最終更新: centaurus20041122 2014年05月23日(金) 11:31:31履歴
貴樹と明里の結婚式は都内のホテルで行われた。
親族のみが集った中、人前式という形だ。
みんなの目の前で婚姻届に署名、捺印した。
次に指輪の交換。
これまでつけていたダミーのシルバーリングは外してあった。
プラチナリングを双方はめあって、誓いの言葉を読み上げ、無事、式は終了した。
同じホテルの宴会場でパーティーが開かれる。
出し物が次々に登場し、さながらコンサート状態だ。
明里は場慣れしていたが、貴樹やその招待客、小学校の友人たちはまるでライブ会場にきたかのような状態を体感して、ほとんどディズニーランドに来たようなものだった。
それでも、出会いの萌芽はある。
初めての同窓会で二人の「共同記者会見」を仕切っていた、小学校時代のガキ大将、稲垣はゼネコンの建築技師になっていたが、このパーティーで水野理紗と知り合い、後に結婚することになる。
が、それはまた別のお話。
宴もたけなわ。
貴樹と明里が来場者をめぐっている。
「遠野君、明里さん、おめでとう」
澄田花苗が祝福する。近田も同席していた。
「澄田も、すごいじゃん、世界一なんだろう?」
「えへへへ。まあ、そうです」
「前に言ってたじゃん、日本ではサーフィンじゃ食えないって。でも、世界一だったらいろいろ外国から話は来てるんじゃないの?」
貴樹が聞く。
「うん、まあ。でも、そういう契約関係って、日本と違ってとても細かいし、私が今お願いしている事務所だと対応しきれなくて……」
そう花苗が言うと。
「ちょっと待ってて」
明里がなにか思い立って、人ごみの中に消えてく。
「なんだろう……?」
しばらくすると、明里は背の高い紳士を連れて戻ってきた。
「花苗さん、こちらはモデル事務所のB社の統括マネージャーをやっている堤さん」
「はじめまして、B社の堤と申します。パイプライン優勝の記事は読ませていただきました」
「はあ、こんばんわ」
「実は弊社は、海外エージェンシーとも提携していて全世界規模であらゆるモデルやタレント、スポーツ選手のマネジメントをしています。澄田さんの事情は今、篠原……あ、今日からは遠野明里さんですね……聞きました。どうでしょう、弊社と契約するというのは」
いきなり降ってわいた話に花苗と近田は驚いた。芸能関係には詳しくない二人だがB社の名前は聞いたことがある。
「あ……ええと……大変ありがたいお話なんですが……私、本職は中学教師でして、海外メーカーのスポンサードとなると、いろいろ難しい問題があるんです」
そういうと、堤はうなづく。しかし。
「世界規模での契約となると、10万ドル規模になります。日本円ですと1000万。それが分野別に複数。収入的には十分と思います。教師という職にやりがいを見いだされて、ポリシーをもって続けられるのであれば、強いては申しませんが、若いうちにやれることもあると思うのですよ」
金額にも驚いたが、自分がそんな大金を生み出す力を持っている、ということに半信半疑なのも確かな花苗だった。
「考えさせていただきますか」
「もちろん。では、これを。何か質問などがあればいつでもご連絡ください」
堤は名刺を渡して去っていった。
「澄田、教師もいいけど、世界で活躍ってのもいいんじゃないの?」
貴樹が言う。
「ん……実はもう一つ問題があって」
深刻そうに花苗が言うものだから、なんだと思う。
「世界契約になると、世界ツアーを回らないといけないし、世界中のいろんな場所でスポンサーの仕事をしないといけないから、教師はやめないと無理。まあ、それはわかっていたんだけど、本拠地はハワイになるんだよね、どうしても」
「え、ハワイに住むってこと?」
貴樹が問う。
「うん、そう」
「いいじゃん、すげーよ、それ」
わくわく、といった感じで貴樹が言うと。
「よくないよ……問題大あり」
「なにが?」
「だって、私、英語、わかんないし!」
貴樹と明里はへなへなとなった。
(つづく)
親族のみが集った中、人前式という形だ。
みんなの目の前で婚姻届に署名、捺印した。
次に指輪の交換。
これまでつけていたダミーのシルバーリングは外してあった。
プラチナリングを双方はめあって、誓いの言葉を読み上げ、無事、式は終了した。
同じホテルの宴会場でパーティーが開かれる。
出し物が次々に登場し、さながらコンサート状態だ。
明里は場慣れしていたが、貴樹やその招待客、小学校の友人たちはまるでライブ会場にきたかのような状態を体感して、ほとんどディズニーランドに来たようなものだった。
それでも、出会いの萌芽はある。
初めての同窓会で二人の「共同記者会見」を仕切っていた、小学校時代のガキ大将、稲垣はゼネコンの建築技師になっていたが、このパーティーで水野理紗と知り合い、後に結婚することになる。
が、それはまた別のお話。
宴もたけなわ。
貴樹と明里が来場者をめぐっている。
「遠野君、明里さん、おめでとう」
澄田花苗が祝福する。近田も同席していた。
「澄田も、すごいじゃん、世界一なんだろう?」
「えへへへ。まあ、そうです」
「前に言ってたじゃん、日本ではサーフィンじゃ食えないって。でも、世界一だったらいろいろ外国から話は来てるんじゃないの?」
貴樹が聞く。
「うん、まあ。でも、そういう契約関係って、日本と違ってとても細かいし、私が今お願いしている事務所だと対応しきれなくて……」
そう花苗が言うと。
「ちょっと待ってて」
明里がなにか思い立って、人ごみの中に消えてく。
「なんだろう……?」
しばらくすると、明里は背の高い紳士を連れて戻ってきた。
「花苗さん、こちらはモデル事務所のB社の統括マネージャーをやっている堤さん」
「はじめまして、B社の堤と申します。パイプライン優勝の記事は読ませていただきました」
「はあ、こんばんわ」
「実は弊社は、海外エージェンシーとも提携していて全世界規模であらゆるモデルやタレント、スポーツ選手のマネジメントをしています。澄田さんの事情は今、篠原……あ、今日からは遠野明里さんですね……聞きました。どうでしょう、弊社と契約するというのは」
いきなり降ってわいた話に花苗と近田は驚いた。芸能関係には詳しくない二人だがB社の名前は聞いたことがある。
「あ……ええと……大変ありがたいお話なんですが……私、本職は中学教師でして、海外メーカーのスポンサードとなると、いろいろ難しい問題があるんです」
そういうと、堤はうなづく。しかし。
「世界規模での契約となると、10万ドル規模になります。日本円ですと1000万。それが分野別に複数。収入的には十分と思います。教師という職にやりがいを見いだされて、ポリシーをもって続けられるのであれば、強いては申しませんが、若いうちにやれることもあると思うのですよ」
金額にも驚いたが、自分がそんな大金を生み出す力を持っている、ということに半信半疑なのも確かな花苗だった。
「考えさせていただきますか」
「もちろん。では、これを。何か質問などがあればいつでもご連絡ください」
堤は名刺を渡して去っていった。
「澄田、教師もいいけど、世界で活躍ってのもいいんじゃないの?」
貴樹が言う。
「ん……実はもう一つ問題があって」
深刻そうに花苗が言うものだから、なんだと思う。
「世界契約になると、世界ツアーを回らないといけないし、世界中のいろんな場所でスポンサーの仕事をしないといけないから、教師はやめないと無理。まあ、それはわかっていたんだけど、本拠地はハワイになるんだよね、どうしても」
「え、ハワイに住むってこと?」
貴樹が問う。
「うん、そう」
「いいじゃん、すげーよ、それ」
わくわく、といった感じで貴樹が言うと。
「よくないよ……問題大あり」
「なにが?」
「だって、私、英語、わかんないし!」
貴樹と明里はへなへなとなった。
(つづく)
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