- 川崎町
昔、彦山川と中元寺川の間にはさまれた小高い丘陵地きんの原には、きつねが沢山いたそうです。
そのせいか、この地にはきつねにまつわる話が数多く残っています。
きんの原のふもとの上真崎(かみまさき)に、とても鉄砲撃ちの好きな猟師がいました。
ある日のこと、この猟師は猟に出かけましたが、どうしたことかその日はうさぎ一匹も
見つけることができません。猟師はいらいらして、きんの原を一日中うろうろしていましたが、
とうとう何も捕まえることができませんでした。
へとへとに疲れて、帰ろうとした時、草むらで何かが動く気配がしました。
目ざとい猟師が、そっと草むらに近づいて見ると、それは大きなきつねです。
喜んだ猟師が鉄砲を構えて撃とうとしましたが、きつねは逃げようともせず、
ただ猟師に向かって手を合わせるだけで、「どうか撃たないでください、見逃してください」
という仕草をしています。
猟師が注意して見ると、おなかの大きい身ごもったきつねでした。
「やっと見つけた獲物だ、見逃せない」“ズドン”と猟師は、きつねの必死の頼みも聞かずに
撃ってしまいました。
その晩のことです。猟師の隣家の人の夢枕に、このきつねが現れ
「私は撃たれたから仕方がありませんが、どうかお腹の赤ん坊を助けてください」
と涙ながらに頼みました。
びっくりしたこの人は急いで猟師の家に行き、
「あなたの撃ったのは親ぎつね、お腹の赤ん坊ぎつねを撃ったのではないでしょう」
と赤ん坊ぎつねをもらい受け、大事に育ててやりました。
やがて大きくなったきつねをきんの原に返してやることにしました。
きつねは幾度も後を振り返り、ぴょこんぴょこんと頭を下げて去って行きました。
それからというもの、猟師の家には不幸ばかりが続きましたが、隣家には幸運が相次ぎ
大変なお金持ちになったということです。
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