『戦術・戦略・戦法って何?』
『ヒルデ』:「姉上っ!」
ナレーション :ヒルデはライネのいる執務室の扉を豪快に開いた。
『ライネ』:「ぶふぉ!」
「貴様!ノックしろとアレほど言ったではないか!心臓に悪いぞ!」
『ヒルデ』:「そんな事よりも大変なんですよ!」
『ライネ』:「そんな事と言われたのは釈然とせぬが・・・」
「仕方ない。何やら急用のようだな、話してみろ」
『ヒルデ』:「私すっごい【戦法】を思いついたんです!」
「姉上が敵の前線で耐えている間に、私が相手の後方に騎馬で回り込んで一気に・・・」
『ライネ』:「・・・ヒルデよ。」
「それは【戦法】ではなく【戦術】だ。」
『ヒルデ』:「・・・へ?」
『ライネ』:「良いか?そもそも【戦法】とは『自身や1つの小規模集合体が勝利を得る為に行う方法』だぞ?」
『ヒルデ』:「・・・・?」
『ライネ』:「・・・貴様、もしや今までそんな事も知らないで軍議に参加していたのか?」
『ヒルデ』:「・・・てへっ♪」
『ライネ』:「笑っとる場合かっ!バカモノが!」
『ヒルデ』:「だって! なんか難しくて聞く気が起こらなかったんだもん!」
『ライネ』:「仕方あるまい・・・せっかくだ。」
「その辺を少し説明してやろう」
『それぞれの思考的役割』
『ライネ』:「まず、『戦術と戦略』を1グループにして、『戦法』は別個に考えるんだ。」
『ヒルデ』:「どうしてです?」
『ライネ』:「先程言ったように『戦術と戦略』は【大きな集団で勝利を得る為の手段や方法】に対して、『戦法』は【個々や小規模で勝利を得る為の努力】を指す」
「だから根本的に『別』なのだ。」
『ヒルデ』:「・・・姉上」
『ライネ』:「どうした?」
『ヒルデ』:「まったくわかりませんっ!」
『ライネ』:「・・・仕方ないから、少し例え話をしよう。」
『ライネ』:「例え話として『格闘技』をイメージしろ。」
「お前は来月練習試合が予定されていて、相手は【勝てる可能性が低いゴリマッチョ】だとして・・・お前はどうする?」
『ヒルデ』:「・・・正直逃げたいです。」
『ライネ』:「うむ。逃げたいというのは適切な解答とも言えて、ちょっとセコい話だが【練習時間を確保する為に理由を付けて試合を先延ばしにする】というのが【戦略】とも言える。」
「そして【相手に勝つ為にどうしたら良いか】を考えて、戦い方やクセ等を研究して【相手よりも自身が有利に立つ戦い方】をするのが【戦術】だ。」
「最後に【有利に立つ戦い方を行う為には何をすべきか】と考えて、例えば【相手は持久戦に弱い】んだったら、【ランニング時間を伸ばしてスタミナを付ける】というのが【戦法】だ。」
『ヒルデ』:「イメージはできましたけど、それをゲームで行う場合ってどういう形になるんです?」
『ライネ』:「確かにな、少し具体例を出したほうが良いかもしれん。」
『このゲームにおける【戦術・戦略・戦法】』
『ライネ』:「では、まず初めにこれは非常に重要だから言っておく」
『戦略無くして戦術に価値は無く、戦術無くして戦略は成立しない。』
『戦法無くして勝利は得られない。』
『ライネ』:「具体的な話をするならば、『私達の傭兵団がとある村を攻め落とそう』となった場合の流れだ。」
「【現状の兵員数で、その村を攻め落とせるかどうか】を考えて【どうしたらその村を占領できるか】を考える事が【戦略】」
「例えば、そのクランが複数都市を持っているのなら『別働隊を陽動として別の村に大部隊で攻めて、集まってきたら離脱して本命に向かう』とかだな。」
「次に『相手が連携力が高いのであれば、どうやってその連携を崩すか』を考えて、『奇襲と強襲を多用する』であったり『攻城兵器による飽和弾幕』」
「こうやって『どうやったら勝つ事ができるか』を考える事こそが『戦術』」
「最後に、『その戦術を実行する為には、どう動くべきか』を考える事が『戦法』となる。」
『ヒルデ』:「んー・・・なんかそれ聞くと『戦法』の具体的なのがわからなくなるような・・・」
『ライネ』:「そこまで難しい事ではないよ。」
「だって、このゲームをしている時点で『戦法』は既に練習しているじゃないか。」
『ヒルデ』:「どういう事です?」
『ライネ』:「領土戦をしたいのであれば、『領土戦で使う為のユニット』を育てたり使って練習してるだろ?」
「つまり、もっと具体的に言うのであれば『そのユニットをどうしたら活躍させられるか』だったり『このユニット編成が戦いやすい』と決める。」
「それこそが『その人が持っている固有の戦法』なんだよ。」
『ヒルデ』:「あぁ! そういう事ですか!」
「つまりは・・・」
『10が答えだとして、【10という答えが戦略】で【計算式が戦術】で【計算式に入れる数字が戦法】って事ですね!』
『ライネ』:「・・・ちょっと理解しにくいが、イメージとしてはそれで良い。」
「お前のその『計算式』で例えるのであれば・・・」
『計算式が無ければ答えは出ないし、答え合わせができないなら計算の意味すら無いし、そもそも数字の数が少なければ計算に時間がかかってしまう』
「・・・っていうところだな。」
『クランマスターの責任と苦労』
『ヒルデ』:「なるほどぉ〜」
「姉上やルル様は、いっつもこういう事を考えながら作戦練ってたんですねー」
『ライネ』:「そうだとも」
「私は『クランという大きなグループに属しているメンバー全員の利益を考えて、全体を見て判断』している。」
「無闇矢鱈に他クランに宣戦布告したり、争いの火種を撒き散らすという事は『他クランから優先攻撃目標』にされてしまうのと同義だ。」
「私達クランマスターは『メンバー全体とクランの繁栄と同時に利益を与える』という事を主にしている以上、クランに害がありそうな行動等は行いたくない。」
「何故なら、クランに害があるということは『メンバー全員の被害』とも言えるからだ。」
「だからこそ、敵を極力減らしつつ領土確保を目指さないといけない関係で他クランと『不可侵』であったり『協定』を結ぶ。」
「・・・更には、人数不足による領土拡大が難しくなってしまう事もある。」
「戦略の観点からすると、無理な戦域拡大と領土拡大は相手に『戦略上の弱点』を晒す事になって、そこから傷口を広げられてしまう可能性すらある。」
「一度でも崩れてしまった基盤を治すのは、とてもとても大変な事なんだ。」
『ヒルデ』:「・・・なんか姉上も大変なんですねぇ。」
『ライネ』:「大変だとは思うさ、でもそれは『メンバー全員に利益を与えたい』という目的でやっているから別に問題は無いさ。」
「一人の非力さを知っているからこそ、味方や仲間の価値がわかるし楽しみたいと思えるのさ。」
『ヒルデ』:「なるほどぉー」
「これで私もようやく作戦会議の内容が理解できそうです!」
『ライネ』:「今まで理解しておらんかったのか!?」
『ヒルデ』:「えっ・・・・?」
「・・・・」
『ライネ』:「・・・・」
『ヒルデ』:「あっ! そういえば今日視察あるので戻りますねぇー!」
『ライネ』:「おい!貴様待たんか!」
『ヒルデ』:「それじゃ姉上っ!失礼しますっ!」
『ライネ』:「・・・はぁ。先が思いやられる。」
ーーーーーー『End』ーーーーーーーーーーーーーーーー