながらその場を去る。
あとを追はうとする張飛に、「ここは自分にまかせろ」と、関羽。いいなあ。

南郡城の城壁の上。
泣いてゐる勝平に、関羽は、あの間者に顔に見覚えがあつたのか、などと問ふ。
「でもおいら、父ちやんの顔を覚えてないんだ」、と、勝平は悲しげだ。
勝平は、つねづね自分の父親は侍大将になつてゐる、と云ふてゐるが、母親の話によると、いつでも飲んだくれのダメな男だつた、といふから、どうせ間者にでもなつてゐるんだらう、と嘆く。
間者はさう悪い仕事でもないと思ふがなあ。ダメなのかなあ。
そこで関羽は、「や、わしは違ふと思ふぞ」と、云ふ。
でも錦の袋が、などと、云ひつのる勝平に、
「そんなものはなんの証拠にもならんさ。一度云はうと思つてゐたんだが、その錦の袋はな、どこにでも売つてゐる安物だ。おなじものを持つてゐるからといつて、おまへの父親とはかぎらんのだよ」つて、いつからそのセリフを用意してたんだ、関羽。もしかして、勝平と会つてから、ずつとあたためてゐたんだらうか。ついさつき思ひついたことでもなささうな喋りつぷりだ。
ほんたう、とか問ふ勝平に、
わしが嘘をついたことがあるかつて、ああ、そんなことを関羽に云はれたら、信じちやふでせう。
勝平の父は立派な大将となつて、玄徳とおなじやうに民のために戦つてゐる、「わしがさう信じてゐるぞ」と、関羽はきつぱりと云ふ。
ああ、関羽と勝平、和むわー。
ここの夕景もすばらしい。南郡城の城壁から見る山々の荒涼とした感じと、関羽と勝平の後ろ姿。

一方船上の玄徳と趙雲。
南徐にたどりつかんとするところで、第一の錦の袋を開く。
ここで第三の袋とかを間違へて開いてたら笑つちやふよな。趙雲にそんな間違ひはあり得ないか。

玄徳の供は趙雲だけと、周瑜に伝へる魯粛。
周瑜の背後の窓からは長江(だらう)を見渡せる。水上には大小の船。いいなあいいなあ。
孔明も関羽も張飛もゐないのか、と、周瑜はちよつとおどろくが、供は趙雲だけと聞いて、周瑜は玄徳は自分の策に気づかなかつたのだらうと云ふ。
周瑜は趙雲のすばらしさを知らないな。
けれども、魯粛には気がかりなことがあつた。玄徳は、陸に上がると、まづ喬国老をたづねたといふのだ。
「孔明のゐない玄徳など恐れることはない」つて、玄徳をバカにしてるなあ、周瑜。趙雲だつてゐるのになあ。
戸惑つたやうすの魯粛。納得してないな。

喬国老の屋敷。喬国老は福々しいが、どこか剣のある感じの顔立ち。
玄徳は、「喬殿」つて呼ぶんだけど、なんだか妙。
玄徳は、自分と貞姫との縁談について喬国老に相談に来ました、とか云ふ。しかし、喬国老はそんな話は聞いてゐない。その場は「最近体調を崩して出廷してゐないので」とかごまかす。

ここで紳助竜介の「江東の二喬」の説明が入る。
喬国老にはふたりの娘がゐて、いづれもまことにうつくしく、姉は孫策に嫁し、妹は周瑜の妻となつた、とか、あまりのうつくしさに花がはぢらつた、とか、さういふ話。

喬国老は、呉国太をたづねる。呉国太も寝耳に水の事態。
ふたりが玄徳と貞姫との縁談について話してゐるところを、茶など持つてきた貞姫が、廊下で聞いてしまふ。
断じて許さぬといふ呉国太。これまた頼もしい。

孫権に悪事を囁く周瑜。部屋の色といひ、孫権と周瑜との衣装といひ、全体的に黄色つぽい。
そこへなぐりこむ呉国太と喬国老。
「戦は正々堂々とおやりなさい。そんな陰謀のために姫の名まで利用するとはなにごとですか」
いや、「兵者詭道也」、だから。まあ、一国の大守ともあらうものが、美人局のやうなことをするのはなにごとか、とは思へども、な。
喬国老の右手はさきほど「孫権の自筆の手紙をこの目で見ました」といふときやうの人差し指を立てた手のままだ。
町中が玄徳と貞姫の縁談の話で持ちきりだといふ。
この話を知つてゐるのは、玄徳と趙雲だけではないのか、と、つめよる孫権に、周瑜は苦々しげに答へる。
「いえ、もうひとり、孔明が知つてをります」
多分、関羽と張飛も知つてるがなー。
「打つ手はただ一つ。この縁談を本当のものにすることです」と、喬国老は力強い。
なんか、喬国老と呉国太は夫婦のやうだなあ。
呉国太も「喬殿」と呼ぶが、やはり妙。
「娘の婿にふさはしい男かどうかは、母の私が会つたうへで決めさせてもらひます。よろしいですね」つて、母は怖いわー、呉国太。まあ、ほんたうは母ぢやないんだけど。
そして、なにも云ひ返せぬ孫権と周瑜。

城門を守る紳々竜々。玄徳をつかまへよ、といふ命を帯びてゐる。
そこへ「ほう、私をどうしたいと云ふのかな」と玄徳があらはれる。
紳々竜々は玄徳を捕へやうとするが、「なにをする馬鹿者!」と、周瑜があらはれる。自分の命令を撤回してるくせに、ひどいよ、周瑜。
しかし、周瑜みづからお出迎へ、かあ。
「実はまだ傷が痛むのですが」つて正直だなあ、周瑜。それとも嘘か。
「玄徳殿と貞姫さまの祝言といふめでたいときに寝込んでゐるわけにはまゐりませんからな」と、これまたどこまで本気なんだか、周瑜よ。周瑜を見てると、ほんとに「社交辞令」の勉強になる。
せつかく来たのに、孫権居留守、かー。
明日、孫権と一緒に呉国太に会つてほしいといふ周瑜。
玄徳は、明朝、甘露寺での再会を約す。

夜。南徐城の客舎。
そこへ、武装した女たちがあらはれる。
玄徳に起きるやう云つて、反応がないので貞姫が長刀の先で布団をのけると、そこはもぬけの殻。
「そんな物騒なものを持つて客を訪ねるのが、江東のならはしですか」と、嫌味なことをイヤミなく云ふ玄徳。
「女だてらにいさましいことですな」と、いつそ楽しげな趙雲。
趙雲は、貞姫の侍女たちに、部屋の外に押し出されてしまふ。
貞姫も黄色だな。
貞姫は、玄徳にいますぐ荊州に帰るやうに云ふが、玄徳はそれはできぬといふ。荊州の民の命がかかつてゐるからだ、と。
帰らぬなら殺す、といふ貞姫に、来たぞ、玄徳の殺し文句。
どうしていつもそんなに肩肘張つて生きてゐるんですか」と、云ひ、
「貞姫殿、ほんとはとてもさみしいのではありませんか」と、まで云ふ玄徳。
そんなこと訊かれて、「うん」つて云ふ人間がゐるとでも思つてゐるのか、玄徳よ。
「無礼者!」つて、貞姫の反応は正しい。
でも玄徳は臆面もないから、わたしも人一倍さみしがりやですからと、云ふ。さうだよな、淑玲の死んだときもそんなことひとりで夜空にむかつて叫んでたよな。
もちろん、貞姫は「黙れ」と叫ぶばかり。
そこへ「なかなかどうして手強い連中でした」と、趙雲が戻つてくる。
侍女たちは、趙雲の手によつて、庭に眠らされてゐるのらしい。手にはいくつもの長刀。
玄徳に打ち懸かる貞姫。かんたんにやられちやふがなー。
「けがらわしい、触るな!」つて、貞姫は、失礼なやつちやなあ。
ここでさらに、玄徳の殺し文句が出る。
「姫、わたしはいまはじめてあなたと結婚したくなりました」つて、ほんとかよー。
政略結婚なんて認めない、とか云ふ貞姫に、
「政略結婚ではありません。しかし、あなたがどうしてもおいやなら、そして、それを孫権殿が納得してくだされば、わたしは荊州に帰ります」と、どこまで本気なんだかわからない玄徳のことば。
「亡くなつた奥方淑玲殿とわたくしが似てゐるからですか。わたくしを身替はりにしやうと云ふのですか」と、もしかして、貞姫の懸念はそこだつたのか知らん。
ここで、玄徳、最後のダメ押し。
「それはちがひます。わたくしがほしいのは、貞姫殿、あなたです」
あら、貞姫、ちよつとぐらつときちやつた?
貞姫は、呉国太が気に入らないと孫権が玄徳を捕へるだらう、早く荊州に帰つておくべきだつたと思はないとよいがな、とか云ふやうなことを云ひ捨てて、去る。
趙雲にはこのあたりの心の機微がわかつたかのう。

甘露寺。
玄徳は、丸腰で供も連れずにあらはれる。
演義だと趙雲もついてて、それで「あの長坂坡の……」とか云はれてるはずなのになあ。あと、玄徳も服の下に鎖帷子をつけるほどの警戒つぷりだつたといふのに。
姫のことをどう思つてゐるか、との呉国太の問ひに、「うつくしい方と思つてをります、ただ、いささかわがままいつぱいのお育ちなのが気になります。わたしと一緒に暮らすことになれば、いろいろと不自由をおかけすることになりますので」つて、あくまでも空気読めないさんな玄徳。
「お待ちください、姫がわがままものだと云ひなさるのか」と、気色ばむ呉国太に、
「はい」と、身もふたもない玄徳。
姫は血筋正しい高貴の生まれゆゑつてどういふことだよ。あ、孫武からつづく家系つてさう云ひたいわけ?
「わたしが姫との祝言をのぞむのは、姫が孫家の姫君だからではありません。ただのひとりの娘さんとして、妻になつてほしい人だからです」とは、玄徳らしいとはいへ、荊州の大守としてそれはどうなの。
孫権怒つて立ち上がる。
うまくいつたぞ、といふ様子の周瑜。
廊下の外には魯粛に引き連れられた江東の兵隊たち。今にも踏ん込まうといふところ。
このあたりも、会合の最初のあたりで玄徳が呉国太に「刑手がゐては安心できない」といふやうなことを云つて、人払ひさせるはずなんだけどな。賈華あたりがpecking orderで怒られたりするんだよね。もちろん人形劇にはそんなくだりはない。
妹をただの娘だなんて無礼すぎる、この縁談を破棄してくださいと云ふ孫権に、呉国太の答へは「いいえ」だつた。
呉国太、すつかり玄徳を気に入つちやつたな。
自分の娘をわがままもの、自分がさう育てた、と、認める呉国太の器量。
「わたしにとつてもかけがへのない弟」つて、孫権、ほんとにさう思つてる?
うなづきあふ呉国太と玄徳がいい感じ。
そして、納得いかないといふやうに、左右をにらむ孫権がいいぞ。ちよつと呂布を思ひ出す目つきだ。

甘露寺の門の外で待つ趙雲。
その中あたりに、孫権が玄徳を招いてあらはれる。
石に願ひをこめて斬りつけて、石が斬れれば願ひが叶ふ、と、孫権は説明する。
玄徳の願ひは、自分を信じる人々に報ひることができるのか、幸せにすることができるのか、だつた。
孫権は、疑はしげに、「天下を制する願ひでは」とたづねるが、玄徳は否定する。
孫権、信じてないぞー。
孫権の願ひは、荊州を奪ひ王道を進むことができるか否か。
でも口に出しては、貞姫が幸せになれるかどうかを念じた、とか、心にもないことを云ふ。

華燭の典。
赤い花嫁衣装の貞姫と、その前を歩く玄徳。

といふところで終はるはずもなく、許昌に舞台がうつる。
玄徳が貞姫と結婚したことを知る曹操。
あはてることはあるまい、と、泰然自若の曹操。周瑜がはふつておくはずがないからだ、と。
程昱は、玄徳は貞姫といふ火中の栗を拾つてしまつたのでは、と云ひ、その栗が玄徳の手の中でどうはぢけるか、と、楽しげな曹操。

政略であらうとなからうと、荊州と江東とは婚姻によつて結ばれて、本来ならばその仲もさらによくなるそのはずなのだが、そんな雰囲気はまつたくなく、次回につづく。

脚本

小川英
四十物光男

初回登録日

2013/03/17

このページへのコメント

アサクラさま
コメントありがとうございます。

去年の夏に渋谷区の催しで「人形劇三国志」を再建する機会があり、それ以来少しずつ見なおしているのですが、やはり全部を見るのはなかなか難しいですね。
今後ともよろしくお願いします。

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Posted by 席主 2013年06月25日(火) 02:23:10 返信

はじめまして。
楽しく読ませてもらっています。
ちょうど図書館で見つけた人形劇三国志のDVDをひとつずつ見ているところでした。半年かけて、ただ今ようやく6巻、やっと軍師登場です。(森本レオさんの声のおかげで初登場な気がしない孔明さんですが(笑)

丁寧な鑑賞とツッコミ、これからもお待ちしております。

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Posted by アサクラ 2013年06月23日(日) 18:28:40 返信

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