新海誠監督のアニメーション「秒速5センチメートル」の二次創作についてのサイトです。

機上の人となったタカオが改めて招待状を見ていた。2年ぶりの日本になる。

……いや、学校を卒業して、今の師匠の店に入ってから初めての帰省。
直接的には、高校時代のクラスメートだったマツモトの結婚式に出席するためだ。
だけど、それは言っては悪いが名目で、兄の息子、タカオからしたら甥にあたる子供の5歳の誕生日や、東京で開かれるシューズショーの見学、そのほか2年の間にやった不義理をすべて解消するためだった。


いや、それらすべてを足しこんだって、すべての理由の10%にもならない。

ユキノ、が「会わせたい人がいます」とメールしてきたのだ。

タカオは25歳になっていた。したがってユキノは37歳になる。
二人はタカオが日本に帰ってきたら必ず会ってはいた。ユキノが3年前に友人とイタリア旅行に来たときに、1日だけ「自由行動」をするということでフィレンツェに住むタカオに会いに来てくれた。

明確に約束してはいなかったし、言葉で確かめ合ったこともなかった。
けれど、タカオはユキノとつながり合っていると思っていた。
それが、心の安定、支えになっていた。

「会わせたい人」とは誰だろう。
すぐに、ユキノの両親かな、と思った。
もう37歳だ。いくら晩婚化が進んでいる日本だと言っても、そろそろしびれをきらしてしまっているのかもしれない。主に、親のほうが。
しかし、四国ではなく、東京で会うという。タカオの用事がすべて東京に固まっているからなのかもしれないが。

あるいは、と思う。
もう待てなくなってしまったユキノが、別に好きな男を作り、タカオとの恋にピリオドを打つために、その男と引き合わせることを望んだ、のかもしれない。

想像しただけでいたたまれなくなる。

いったい、誰? と当然問い返したけれど、「秘密にしていたほうがいいかな。ネガティブな気持ちにはならないと思うから」とかわされてしまった。

インターネットのチャットで、文字だけの会話だから、そのニュアンスがわからない。
だけど、毅然として受け入れなければならない、とも思う。

「さて、そろそろ寝なきゃ」

夜を徹してフィンエアーは、広大なロシアの空を極東へと飛んでいた。

(つづく)

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