福岡県の郷土のものがたりです。

  • 星野村

玉露の産地として知られる八女郡星野村。この村のほぼ中央、標高三百メートルの池の山は、

キャンプ施設や遊歩道、シャクナゲ園などを持つ行楽地です。

そのまんなかにある麻生池は周囲七百メートル、水清く、どんな日照りのときでもまんまんと水をたたえ、

古くから水の神として信仰を集めてきました。

むかしむかしのことです。その年は筑後に大干ばつがおこりました。せっかく植えた苗も、いまにも枯れそうです。

そこで村人たちは、麻生池に雨乞いの祈願をすることになりました。

何日くらいたったでしょうか、ある朝、村人たちは、屋根を打つ雨の音で目を覚ましました。みんな

「麻生池の神さまが願いをかなえてくださった」と喜びあったといいます。

その後もいくたびか、村は麻生池の神さまに助けられましたが、社やほこらがあるわけでもなく、

もちろん神さまの姿を見た者もいません。

ある年、一人の農夫が、どうしても神さまに会ってお礼が言いたいと思いつめ、麻生池に

「ひと目、お姿を見せてください」と願をかけました。

満願の日、池のほとりで一心に祈っていた農夫の前に、一ぴきの白蛇が現れました。

農夫は「白蛇は神の使い」だと思い、ますます熱心に祈りました。そうすると、いつの間にか音もなく

雨が降りはじめ、気がつくと、カサをかざした美しい女性がたたずんで、にっこりほほえんでいるでは

ありませんか。池の神は弁財天(七福神のなかの女の神さま)だったのです。

大喜びした農夫は、ついに神さまに会えたことに感謝して、ますます信仰を厚くしました。

このことを聞いた村人たちは、農夫の出会ったという弁財天を祭神として、社を建てました。それがいまも

麻生池の中島(なかのしま)にある弁財天社といわれています。

また、数十年前までは、信仰厚かった農夫をしのんで、村人が池のほとりに祭った小さなほこらもあった

と伝えられています。




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