- 直方市
直方市下境の東のはずれ、丸山と呼ばれるこんもりとした小さな山頂に「権七権現」という
ほこらがあります。
むかし、下境村と接する頓野村では、水が少ないわけでもないのに、稲の穂先が枯れるという
奇妙なことが数年も続き村人たちは途方に暮れていました。
下境に住む権七は、隣村の不幸を見るに忍びず、穂先枯れの対策を立ててやることにしました。
そこで、田の水を調べたり、違う稲を植えてみたり、あらゆる手立てを講じてみたのですが、
どうしても原因をつかむことができません。
もはや神仏の力にすがるより仕方がないと決心した権七は、下境の五穀神に断食してお祈りを
続けることにしました。
そして満願の日、心身ともに疲れ果てた権七の前に神様が現われ「この土地に井戸を掘り、
その水を田に入れなさい」と告げて消えました。
権七は神様のお加護と大喜びして、村人たちと力を合わせて五穀神の境内に井戸を掘ると、
水がこんこんとわいてきました。さっそく、頓野の村人たちは山を越えて井戸の水を運び
田に入れました。するとどうしたことでしょう、すくすく育った稲はみごとな黄金の穂を
つけたのです。
権七が亡くなると、村人たちはその恩を忘れず、二つの村を結ぶ道筋にある丸山の頂上に
ほこらを造って祭りました。そのほこらはいつとはなしに「権七権現」と呼ばれるようになり、
村人たちにあがめられました。
それ以来、権七たちが掘った井戸の水を田に入れると稲が良く育つと信じられ、近隣の農民たちは、
先を争って井戸の水を持ち帰ったと伝えられています。
この地区では最近まで、稲の取り入れが終わると井戸をきれいに掃除し、丸山に登って権七を偲ぶ
お祭りをしていたということです。
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