薄く照らされた暗がりの中、神秘の釜はコトコト揺れる。
その内に、天へ架かる虹を秘めて。
「……レオンさん、眠らないんですか?」
返答はちょろちょろと床を這い回る行為で返される。
これまでずっと共に居てくれた子蜥蜴に、そっと手を伸ばす。
袖伝いに肩の上まで駆け上り、頬にその身を摺り寄せた。
ひんやりとした感触なのに、フォズはどこかあたたさを感じる。
「……お付き合いいただけるんですか?ふふ、ありがとうございます」
眼を伏せて舌をペロリと出したレオンに、微笑を返す。
手持ち無沙汰なのは相変わらずのまま、大神官にしては少々だらしない姿勢で頬杖を突いた。
─我々に出来ることは、これで全てだ。
夜もとっぷりと更けたところで、マリアが机上に残された大量のメモをまとめあげる。
ピサロが立ち上がり、荷物と装備を再確認し始めた。
振り向いて、フォズを含む全員に言い放つ。
頭を相当使ったからか、どこか気だるげだ。
─決戦に備えるべく、全員休息につけ。
万が一を考え、首輪番を交代で一人置く。各々、全力で休め。
ピサロが提案したのは、それだった。
皆はそれぞれ細々と休憩を取ってはいたが、この一日で様々な事態が起こりすぎていた。
加えてダメ押しとばかりに頭脳労働をし、皆が休息を求めるのは仕方の無いことだろう。
少々狭いが寝台がある二階に上がり、交代で休むことにする。
長々と続いた議論に殆ど参加できていなかったフォズは、自ら最初の首輪を見張る役に申し出た。
アレフの首輪が外されてから24時間、明日の夜までの貴重な休める時間だ。
彼らの消耗は多大ではあるが、流石に一日休めばある程度は回復する。
ハーゴンに立ち向かうだけの力を、取り戻せる。
「ですけど……退屈ですねレオンさん」
それこそダーマでの勤めくらい、と口をつきそうになって慌てて口を閉ざす。
これから戦いに挑む聖職者が神に仕える身としてあるまじき発言をしてはいけないと、自重した。
沈黙が、彼女の周りで起きた数々の悲劇を思い起こさせてしまう。
忘れたい、とは言わないまでも、自由を手にするまで前向きなままでいたかった。
語らぬ相棒を手に乗せて、苦笑交じりに話しかけた。
「レオンさんとおしゃべりできたら、よかったですね」
「それでは少しだけ、お話相手を務めましょうか」
「え!?」
レオンが喋ったのかと思って、思わず眼を丸くする。
が、なんのことはない、フォズの横で壁を背にして眠っていたエイトが、囁きかけただけだった。
「しーっ。皆さんが起きてしまいます」
「あ、すいません……ではなく、エイトさん休まなくては駄目ですよ。ピサロさんがおっしゃったじゃないですか」
「……眼が覚めてしまって」
傷こそ、昼間の戦いで癒えている。
だが磨耗した精神を休ませる暇は、彼にはなかった。
眠くないはずが無い……しかし。
心にかかる霧を払いたかった。
「務めましょうか、とは言いましたが……僕が話をしたいだけ、ですね。すいませんが」
「ええ、私なんかでよければ」
エイトは足を崩し、視線を僅かに上げる。
その眼差しが何を見つめているのか、深くは知らないフォズにもなんとなく解った。
「僕は、ここに呼ばれる前から……ずっと間に合わなかったんです」
「え?」
「救えたかもしれない命を……、掌から、いくつも掬い零して」
脳裏にはチェルス、メディばあさんやオディロ院長といった、目の前で命を奪われていった顔が浮かぶ。
彼は空を、海を、大地を往く中で出会った数多くの人々の中でも、彼らのことはずっと忘れられないと、そう思っていた。
その忘れられない人々の中に仲間を─そして、主君を加える日がこうも早く来るとは、思っていなかった。
その零した命への思いひとつひとつを、エイトはぽつぽつと語る。
「……すいません、こんな話」
「いえ、わかります……私だって」
掌のレオンを、すっと胸に抱き寄せて思いを口にする。
「大切な人のこと、一人でも多くの方に覚えておいてほしいから」
「……僕もそう、思いますよ。心から」
残る絆を絶やさない。
いつまでも、その気高き魂を伝えるために。
彼らはぽつぽつと、思い出を語り合った。
「……そろそろ交代の時間ですね、お休みなさいフォズさん」
「すみません、もっと休めたはずなのに」
「なに、マリアさんと交代してからゆっくり眠りますよ」
見張りを果たしたフォズは、隣の部屋にある空いた寝台へと向かう。
と、何かを思い出したように立ち止まる。
扉を開けた姿勢から、エイトの方へ振り返った。
「エイトさん」
「?」
「これを、マリアさんに渡していただけますか?」
フォズが手渡したのは、首から提げていた装飾品。
中央の石の周りに、五つの石が飾られていた。
そのうち一つに、光が宿っている。
「ええ、わかりました」
「……きっと、あなたの思いは輝きます」
「え?」
「いえ。おやすみなさい」
扉が音を立てずに閉じられる。
エイトは目の前にその宝石、ルビスの守りを翳して見た。
光は二つ。
微かだが、輝いていた。
【E-4/勇者アリスの家一階/深夜】
【ピサロ@DQ4】
[状態]:HP2/3 MP2/3(回復中) 右腕粉砕骨折(固定、治療済み) 熟睡中
[装備]:鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー
[道具]:支給品一式 首輪×5[首輪二個 首輪(分解) 首輪×2] ピサロメモ 宿帳(トルネコの考察がまとめられている)
[思考]:ハーゴンへの復讐 世界からの脱出方法を実践する 体力・精神力の回復
※ピサロの右腕は通常の治療では完治できません。
また定期的な回復治療が必要であり、治療しないと半日後くらいからじわじわと痛みだし、悪化します。
完治にはメガザル、超万能薬、世界樹の雫級の方法が必要です。
【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:健康 MP2/3〜 回復中)熟睡中
[装備]:いかずちの杖 布の服 風のマント インテリ眼鏡 鉄の杖
[道具]:小さなメダル
[思考]:儀式の阻止 アリスを支えたい 最後の決戦の前に、アレンの最期のことを竜王本人に問う
【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP5/6〜(回復中) MP4/5〜(回復中) 左足に刺傷(ほぼ完治) 首輪なし
[装備]:ロトの剣 ロトの盾 鉄兜 風のアミュレット
[道具]:支給品一式 氷の刃 消え去り草 無線インカム
[思考]:このゲームを止めるために全力を尽くす
※左足の傷はとりあえず塞がりましたが、強い衝撃を受けると再び開く可能性があります。
【エイト@DQ8主人公】
[状態]:健康 MP1/5 首輪なし
[装備]:メタルキングの槍 はやてのリング 布の服(アリス家から調達)
[道具]:イーグルダガー 支給品一式 無線インカム ルビスの守り(命の紋章 ?の紋章 残り三つ)
[思考]:悲しみを乗り越え、戦う決意 マリア、アレンの首輪を見張る役目につく
【アリス@DQ3勇者】
[状態]:健康 MP3/5〜(回復中) 首輪なし 熟睡中
[装備]:メタルキングの剣 王者のマント 星降る腕輪
[道具]:支給品一式 ロトのしるし(聖なる守り)炎のブーメラン
祈りの指輪(あと1.2回で破損) 虹のしずくについて話す
[思考]:仲間達を守る 『希望』として仲間を引っ張る
【フォズ@DQ7】
[状態]:健康 MP4/5〜(回復中)神秘のビキニの効果によって常時回復 首輪なし 睡眠中
[装備]:天罰の杖 神秘のビキニ(ローブの下)
[道具]:支給品一式 アルスのトカゲ(レオン)奇跡の石 脱いだ下着 ドラゴンの悟り
[思考]:ゲームには乗らない ピサロとともに生きる 紋章をそろえる?
【竜王@DQ1】
[状態]:健康 MP2/3〜(回復中) 人間形態 首輪なし
[装備]:竜神王の剣
[道具]:外れた首輪(竜王)
[思考]:この儀式を阻止する 死者たちへの贖罪 脱出方法の実践
※ファルシオンは家の前にいます
※アリスの家内に以下のアイテムがあります
※以下の装備品類は、分配された可能性があります
プラチナソード 破壊の鉄球 さざなみの剣 鉄の杖 魔封じの杖
炎の盾 マジックシールド あぶないビスチェ インテリ眼鏡
84mm無反動砲カール・グスタフ(グスタフの弾→発煙弾×1 照明弾×1) ビッグボウガン(矢 0)
※以下の三つのアイテムが、フォズ・ピサロ・マリアの間で分配されました
引き寄せの杖(2) 祝福サギの杖[7] 飛びつきの杖(2)
太陽のカガミ(まほうのカガミから変異)
錬金釜 IN(雨雲の杖 太陽の石) ラーの鏡 神鳥の杖
※アリアハン城で発見した呪文書がそれぞれ変化しました
(破壊呪文の書かれた呪文書 バトロワひみつの書 虹のしずくの書 なぞの呪文書 天馬覚醒の呪文書 太陽のアイテムの書
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マリア |
エイト |
ピサロ | 143:きっと、必ずや伝説へ |
アレフ |
アリス |
フォズ | 144:口元には笑みを、胸には勇気を |