山岡淳一郎 作家活動アーカイブ”時代”に”活きた人”を追い、その夢の顛末を考える政治、建築、医療、近現代史、経済、スポーツ……「21世紀の公と私」として近現代からの問題に向き合えているかエネルギー、震災、復興、メディア、医療保険などを考える

ノンフィクション作家 山岡淳一郎のWiki
執筆・講演・インタビューなどの著作記事集・取材記録も!
テーマは「自立」「21世紀の公と私」

「人と時代」のアーカイブ>山岡淳一郎の歩き方

Photo Credit: Goh Fujimaki

 山岡淳一郎はホットスポットに立つ人を見つける嗅覚がある。そういう人に出会うと、どうしてそこに立ち、なぜ立ち続けようとしているのかを追いかけたくなるのであろう。ホットスポット(特異点)は事件であったり、地域社会であったり、歴史であったり、権力であったりと色々な場面がある。
その度にホットスポットに出向き何かを感じ取ろうとし、追いかける人物のターニングポイントを知る人に会うという、生を知ろうとするスタンスは初期の頃から変わっていない。
 ノンフィクション作品として仕上がるまでに、実はジャーナリストとして取材をしている時間が長くある事が、雑誌等での初出された時期から見えてくる。
 ぜひ、彼が追いかけ、語ろうとしているものを過去の作品や活動からも感じて欲しい。
(山岡作品ライブラリアン/アーカイブ管理人/友人 磯辺 裕一)


  • サッカー − Jリーグ黎明期
  • 旅の時代
  • ボクサー
  • 甲子園・メジャーリーグ挑戦・トレーナ
  • 地域医療・医療格差
  • 建築問題
  • 医療問題(地域格差、病院再生など)
  • 歴史・政治(大正と財閥、帝都復興、資源外交など)
  • 再生(マンション、子ども兵社会復帰など)
  • 震災と再生
  • 資源と権力と外圧
  • NPOと自立支援
  • TPPと保険危機

テーマの発見、取材力、グローバルな感性が磨かれた時代。

☆ サッカー − Jリーグ黎明期
初期代表作『マリオネット』(2002年)『レッズと浦和』(1998年)などサッカーをささえる人達を取り上げる。
文章としては対象にのめり込む感じがあり、今の山岡との違いがおもしろい。

☆ 旅の時代
月刊誌の海外紀行連載などで欧州、地中海沿岸諸国、アジア、オセアニア、北中米他の世界遺産を多数取材。
『徹底取材 幸せ年金ハワイ島』(2002年)から住居・老後・地域という生活問題に関心を持っていた事が感じられる。


☆ ボクサー
『「ボクサー回流―平仲明信と「沖縄」の10年』(1999年)には、「人と時代」の原点となる要素が詰まっている。
山岡淳一郎がジャーナリストからノンフィクション作家として踏み出した作品と言える。


ホットスポットとしてスポーツでの夢、社会問題と対決する夢などを取り上げ始める。
それぞれのテーマで複数の作品があり、テーマ意識が同じでも時代の変化で語り口が変わる点がおもしろい。
景気低迷が続く中、小泉政権(2001〜2006年)の聖域なき構造改革(現在も引きずる問題も多い)から時代として変わっていったせいであろうか...

「人と時代」「21世紀の公と私」を意識し、口にするようになる。
そういう意味では、この時期の医療問題・建築問題に関する一連の作品も、分類とすれば以降のテーマに属する作品と言えるが、ここ山岡史上はテーマが固まるターニングポイント作品とする。山岡が自分の発言を固めていく、取材の場を増やしていく時代である。

☆ 甲子園・メジャーリーグ挑戦・トレーナ
チャレンジを続ける選手・監督、そしてささえる家族やスタッフが登場。その選択、自分だったらと考えさせられる。
『潜在能力を引き出す力』(2004年)では当時まだ地位の低かった、アスレチックトレーナ/フィジカルコーチ白木仁氏による工藤投手の再生を取り上げる。


☆ 地域医療・医療格差
色平哲郎、佐久病院を追いかける。『風と土のカルテ―色平哲郎の軌跡』(2002年)『命に値段がつく日―所得格差医療』(2005年)
「医療の市場化」「所得格差医療」を早い時代に取り上げ、現在の「混合診療」「TPP自由化」「国民皆保険」問題の土壌を浮き彫りにしている。


☆ 建築問題
外断熱・マンション再生などを取り上げ、住み続けるという住民の苦悩とぶつかる。
自治会会長など普通の市民がホットスポット(高齢化・住民対立・防災などの問題)に放り込まれた姿を描く。
耐震疑惑がさらに問題を広げ、法律(建築基本法)が足枷になる事に気づき、以後は社会問題の背景にある法律が作られた理由(権力者の都合)を語るようになる。
法治国家であるがゆえに、手続きを踏めば法律(財源と組織(役所・外郭団体))が作れてしまうというカラクリが見えると、誰のための法律(権力・官・民)なのかというお題目を唱えてしまう。

「人と時代」という意識は、90年代から文章にあらわれていたが、強く意識したのは2004年に『あなたのマンションが廃墟になる日』(2004年)。同時に「21世紀の公と私」を口にするようになった。その意味でターニング・ポイントであると山岡も意識している。
これに続く本である『マンション崩壊』(2006年)を読むと、ターニングポイント後、山岡が問題や提言に集中できている事が良くわかる。
マンション再生の問題は『外断熱は日本のマンションをどこまで変えるか』(2002年)の取材から始まり、『狙われるマンション』(2010年)という名著(後述)に結実していく。
マンション再生には建築・地域・自立・再生などのキーワードが含まれ、もしかしたら、山岡の終生追いかける問題になりそうである。


前から意識していた「人と時代」を共通テーマとして前面に押し出し、これを意識した活動が活発になる。
この「人と時代」という言葉があとがき・作者プロフィール・ブログタイトルで使われるようになる。
過去を振り返りながら未来に提言するために、明確に、人物の歩み(ターニングポイント)を追いかけるようになる。
今までの取材からの発展・見直し、未来への提言が『時代』を切り抜くようになる。
一方で、政権交代から始まる政治の混迷も、国会議事堂に通い見つめてきた。権力と法律に対する意識が高まっていた。
書けなかった事もあるようだが、作品への影響は大きいように感じる。
レアアースと「トリウム原子力」のゆくえも既に取材を開始していた。

☆ 医療問題(地域格差、病院再生など)
『医療のこと、もっと知ってほしい』岩波ジュニア新書(2009年)は、ジュニアにも専門家にも伝わる、彼の切り口が良く表れた名著である。


☆ 歴史・政治(大正と財閥、帝都復興、資源外交など)
金子直吉(金ぴか偉人)後藤新平(日本の羅針盤)田中角栄(資源外交)など旧勢力・権力の主流派と対決し、未来を描こうとしながら『時代』につぶされる。
どの人物もサイドを固める番頭のような人が必ずいて、私だけではないリーダシップ(公)を感じる。
取材としては、主人公に抵抗するように現れる人物とその背景に興味が向く。
彼らが作ろうとした未来が、直面した問題の解決が、今の日本への提言になっている。

=>それぞれの人物はオンライン記事でも連載



☆ 再生(マンション、子ども兵社会復帰など)
「自立」・「再生」というキーワードでの取材・講演が続く。NPO代表や来日社会活動家などの草の根から立ち上がる民の強さに魅かれていく。
記事だけで終わったものもあるが、根底に同じキーワードを感じると、別のジャンルの記事どうしもつながってくる。
現在もエコ/エネルギー対策・地域再生を提言しているが、陳腐化した法律(建築基本法)の再生のための活動も続ける。
『地球にやさしい家に住もう』(2008年)『狙われるマンション』(2010年)がこのテーマの光と影を象徴している。


「21世紀の公と私」というキーワードは2004年頃から社会問題を扱う時に意識していた。特に政界を取材している時には何度も口にしていた。
震災後(2011年3月11日)以降は、「21世紀の公と私」を言葉としても前面で謳うようになった。
「21世紀の公と私」という視点から、民で頑張る人達と、権力にしがみつく人の差が見えてきて、作品を横断して語ろうとしている事が伝わってくる。
医療格差・建築再生・後藤新平(復興)・田中角栄(資源)・NPO(自立支援)と追いかけてきた事が、どうかみ合っていくのか...

☆ 震災と再生
旺盛な福島県南相馬市の取材が続いている。震災(2011.3.11)から1年後、彼の「再生」という切り口がどういう形で現れるか楽しみだ。
MIT石井氏とのインタビュー(記事全文掲載)にも「震災と再生」に関わる対談が入っていて、人との接点を感じる。
実は、山岡はMIT石井氏のインタビューにMITを訪れた帰りの飛行機の中で震災を知った。
その後の山岡自体の行動がタンジブルな情報発信となっているのではないだろうか!?(ITメディアの管理人としてサポートを続けていく事を感じている。)
内務官僚、台湾民生長官、満鉄総裁、東京市長を歴任し、壮大な帝都復興計画を立案した不世出の政治家を描く『後藤新平 日本の羅針盤となった男』も読んで欲しい。


☆ 資源と権力と外圧
『原発と権力』(2011年9月)に続けて『田中角栄封じられた資源戦略』(2009年)を合わせて読みたい。
立法が財源を生み出し、権力を集めていく姿が良く描かれている。
日本がどう原子力政策を歩んできたかを知る一冊として、ぜひ本棚に置いておきたい本である。(また1年後・10年後どうなっているか振り返るために読み直してみたい。)
原子力発電所の建設が続いた当時、原子力の平和利用はアトム・ガンダムに見られるように、科学の最先端としてあこがれがあった。
でも逆に、制御しきれない技術は持つべきではない事をアニメの中でも語っていたように思える。
原子力研究は素粒子研究として重粒子線治療なども生まれ必要な研究である。
しかし、原子力発電は、暴走・廃棄の問題を抱えている限り、核爆弾と同じく人類の脅威になってしまう。
新規原子力発電は必要のない世界を望むが、今持っている原子力発電・核爆弾の引退への道には、権力がそこから離れる必要があると感じた。


☆ NPOと自立支援
今までのインタビュー取材をベースに『日本を大切にする仕事』(2011年4月12日)で誰かのために生きる意味と向かい合う。
この本は、2011年4月12日の震災から一ヶ月後に出版されている。あまりにタイムリーな企画で、山岡の取材が間違っていない事を感じる。
あきらめない、立ち上がろう、自分にもできるという気持ちにさせる。
この企画の間には、ウガンダの少年兵子供復帰、シンガポールへ田中角栄の資源戦略、北欧の外断熱型住宅などの海外取材が続いていたが、必ずしも本文に直接あらわれているわけではない。雑誌やオンライン記事と読み合わせると良いだろう。



☆ TPPと保険危機
『国民皆保険が危ない』『TPP が暮らしを壊す 雇用、食生活、保険・医療の危機 』で当たり前と思っていた保険制度が「時代」「外圧」につぶされそうな理由を描いている。
医者・保険は社会福祉なのに、コストである治療法・薬品・病院経営は経済活動であり、ゴールに違いがある事が良くわかる。


震災から精力的な取材や色々なメディアでの寄稿が続いた2011年だった。2012年はどこに向けての執筆が登場するのかと楽しみにしていた。
追い続けてきた南相馬市の姿が、1年を掛けてハードカバーとして登場した。
それまでも、南相馬市長・桜井勝延氏のインタビュー、詩人和合 亮一氏など幾つかの寄稿を続けてきた。

震災の後から、エネルギー政策やTPPに関する寄稿や講演を積極的にこなしてきた。
2013年には、2009年に出版した『田中角栄 封じられた資源戦略』を最新の情報をもとに大幅改稿し、改題した『『田中角栄の資源戦争』(草思社文庫)と、「ウェブ平凡」の連載「土光敏夫「改革と共生」の精神を歩く」を素材として改めて一気に書き下ろした『気骨: 経営者 土光敏夫の闘い』 (平凡社)が秀逸である。

☆ 日本が背負ったもの
山岡が書くのは、単に震災に対する警鐘本でも、原発事故対応における告発本でもない。
災害前からあった法や政策、緊急対策として定められた規制・支援には、「定めの想定外」・「机上論と現場のねじれ」の壁がある事を取り上げている。
政治のねじれという天災は被災地・南相馬だけではなく、日本の全ての市民が被災している事になる。

自身で何度も南相馬に足を運び、市長が、市民がどう壁を越える・取り壊す・避けるという選択を生の声と過去の相馬人の歴史から紐といている。
このくだりは、山岡流の「発端は過去にある」「先人に学べ」という論調である。本書の中では農政家としての二宮尊徳・宮澤賢治と桜井市長を重ね合わせる事で、判断する背景にある思想を読取ろうとしているのがおもしろい。 既刊の後藤新平・田中角栄の行動力とも、自分の中では重ねていた。
また、民の強さと哀しさと怒りとして反応したのが東北を語る詩人達(宮澤賢治、金子光晴、若松丈太郎、和合良一)の行動と言葉だった。
私が好きな部分としては、中心人物をささえる人(六角氏、父親、児玉氏など)をきちんと追いかけ、語らせている山岡得意の構成である。

壁に気付く度に、山岡の抑えた怒りが伝わってくる。
政治に関する怒りは、先に出版された「原発と権力」「震災復興の先に待ちうけているもの」で語られている。
先にこれらの本を読んだ時には、なぜここまで強い論調なのだろうと思ったが、並行して取材・執筆されていたこの本のためである事が良く分かる。

リーダとして読むか、市民として読むかで読後感は変わってくるだろう。
誰か映画にして欲しいと思うほど、ドキュメント性とドラマ性のある一冊だ。

まずは知って欲しい、そして…細くても正しい道に踏み出すためにあきらめないで欲しいと訴えているように聞こえた。

『放射能を背負って〜南相馬市長・桜井勝延と市民の選択』




直前に出版された新書では、現在の政治・日本の選択を関東大震災後と比較し、昭和恐慌・戦争という轍を踏まないように警鐘を鳴らす事から始まった。読み進めるにつれシンクロニシティ(意味のある偶然の一致)からどちらの時代の問題かと考えさせられる点が多々あった。
社会問題が生まれるのも、被害を広げるのも政治の混迷にあり、政治であるから一つのテーマだけには収まらないのであろう。
また、この本では政治家へのメッセージ(例えば「政界に入るまでの道程にあると思われる。体験の幅が狭すぎるのだ。」)も多々みられ、山岡流の喝を入れているようだ。うま味の部分だけで選んだ政策では痛い目に合う事を訴え、他にもある選択肢を見せて欲しい。
『震災復興の先に待ちうけているもの 〜平成・大正の大震災と政治家の暴走』



合わせて読んで欲しい著作(順に震災復興=>経済破綻=>権力闘争=>エネルギー政策=>医療保険=>TPP=>耐震偽装=>地球にやさしい家)




☆ 親父的リーダシップの突破力
山岡が取り上げるリーダシップは、組織としてのスマートさではなく、家長として親父としての泥臭い信頼感がある。
だからこそ、火事場のような土壇場であっても、損得勘定ではない力が発揮できたのであろうか?
確かに一家をかまえれば、また損得ではなく集まる人々は、対抗勢力や組織からすると飼い慣らせない不気味さがあり、潰しにくるのであろう。
2013年現在、家長として親父の登場までを願わなくても、土壇場であっても、損得勘定ではない人材が力を発揮できる社会であって欲しい。




このページへのコメント

 私は、山岡氏の書籍を拝読する度に、丁寧な取材とテーマに対する造詣の深さに感銘を受けています。
 特に、新著である、「国民皆保険が危ない」については、保険会社に勤務する方には、必読して貰いたいと思います。交通事故の医療現場で、保険機能が抱えてきた矛盾や、これから発生する問題を、明確に見極めることが出来るでしょう。さらに、TPPが医療に与える影響についてでは、自分がその渦中にいる事に気付いていなかっただけだ、と言うことがわかります。 医療は要です。     是非、皆様にも一読をお薦めします。

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Posted by 太陽は東から 2011年09月18日(日) 13:13:31 返信

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『放射能を背負って』(2012/4/6 朝日新聞出版)
『震災復興の先に待ちうけているもの』(2012/2/7 洋泉社新書y)
『原発と権力』(2011/9/10 ちくま新書)
『国民皆保険が危ない』(2011/8/11 平凡社新書)
『日本を大切にする仕事』(2011/4/12 英治出版)