福岡県の郷土のものがたりです。

  • 築上町(旧椎田町)

読み方は「ちょうずをまわす」

寒田(さわだ)というのは、今の築上町椎田地方に入っている所ですが、

昔は大変に寂しい山の中でした。

その寒田に、ある時、代官がやってきて、庄屋さんの家に泊りました。

翌朝のことです。付添いの役人が、庄屋さんに向って、

「代官様に、早くちょうず(洗面の水)を回せよ」と、命じました。ところが、庄屋さんには、

ちょうずが何のことかさっぱり分かりません。そこで、家の者を集めて、ちょうずとは何かと、

いろいろ相談しましたが分かりません。困って物知りの寺子屋の先生に聞いてみると、

「ちょうずちゅうのは、長い頭ということだ。村一番の頭の長い男を回せということよ」

と、教えました。

庄屋さんは、また、家中の者を呼んでそのことを話すと、下男が、

「それは、久平ちゅうのが居りますわい。あん男は、とても頭が長うて、まるで七福神の中の

寿老人によう似ちょる」

と云いました。

「そいじゃ。そいを早う呼んでくれい」

庄屋さんは大喜びで下男に言いつけました。下男は、さっそく、その久平のところへ走りました。

やがて、久平を連れて来ました。けれども、髪がひどく汚れているので、これでは、代官様の

前には出せない、と皆で久平の髪をしきりに洗いました。そこへ、また、付添いのお役人が

やって来て、

「こりゃ、早うちょうずを回さんか、何をしているのじゃ」

と、どなりつけました。

そこで、久平は、庄屋さんに連れられて、おそる、おそる代官の前に出ました。

「代官様、ちょうずでございます」

庄屋さんは云いました。

「なに、ちょうずとな」

代官は首をひねりました。おそる、おそる、久平は、

「代官様ア、私は頭痛もちでございますゆえ、あまり早くは回せませんが・・・」

と、いって、長頭(ちょうず)を振り回しました。

「はて」

あきれかえった代官は、庄屋さんから、ちょうずの訳を聞いて、開いた口がふさがりませんでした。

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