新海誠監督のアニメーション「秒速5センチメートル」の二次創作についてのサイトです。

日食まであと2週間となり、本土から来る高校の受け入れ態勢の発表があった。
仕切っているのは生徒会だけど、なにせ全員で5人しかいないから、あと数人、歓迎委員として手伝いを募集するという話だ。主に1,2年から募集するようだ。

今回の共同研究は各校、引率教師1人、生徒5名で来島するという。
宿泊場所は西之表のホテルの学校もあれば、中種子の民宿もあり、栃木の高校は中種子の民宿になっていた。普段ならサーファーたちが泊まっているところだ。

手伝いってなにをするか不思議だったが、要するに「何でも屋」のようだ。
都会とは違って、何か調達するにも、店が少ない。土地勘もない。
そのようなときに、助言や手伝いをするとのことだった。

一瞬、栃木の高校の担当に立候補しようかと考えた。
そうしたら、何気ない会話の中で明里のことを聞き出せるかもしれない。

でも。

僕は弓道部で、3年生で、しかも進学希望の1組だ。
普段と違う動きをしたら、なにか勘繰られるかもしれない。
特に澄田は、そのあたりは敏感だ。

良くも悪くも目立ってる僕が、いつもと違う動きをすると何かと面倒なことになりそうだった。
ただでさえ、心がパンクしそうに感じるときがあるのに、これ以上心に負荷をかけたくはなかった。

ここは、なにもしないほうがいいんだろうな。

教師の説明を話半分に聞きながら、外の校庭を眺めた。


南の島は年に一度の現象に、まさに世界中から観測者が集まりつつあった。

学校では日食時は特別授業として、日食観測をすることになっていた。
数日前に「日食メガネ」が配られるそうだ。
全国から来た高校の観測者には、生徒会と歓迎委員たちがアテンドする。
一緒に観測もするそうだ。

うちの高校にはもともとそういう部活がないから、そのほかの生徒は地学の授業の一環として、皆既日食を眺める、そういうことになっていた。

あとは天気次第なのだが、6月半ばというのは実に微妙な時期だ。
このあたりの、梅雨の終わりの豪雨時期でもある。

「飛行機とか、大丈夫かな」

「ん? なんの?」

独り言を聞かれて、思わず口をつぐむ。澄田に聞かれていた。
帰宅途中の、アイショップだ。

「あ、ああ……もうすぐ、日食があるだろう?」

「うんうん、一緒に観測するために本土から、3つも高校来るんだよね」

「珍しいことだから、晴れてほしいなあ、なんて思って」

「そうね」

僕の心も知らず、無邪気に澄田は微笑んだ。


日食前日。

日食観測のためにやってきた北海道、栃木、和歌山の人たちは無事に到着したという。

昼休みのあとで急な連絡があった。
6限めを切り上げ、15時から歓迎式典をグラウンドでやるそうだ。
それが急遽、全員が参列することになってしまった。

文部科学省指定のプロジェクトなので、教育委員会のえらい人とか、町長とか、たくさんの人が来賓としてくるそうだ。全国からやってきた観測隊の人たちは18名だけど、こちら側の生徒会+歓迎委員はその半分しかない。

それだと格好がつかない、というので全校生徒の招集ということになったそうだ。
帰宅部の連中はぶーぶー言ってたけれど、僕は別に何の感慨もなかった。
つまらない挨拶を聞かされるのは勘弁してほしかったけれど。

(つづく)

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

各話へ直結メニュー

第1シリーズ

その他

言の葉の庭

言の葉の庭、その後。

映像





食品




書籍・電子書籍

・書籍






電子書籍(Kindle)



管理人/副管理人のみ編集できます