戦時中、労組問題を抱えたW・ディズニーは「ラテン・アメリカの旅」を題材にかこつけメキシコに下請けに出した。その、音楽いっぱいの、アニメを実写の合成も試みた作品はそこそこの成功を納め、すっかり中南米づいたディズニーは再び同じ手口を試みる。それがこの作品。ドナルド・ダックが匿名の誕生日プレゼントを貰い、その8mmフィルムを映写するうち、ラテン・アメリカの珍鳥を訪れる唄と踊りの旅に誘われるという筋で、「ファンタジア」の音楽と映像表現の有機的連関を狙ったふしもあるのだが、如何せん安手の観光案内に留まっている。挿話としては最初の“寒がりペンギンのパブロ”や、後段の、メキシコのクリスマスの儀式“ラス・ポサーダス”の解説が面白い。贈物の詰まった人形フィギャータが弾けるイメージや、大きなポップ(とびだす)絵本に飛び込んでの、そのメキシコの旅の部分はまずまずのまとまりがあるが、全体的に空疎。題名の“騎士”とはドナルドに、途中から加わるアマゾンのお騒がせ小鳥アラクアン、リオのサンバ鳥ホセ・カリオカの二羽を指すが、別段、三銃士の模似をするでもなく、物語的には全く盛り上がらず終わる。肝心の音楽もサンバの他はそれほどの演奏を収めていない。
予告編
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