知ってるけど知らない知り合い

パパスとコニファーの二人は、北東にあるトンネルを抜けるとそこから西にある教会へとやってきていた。
最初にいた場所から距離的に近かったからというのもあるが…コニファーにはそこにいそうな仲間について心当たりがあるらしい。

「誰もいないようだな。誰かが足を踏み入れた痕跡はあるが…」
「ああ…そうみたいだな。あいつならなんとなくここにいると思ったんだがなあ」

だがしかし、教会には期待に反して誰もいないようであった。

「あいつと言うのは…先ほど話していた僧侶の？」
「ああ…スクルドっていって、超がつくほど真面目な聖職者様だよ」

ここにたどり着くまでの道すがら、パパスとコニファーは知り合いの情報について共有していた。
パパスからもたらされた情報は息子とその妻、二人の孫と光の教団の幹部、ゲマ。
それと、キラーパンサーももしかすれば息子たちの仲間かもしれないという。
一方でコニファーからもたらされた情報は、３人のかつての仲間と、二人の守護天使、一人の妖精について。
もっとも片方の天使と妖精については名前しか知らないのだが。

「これからどうする、コニファー殿。しばらくこの場に留まり他の参加者が訪れるのを待つか、あるいは北にあるトロデーン城へ向かうか…」
「そうだなあ…ん？」

ふと窓を眺めてなにかに気付くコニファー。
こちらに、二つの人影が近づいてくる。

「どうやら待つ必要はないみたいだぜ、パパスの旦那」

人影はこちらへ向かってきているようで、徐々にその風貌がはっきりとしてくる。
一人は自分とあまり歳は変わらない感じの若者。
そしてもう一人は…

「あいつは…」

その顔を、コニファーが肉眼でみたのは初めてだ。
しかし、名前は知っているし、名簿に載せられた写真ともアークから聞いた話とも一致する。
坊主のように特徴的なそのつるっぱげな頭は…

「イザヤール…アークのお師匠様か」

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

「おお、あなたは…ご主人様のお仲間の！コニファー様！」

サヴィオとイザヤールが教会へと近づくと、現れたのは二人の男性であった。
集う４人の男たち。
しかし最初に口を開いたのは、その誰でもなく、支給品の錬金釜であった。

「その釜がしゃべってるのか…？もしかしてセントシュタインの宿屋にあった、カマエルとかいう…？」

カマエルに声をかけられた男、コニファーが口を開く。
コニファーはこの錬金釜と喋ったことはない。
どうにも天使とか妖精とかそういう類の代物らしく、元の世界にいた時にコミュニケーションが取れたのはアークと、何故かそういう不思議なものが見えたり聞こえたりするポーラだけだった。

「えっと、僕はサヴィオ。今はこのカマエルの仮のご主人様…ってことになるかな」
「私はイザヤールだ。…コニファーといったか、君はアークの……」
「あー、そういった話は中でしようぜ」

そうして教会の中に入った４人は、情報交換を行う事になった。
まずはそれぞれが改めて名前を名乗り、それから知り合いの情報について共有。
サヴィオの知り合いは、共に旅をしている３人の仲間と勇者オルテガ、盗賊のカンダタにイシスの女王、そして魔王バラモス。
イザヤールについては、コニファーと重複するがアークと守護天使エルギオスの二人のみだ。

「するとこの方がコニファー殿の言っていた守護天使の一人ということか」
「ああ、顔を知らないほうのな…で、イザヤールの旦那」

パパスに対してそう答えながら、コニファーはイザヤールと向かい合う。
彼とは、色々と話をしなくてはならないだろう。

「あんたはオレ達の仲間だったアーク、そのお師匠さんで間違いないか？」
「ああ、そうだ。もっとも今は、アークと同じく人間だがな」

そこで、コニファーは首をかしげた。
何故、アークが人間になっていることを知っているのか。
彼が女神の果実を口にして人間となったのはイザヤールが死んだ後のはずだ。
疑問を浮かべるコニファーに対し、それを察したイザヤールは答えた。

「詳しい説明は省くが…私はアークの手により、運命が変わり生き延びることとなった。しかし星空の守り人となることはできず、地上で人間として生きることとなったのだ」
「ふーん…なるほどねえ」
「…女神セレシアさまを通じて、大方の事情は知った。お師匠様…エルギオスさまのこともな」
「…あんたも置いてかれたってわけか」

コニファーは表情をゆがめた。
彼は、女神セレシアの処置について納得ができなかった。
世界を救うためにその身を犠牲にしたアーク。
お師匠様を救うために仲間を裏切るふりをしながらもその身を犠牲にし奔走したイザヤール。
そんな彼らが、どうして仲間から置き去りにされるという仕打ちを受けることになる。
しかもそれでいて、あれだけ大迷惑なことをしでかしたエルギオスがイザヤールのように罰を受けずに他の天使のようにお星さまになっているというのは…

「そんな顔をするな。私は女神セレシアの意向に不満はない。地上の守り人として、人間たちを守っていきたいと思っている」
（あんたの弟子は、そう思ってないみたいだけどな…）

殊勝な態度のイザヤールを見ながら、コニファーは思う。
天使たちが星となった時、アークの瞳に浮かんでいたのは深い絶望だった。
いつも穏やかな表情を浮かべる彼のあんな表情を見たのは、イザヤールに女神の果実を奪われた時くらいだろうか。

「ともかく、人間として生を受けた私は、ウォルロ村でアークが来るのを待っていた。ひどいことをしてしまった謝罪と、私を救ってくれた礼を言うために。だが、そんな時…」
「この殺し合いに巻き込まれたってわけか」

イザヤールから話を聞き、コニファーは納得する。
彼が死亡した後の事について詳しく説明する必要があると思っていたのだが、どうやらイザヤールは大方の事情についてあの女神さまから聞かされているらしい。
それなら、こちらからこれ以上説明をする必要はないだろう。

そうしてコニファーとイザヤールの話が一段落した後、話はサヴィオが出会った魔物についての話になった。
サヴィオは名簿をパラパラとめくる。

「あっ、こいつだよ。こいつが僕を襲った魔物だ」
「ワタクシをつけ狙う、気持ち悪い奴ですよ」

サヴィオとカマエルが魔物――バルザックについて説明する。
本人の話によれば、バルザックは元々人間であったという。
しかし、進化の秘宝とやらで魔物の姿と力を手に入れたという。
そして彼は、この殺し合いを開いた黒幕、エビルプリーストの手下である可能性が高い。

「エビルプリーストの手下…接触する価値はあるかもしれないな」
「ええ！？パパス様、アレにお会いになるつもりですか！？」

パパスの言葉に、カマエルが難色を示す。
バルザックにつけ狙われている身としては、あまり接触を歓迎したくないのだろう。

「私はパパスの意見に賛成だ。人々が脅威にさらされる前に、排除する必要があると思う」

イザヤールも、パパスに賛成する。
アークと再会するという目的もあるが、同時に地上の守り人として人々を守りたいという強い思いがあった。

「コニファー殿とサヴィオ殿はどう思う」

パパスが二人の若者にも意見を促す。

「僕は会いたくないなあ。あいつカマエルのこと狙ってるし、それに前にあった時に怒らせちゃっただろうし」

サヴィオの意見は否であった。
彼は元々戦いはできるだけ避けたいと考えていたし、それにバルザックとは色々と因縁ができてしまっていたのであまり関わりたくなかった。

「オレも悪いけど行く気はないぜ」

コニファーの意見も否であった。
彼の行動方針はあくまで生き抜くことであり、やむをえない場合はともかく自発的に危険に飛び込む気はなかった。

「なあパパスの旦那、イザヤールの旦那、ここは別行動といかないかい？あんた達は敵を追う。俺達は仲間を探すってことでよ」

コニファーが提案する。
見方によってはパパスとイザヤールに面倒事を押し付けている…というより実際その通りなのだが、しかし二人に特に異論はないようだった。

「分かった。では私とパパスは南下して引き返す。コニファーとサヴィオはこの北の大陸で仲間を探す。これでいいか？」

イザヤールの言葉に、他の３人は頷いた。
異論のあるものはいないようで、それぞれ出発の準備をすることになった。

「コニファー」
「ん？なんだイザヤールの旦那」
「君の仲間…ポーラとスクルドといったか？彼女たちのことについて、出発する前に教えてくれないか」
「へえ～？女の事が知りたいって、あんた意外とムッツｒ」
「違う！アークが知己になったものがどんな人間なのか、知りたいだけだ！」
「冗談ですよ～。そんなムキになんなよ旦那」

そんなわけで、出発の準備をしながらコニファーはイザヤールに仲間の事を説明することとなった。

「ポーラは……身体を鍛えるのとアークのことが好きな奴、かな」
「ほう…アークも隅に置けないな」

天使や妖精が見えるという話は、伏せておいた。
本人も隠したがっていたし、イザヤールがそっち側の存在だとしてもあまりペラペラ話すべきではないだろう。

「あいつはアーク以外の奴をあまり信用しないからな…そのアークを襲ったあんたは気をつけた方がいいかもな」
「そうか…注意しよう」

ポーラは今どこで何をしているのだろう。
アークと離れ離れで、やっていけてるのだろうか。

「スクルドは、熱心な天使の信仰者だ。………」

それだけ言うと、コニファーは俯いて黙ってしまった。
そうしてしばらくして、再び口を開いた。

「天使を敬い、祈りを捧げる。それだけの為に生きてきたような奴なんだぜ？それなのによお…」
「…天使は星空の守り人となり、人々の記憶からも消えた」

コニファーの言葉をイザヤールが引き継ぐ形で言った。
人々はもう、天使像に祈りを捧げることはない。
信じる者は救われるという言葉がある。
しかし、誰よりも天使を信じた人間は、救われることはなかった。
最後に見たスクルドは、まるでこの世の終わりでも見たかのように絶望し、憔悴しきっていた。
こんな世界に連れてこられて、早まった真似をしていなければいいのだが…

「イザヤールの旦那。オレはエルギオスを倒して女神さまが復活した後、仲間達と離れて一人になった。それでも、あいつらは…アークは、ポーラは、スクルドは、大切な仲間だ」
「そうか…そう言ってもらえる仲間がいるのなら、私もアークの師として安心だ」
「あいつは…アークは、仲間の天使たちが星になって一人取り残された時、絶望してた。だからよ…あんたがあいつのお師匠様だってんなら、顔見せて元気づけてやってくれよ」
「ああ…勿論だ」

そうして４人の男たちは準備を整え、それぞれの道を歩み出した。
生きるため。
大切な人を守るため。
使命を果たすため
仲間を探すため。
やるべきことを見つけるため。

様々な思いを交錯させながら、彼らは歩き出す。

【B-5/トロデーン西の教会付近/午前】

【コニファー(男レンジャー)@DQ9】
[状態]健康
[装備]かりうどの弓@DQ9、毒矢×30本
[道具]支給品一式、支給品0～1（本人確認済み）
[思考]自分が生きているという感覚を保つため、とにかく生き抜く。
　　　サヴィオと仲間を探す

【サヴィオ（賢者）@DQ3】
　[状態]：MP微消費
　[装備]：ろうがぼう@DQ9
　[道具]：カマエル@DQ9　支給品一式道具0～1個
　[思考]：仲間たちと合流、バラモス@DQ3や危険な存在とはまともに戦わず脱出したい。コニファーと仲間を探す
　[備考]：元遊び人です。

【パパス@DQ5】
[状態]健康
[装備]なし
[道具] 支給品一式、支給品1～3（本人確認済み）
[思考]生死に執着はないが、思い残しはしたくない。
　　　イザヤールと共にバルザックを追う

【イザヤール@DQ9】
　[状態]：健康
　[装備]：斬夜の太刀@DQ10
　[道具]：支給品一式道具0～2個
　[思考]：アーク（DQ9主人公）と再会し、謝罪したい。パパスと共にバルザックを追う
　[備考]：死亡後、人間状態での参戦です。
　　　　　（「星のまたたき」イベントで運命が変わって生き返り、アークと再会する前です）

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060:消える足音、遠い足音	投下順	062:書院、或いは失われた夢の物語
023:ここに自分がいる限り	コニファー	077:魂へと馳せる想い
023:ここに自分がいる限り	パパス	083:小さいからだに大きな望
033:Unlucky･Strike	イザヤール	083:小さいからだに大きな望
033:Unlucky･Strike	サヴィオ	077:魂へと馳せる想い