新海誠監督のアニメーション「秒速5センチメートル」の二次創作についてのサイトです。

披露宴のあと、もうけられたていたのがパーティーだった。
披露宴はどうしても両親・親類がいるので形式ばった形になってしまう。
そのため、中学・高校・大学、そして就職してからや、その他もろもろの若い知り合いたちをメインに集めるウェディングパーティーが、夜にセッティングされていた。

一軒家レストランを貸し切っての、立食形式。
さすが、マツモトとサトウはやることが違うな、素直に感嘆しつつも、披露宴での疑問をぜひとも解いておきたかった。

もう一つの目的は。
ユキノがこのパーティーに来るという。
高校時代の友人の出席率が高いので、必然的にそうなったのだろう。

会場はゆうに200人を超える人でいっぱいだった。

昔なつかしいヒットメドレーが流れており、その方面に疎いタカオでさえ、懐かしいと思わせるほどだった。

ひっきりなしにマツモトに来客が話しかける。あそこの場で「おまえの嫁さんは誰だ?」と聞く無神経さは、さすがに持っていない。
このもやもや、あるいは後日に持ち越したほうがいいのか……と思っていた。

ユキノは事前に所用があり、途中から少しだけ参加するという。20時半ころになる、と聞いていたので、事前にトイレで用を足していると、マツモトが入ってきた。

「おお、秋月、飲んでるか!? イタリアの話でも聞かせてくれよ」
このチャンスを逃してはいけない。

「あのさ、一つ質問があるんだが」
「ん、なんだ?」
「お前の奥さん、誰?」

あまりにも直截的な質問だったので、マツモトが吹き出した。

「あのなあ、お前さあ……」
あきれている。

「サトウって書いてあったから、てっきりあのサトウだと思ってたら、見覚えのないコで、あのサトウは親族席に座ってて……わけがわからない」

「ああ……そういうことか。そうだよな、お前は日本にいなかったしな……」

目の前の壁を凝視しながら松本は言う。

「妹なんだよ」

「へ?」

今度はタカオが間の抜けた声を出す。

「お前が知ってるサトウは姉のほう。俺たちの1つ上だろ?」

「うん」

「5年前に、俺たち別れたんだよ。険悪になったとかじゃなくて、あまりにも長い間一緒にいたせいで、恋人というより家族みたいな感覚になって。ときめかなくなったというか」

そういうもんなのかな、とタカオは思う。ユキノに対しては離れていた時間が長いせいか、まだまだ新鮮な気持ちがあるから。

「あっちも同じような気持ちになってたみたいで、話し合って友達に戻ろうかって……そしたら、あいつの妹が、俺のこと気に入ってたみたいでさ。たまに遊びに行ってたから顔見知りだったし」

「それで、妹とつきあうことに?」

「姉妹で話をして、姉は別に気にしないっていうし、俺もいきなり妹にスイッチするっていうのもためらいはあったんだけど……ま、軽いデートからはじめて、5年でこうなった」


ずっと持っていたもやもやが晴れてすっきりしたタカオが会場に戻ると、近くにサトウ姉のグループが集まっていた。ガヤガヤする話声の中に「ユキノ先生」という単語が混じる。そして、懐かしいあの声。

その輪の中にユキノが立っていた。

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