ドラゴンクエスト・バトルロワイアルIII - さよならにさよなら
「ハッサン、さん…!?」

ゲントの民、チャモロ。
神のお告げの下、魔王ムドーの討伐に同行し、それからも夢と現実の世界を渡り歩き、ついにははざまの世界を支配する大魔王デスタムーアを仲間と共に撃破し世界を救った少年。

そんな彼は今、苦楽を共にした仲間であるハッサンとの再会を果たしていた。
無惨にも首を切り離され、物言わぬ屍と化した彼と、最悪の形で―――

◇◇◇

ハッサンは仲間たちの中で太陽のような存在であった。
出会った当初こそ粗暴でいい加減な人物だと思ったりもしたものだが、共に旅を続ける中で彼の義に厚く男気溢れる一面を幾度となく目にしてきた。

そんな彼の事をチャモロは密かに尊敬していた。
僧侶の職を極めた彼が、当初目指していた賢者の道へ進むために必要な魔法使いの職ではなく武闘家の修行を積み、今こうしてパラディンの職を極める事になったのも、
その卓越した力と体力で仲間を護りながら戦いを切り抜いていくハッサンに対して、彼なりに敬意を表した結果であった。

人として、仲間として、兄のように慕っていたハッサン。
だが、彼が動く事は最早ない。
仲間たちと談笑しながら豪快に笑う彼の姿も、強大な魔物相手にも敢然と立ち向かう彼の姿も最早見る事は叶わない。

決して受け入れがたいその事実を、受け入れなければいけない事を理解して、チャモロは泣いた。

◇◇◇

「…すみません、ハッサンさん。」

ハッサンの死を受けひとしきり泣いたチャモロ。
出来る事ならもう少し、ハッサンに縋り付いて泣いていたかったがいつまでも立ち止まっているわけにはいかない。
ハッサンの死体の姿勢を整え、分断されていた首をあるべき場所の所へ横たえる。
そして、ベッドのシーツをハッサンの死体の上にかけてやる。
本当なら埋葬して丁重に弔ってやりたいところだが、只でさえ小柄なチャモロには大柄な体躯を誇るハッサンを埋めるのは到底不可能な話であった。
このような簡易的な弔い方になってしまった事を詫びながら、チャモロはハッサンの死体の側に座り、目を閉じて静かに手を合わせる。

チャモロは願う。
このバトルロワイアルという残酷なゲームで無念にも命を落としたハッサンの魂が、偉大なるゲントの神の元へと辿り着く事を。

チャモロは誓う。
ハッサンがこのゲームに反逆するべく動こうとしていた事は想像に難くない。
無論、チャモロとて元よりそのつもりではあったが、ハッサンの死を契機に改めて強く誓う。
ハッサンの意思を継ぎ、必ずこの殺し合いを破壊し、諸悪の根源たるエビルプリーストを討つ事を。

数分に及ぶ黙祷を終えたチャモロは自らに支給された杖を片手に携えすくっと立ち上がる。
そしてシーツを被されたハッサンの死体を一瞥する。

「では…行ってきます。」

震えた声で、最後の別れの言葉を呟いたチャモロはそのまま振り返る事なく小屋を後にした。



【F-6/滝の上の一軒家前/朝】
【チャモロ@DQ6】
[状態]:健康
[装備]:ドラゴンの杖@DQ5
[道具]:支給品一式 支給品1〜2(本人確認済み)
[思考]:ハッサンの意思を継ぎ、ゲームを止める
[備考]:チャモロは少なくとも、僧侶、武闘家、パラディンをマスターしています。

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