ドラゴンクエスト・バトルロワイアルIII - 第三回放送
その瞬間、この世界の天を覆っているすべての雲が、一か所に集まり、巨大な顔を形成する。
夜になっているため、凝視しにくくなると思いきや、月光が照明代わりになる。

「いまだにしぶとく生き残ってる諸君、ご機嫌如何かな?
6時間経ったので、お休みの時間の者もいるかもしれないが、ルール通り報告させてもらうぞ。


まずは禁止エリアの追加からだ。戦いと共に、増えていくぞ。

2時間後に【D-8】【H-8】
4時間後に【H-3】
6時間後に【J-7】【F-1】だ。

これで禁止エリアは12だ。敵に気をつけるあまり迂闊に入り込むことのないようにな。
勿論狩る側も狩りに夢中になりすぎず、自分の居場所に気を遣うように。


続いて、この地で死者の仲間入りになった者の名前だ。心して聞くがよい。
スライム
デュラン
トンヌラ
アレフ
ゼシカ
サヴィオ
ヘルバトラー
イザヤール
バルザック
モリー
ゲレゲレ
フォズ
ヒューザ
ヤンガス

以上、14名だ。

ここまで来てこのペースを保てるとは、貴様たちは私の予想以上のケダモノのようだ。
正義の味方も、ならず者も殺しの快感に身を委ねて好きなように殺し合うがいい。
くだらないことを考えて殺されぬ前にな。
たとえ愛する者を殺めても、優勝すれば生きかえらせてやるぞ。
まあ、今更忠告するまでもないことだが。


では、日の出とともに、また会おう。」

雲は元の形に戻り、エビルプリーストも再び席に戻る。
そこで、ある者が近くへ現れる。

「エビルプリースト様。あのキラーマジンガはいったいどのような存在でしょうか。」

そこにいるのは紅蓮の身体を持った悪魔。
デビルプリンスが聞いてくる。

「ほう……いきなり参加者の一人に興味を持ち始めるとは、どういう風の吹きまわしだ?」

「いえ………そうではありません。新しく現れたという、キラーマジンガです。」

「何……?「新しく現れた」……だと?」
エビルプリーストは何を言っているのか分からないような顔をする。

そこへ、エビルプリーストの顔が変わる。
「フフフ……面白い存在だ………面白い………」

また同じことだ。
エビルプリーストは、復活して以来、変わった。
まるで何者かに操られているかのような挙動をたびたび見せる。

正直のところを言うと、コイツ自体はどうなってもいい。
自分はピサロのやることには反対だったが、それはそうとしてエビルプリーストに付き従いたくはなかった。
誰に操られていようが、はたまた芝居でやってることなのか。
元々大掛かりな演出を好む性格だったし、後者のことも考えられる。
だがそんなことはどうでもいい。


問題は生き返った自分も、同じように操られているのではないか。
自分もエビルプリーストも一度は勇者に滅ぼされた。

そしてエビルプリーストによって、アンドレアルやヘルバトラ―、大魔道などと共に蘇った。
今のところ自我はしっかりしている。
他のジョーカー達も、やっていることを聞く限りは自分の意思のままに動いている。

しかし、その「自分の意思」も誰かに作られたものだとしたら?
自分達は、決して関わってはいけないような強大な何かと隣り合わせにあるということになる。

それを聞くわけにもいかない。



「面白い……新たな世界………可能性………フフフ……。」

そして「面白い」の間に訳の分からない単語を交える。

「どうした?早く仕事にかかれ。それとも貴様も大魔道のようになりたいか?」

友人の名前を言われ、仕事を強制させられる。
どうやら元のエビルプリーストに戻ったようだ。
そして自分が何を聞いたか、どう答えたかはもう覚えてないらしい。


大魔道。
ヤツからの仕事を拒否したため、殺された生前からの仲間だ。


友の仇を取るためにも、すぐにでもヤツの首を刈り取ってやりたい。
不意を突けば上手くいくかもしれない。
力を見せればひょっとして自分が知らないことを教えてくれるかもしれない。

だが、それが原因で。
ヤツの後ろにいる存在に、死ぬよりもおぞましい目に遭わされるかもしれない。


全てが推測の域を超えない。だが、知らないことが多すぎる。
かつて悪魔の皇子だった者は、何も出来ず、その時を待つ。




残り、29人
Back←
156
→Next
時系列順
157:天に祈りを、地に悲しみを
投下順
エビルプリースト
179:第四回放送