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 イタリアの高級ファッションブランドVALENTINOが、2021年3月に公開した動画。
「日本の着物の帯の上を歩くシーン」があるとして同月28日ごろから「日本ヘイト」などのバッシングを集めた。モデルをつとめたKoki,氏は木村拓哉・工藤静香両氏の次女であることで知られる。
 本動画はヴァレンティノ表参道での2021年春夏コレクション「VALENTINO COLLEZIONE MILANO(ヴァレンティノ・コレツィオーネ・ミラノ」の発売記念インスタレーションに合わせて公開されたもの。


 おそらく(未断定)発端とみられるツイートはこちらである。

 実際には本動画は日本ヘイトどころか、1978年の寺山修司監督の日本映画『草迷宮』をオマージュしたもので、同映画にも帯の上を歩くシーンが登場する。このことは事前にアナウンスされた事実であり、後付けの言い訳ではない。
 VALENTINNO側は謝罪文上で、使用した布を「帯ではない」としている。


 元ネタが帯であるとすると、「帯ではない」ということの方が炎上による言い訳のようにも思える。しかし冷泉彰彦氏はNewsweek日本版で、同映画の原作(泉鏡花、1908)では帯ではなく「布」となっていることを指摘して全く嘘とも言えないとしている。
 ただしVALENTINOのいわんとするところは「撮影用のフェイクで本物の帯ではない」という散文的な意味に過ぎない可能性ももちろんあるだろう。

 また、日本にとって敵対的イメージのないイタリアのブランドに「日本ヘイト」というのがそぐわないことがバッシング側も気になっていたのか、カメラマンが中国人である旨の情報が一部SNSユーザーの間で拡散されている。しかし実際には件の中国人カメラマン・Fish Zhang氏は静止写真担当のカメラマンであり、写真の方には別に帯を踏むシーンはない。


 しかし、おそらくこれらよりも本質的なことがある。
そもそもこの動画はファッションショーを動画化したような性質のものであり、ファッションショーとは現代アート的な意味不明性を豊富に持っているものなのだ。そして現代アートにおいてこの手の「何かを目的外使用する」ことは定番と言ってもいいテクニックなのである。
 このことが「炎上拡散」によって動画を見かけただけのファッションショーにも現代アートにも疎い人々には理解されず、短絡的な「日本ヘイト」として捉えられてしまったということであろう。
 だが実際にその部分を指摘して反批判を返すことは、炎上当事者には困難である。
 なぜならファッションショーの芸術性や現代アートへの理解度は、イメージの上では「教養」「社会的地位」と色濃く結びついているために、一般国民のコンプレックスを刺激して、さらにバッシング側を逆上させることになりかねないことを恐れるからだ。

 しかし現代のネット環境のもとでは、大衆が短絡的な「道徳」とアートを勝手に結び付けてバッシングに走ることが少なくない。
 このような風潮の抑制のためには、冷静な第三者による繰り返しの指摘が肝要であると考えられる。

参考リンク・資料:
Kōki,がヴァレンティノのキャンペーンに登場! 寺山修司の映画がインスピレーション源に
「ヴァレンティノ」着物の帯を想起させるヴィジュアル削除、批判受けて謝罪コメントを発表
キムタクの次女、海外ブランドの広告で着物を踏みつける日本ヘイト表現で炎上 #ヴァレンティノによる帯踏み日本ヘイトに抗議します
ヴァレンティノ炎上CMで、踏まれているのは「帯」なのか「布」なのか?
帯踏み広告撮影が中国人はデマで日本人!水原希子の『和室炎上』画像も
[[着物の帯を踏むヴァレンティノ広告の元ネタ映画[草迷宮]のシーン>https://tomoful.blog/obi-valentino/]]

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