最終更新: centaurus20041122 2014年03月24日(月) 15:58:25履歴
日食まであと2週間となり、本土から来る高校の受け入れ態勢の発表があった。
仕切っているのは生徒会だけど、なにせ全員で5人しかいないから、あと数人、歓迎委員として手伝いを募集するという話だ。主に1,2年から募集するようだ。
今回の共同研究は各校、引率教師1人、生徒5名で来島するという。
宿泊場所は西之表のホテルの学校もあれば、中種子の民宿もあり、栃木の高校は中種子の民宿になっていた。普段ならサーファーたちが泊まっているところだ。
手伝いってなにをするか不思議だったが、要するに「何でも屋」のようだ。
都会とは違って、何か調達するにも、店が少ない。土地勘もない。
そのようなときに、助言や手伝いをするとのことだった。
一瞬、栃木の高校の担当に立候補しようかと考えた。
そうしたら、何気ない会話の中で明里のことを聞き出せるかもしれない。
でも。
僕は弓道部で、3年生で、しかも進学希望の1組だ。
普段と違う動きをしたら、なにか勘繰られるかもしれない。
特に澄田は、そのあたりは敏感だ。
良くも悪くも目立ってる僕が、いつもと違う動きをすると何かと面倒なことになりそうだった。
ただでさえ、心がパンクしそうに感じるときがあるのに、これ以上心に負荷をかけたくはなかった。
ここは、なにもしないほうがいいんだろうな。
教師の説明を話半分に聞きながら、外の校庭を眺めた。
南の島は年に一度の現象に、まさに世界中から観測者が集まりつつあった。
学校では日食時は特別授業として、日食観測をすることになっていた。
数日前に「日食メガネ」が配られるそうだ。
全国から来た高校の観測者には、生徒会と歓迎委員たちがアテンドする。
一緒に観測もするそうだ。
うちの高校にはもともとそういう部活がないから、そのほかの生徒は地学の授業の一環として、皆既日食を眺める、そういうことになっていた。
あとは天気次第なのだが、6月半ばというのは実に微妙な時期だ。
このあたりの、梅雨の終わりの豪雨時期でもある。
「飛行機とか、大丈夫かな」
「ん? なんの?」
独り言を聞かれて、思わず口をつぐむ。澄田に聞かれていた。
帰宅途中の、アイショップだ。
「あ、ああ……もうすぐ、日食があるだろう?」
「うんうん、一緒に観測するために本土から、3つも高校来るんだよね」
「珍しいことだから、晴れてほしいなあ、なんて思って」
「そうね」
僕の心も知らず、無邪気に澄田は微笑んだ。
日食前日。
日食観測のためにやってきた北海道、栃木、和歌山の人たちは無事に到着したという。
昼休みのあとで急な連絡があった。
6限めを切り上げ、15時から歓迎式典をグラウンドでやるそうだ。
それが急遽、全員が参列することになってしまった。
文部科学省指定のプロジェクトなので、教育委員会のえらい人とか、町長とか、たくさんの人が来賓としてくるそうだ。全国からやってきた観測隊の人たちは18名だけど、こちら側の生徒会+歓迎委員はその半分しかない。
それだと格好がつかない、というので全校生徒の招集ということになったそうだ。
帰宅部の連中はぶーぶー言ってたけれど、僕は別に何の感慨もなかった。
つまらない挨拶を聞かされるのは勘弁してほしかったけれど。
(つづく)
仕切っているのは生徒会だけど、なにせ全員で5人しかいないから、あと数人、歓迎委員として手伝いを募集するという話だ。主に1,2年から募集するようだ。
今回の共同研究は各校、引率教師1人、生徒5名で来島するという。
宿泊場所は西之表のホテルの学校もあれば、中種子の民宿もあり、栃木の高校は中種子の民宿になっていた。普段ならサーファーたちが泊まっているところだ。
手伝いってなにをするか不思議だったが、要するに「何でも屋」のようだ。
都会とは違って、何か調達するにも、店が少ない。土地勘もない。
そのようなときに、助言や手伝いをするとのことだった。
一瞬、栃木の高校の担当に立候補しようかと考えた。
そうしたら、何気ない会話の中で明里のことを聞き出せるかもしれない。
でも。
僕は弓道部で、3年生で、しかも進学希望の1組だ。
普段と違う動きをしたら、なにか勘繰られるかもしれない。
特に澄田は、そのあたりは敏感だ。
良くも悪くも目立ってる僕が、いつもと違う動きをすると何かと面倒なことになりそうだった。
ただでさえ、心がパンクしそうに感じるときがあるのに、これ以上心に負荷をかけたくはなかった。
ここは、なにもしないほうがいいんだろうな。
教師の説明を話半分に聞きながら、外の校庭を眺めた。
南の島は年に一度の現象に、まさに世界中から観測者が集まりつつあった。
学校では日食時は特別授業として、日食観測をすることになっていた。
数日前に「日食メガネ」が配られるそうだ。
全国から来た高校の観測者には、生徒会と歓迎委員たちがアテンドする。
一緒に観測もするそうだ。
うちの高校にはもともとそういう部活がないから、そのほかの生徒は地学の授業の一環として、皆既日食を眺める、そういうことになっていた。
あとは天気次第なのだが、6月半ばというのは実に微妙な時期だ。
このあたりの、梅雨の終わりの豪雨時期でもある。
「飛行機とか、大丈夫かな」
「ん? なんの?」
独り言を聞かれて、思わず口をつぐむ。澄田に聞かれていた。
帰宅途中の、アイショップだ。
「あ、ああ……もうすぐ、日食があるだろう?」
「うんうん、一緒に観測するために本土から、3つも高校来るんだよね」
「珍しいことだから、晴れてほしいなあ、なんて思って」
「そうね」
僕の心も知らず、無邪気に澄田は微笑んだ。
日食前日。
日食観測のためにやってきた北海道、栃木、和歌山の人たちは無事に到着したという。
昼休みのあとで急な連絡があった。
6限めを切り上げ、15時から歓迎式典をグラウンドでやるそうだ。
それが急遽、全員が参列することになってしまった。
文部科学省指定のプロジェクトなので、教育委員会のえらい人とか、町長とか、たくさんの人が来賓としてくるそうだ。全国からやってきた観測隊の人たちは18名だけど、こちら側の生徒会+歓迎委員はその半分しかない。
それだと格好がつかない、というので全校生徒の招集ということになったそうだ。
帰宅部の連中はぶーぶー言ってたけれど、僕は別に何の感慨もなかった。
つまらない挨拶を聞かされるのは勘弁してほしかったけれど。
(つづく)
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