福岡県の郷土のものがたりです。

  • 苅田町

平尾台のふもとに近い稲光(いなみつ)という所に小さな地蔵堂があります。ここのお地蔵さんは、なぜか目、

鼻、口がはっきりしない荒削りで、いわば未完成のお地蔵さんなのです。

昔、平尾台の青龍窟に山賊が住んでいたといいます。彼らはたびたび里にやってきては農作物をあらしたり、

物を盗んだり、時には村の娘をさらっていくのです。困り果てた村人は、等覚寺(とかくじ)の白山多賀神社の神さまに

山賊退治をお願いしました。

さっそく神さまは山賊たちを呼び、青龍窟から出ていくように申し渡しました。しかし、そこを追い出されると山賊は

住むところがなくなります。山賊たちも必死に神さまにお願いしてついに

「一晩で千体の地蔵を造れば許してやる」という約束をとりつけました。

日暮れと共に、山賊たちの地蔵造りが始まりました。平尾台の岩を次々と削り、荒々しく地蔵を刻んでいきます。

その早いこと早いこと、またたく間に九百九十九体を造りあげてしまいました。

びっくりしたのは神さま、このままでは村人の願いをききとどけることはできません。そこで一計を案じ、

タコノバチ(竹の笠)をたたいて鶏の鳴きまねをし、夜明けを装いました。今度は山賊たちが驚きました。夜明けまで

まだ間があると思っていたものですから、大あわてで青龍窟から逃げ出しました。その中で、どうしても

あきらめきれない一人の山賊は、千体めの地蔵を横抱きにして刻みながら逃げのびていきました。しかし稲光まで

きたとき、ついに力つきて、顔の部分だけを刻み残し、立ち去って行きました。

その後、村人は、この置き去りにされたお地蔵さんを、お堂を建ててまつったということです。このお地蔵さんは

いろいろなご利益があるといわれ、熱心な信者の中にはお地蔵さんの顔がくっきりとわかる人もいるそうです。

いまでも毎年八月二十三日には盛大な盆供養が行われています。

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