Censoyclopedia:センサイクロペディア - 【ハーフの子を産みたい方に。】
 呉服店「銀座いせよし」の2016年の広告キャッチコピー。2016年の東京コピーライターズクラブ新人賞受賞作品。
 着物という通常「お上品ぶった」イメージの商品に、あえて女性の生々しい本音の欲望を鋭く突いたコピーに仕上がっているものだったが、とっくに使用を終えた2019年6月19日に突如ネットで「炎上」した。
 銀座いせよし側は「これまで着物にあまり関心を持たなかった方にも目を向けて頂きたいという意図で制作したもの」と説明している。

 いせよしは当時、5種類のポスターを使用しており、他の4種類のキャッチコピーは以下の通りである。

「着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる。」

「ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる。」

「スマホでしか撮らなかったことを、久しぶりに後悔した。」

「着るという親孝行もある。」

 いせよし側の言う通り、この広告は確かに「これまで着物にあまり関心を持たなかった方」に訴求するためのものである。
 つまり現代の日本社会で通常着物を着ている人というのは「すでにお金持ちである女性」であって、その旧家ぶりを誇示するためであろう。「これからお金持ちになりたい女性」ではない。

 しかし「女性心理」の下卑た部分を暴くような表現に対してはフェミニスト等から、このようなヒステリックなクレームが来ることが多い。

 いつもの光景である(似たような反応を受けた例としては、2019年の【LOFTバレンタインプロモーション】がある)。
 面白いのはこれを取り上げたメディアの反応である。
 こういう、女性にとって「心外」な広告の場合、作り手が男性であってくれれば批判側には最も都合が良い。「女の気持ちが分かってない男性」による表現なら、図星を突かれたのではないと自分を納得させられるし「男社会による性差別」という文脈に落とし込めるからである。「差別広告が炎上しました。あいつらワルイ、あたしらタダシイ、それだけ、マル」というわけだ。
 ところが、実際にはそうではなかったのである。
 それがすぐ分かった――というか分かりたくもないのに「分かってしまった」のは、東京コピーライターズクラブ新人賞受賞作品であったため、ライターのデータがすぐに採れたからである。コピーライターも、銀座いせよしの店主も女性であった。

 これは具合が悪い。
 むしろ女性だからこそ女性の裏の心理も分かっていたからこそのコピーということになりかねない。
 それではこの「炎上」を報道しようとした女性向けメディア、特に自身が女性である執筆者たちにとって、非常に都合が悪いのだ。読者の歓心を買う記事が書けないどころか、彼女らの認知的不協和を刺激してしまうからだ。
 そこでメディアは一生懸命「書いた奴は女だけど、図星なんて突かれてないもん!」という結論を導くため、書いたライター女性にレッテルを貼ろうとした。女性向けメディアmi_molelet(ミモレ)の渥美志保氏は「書いた奴は他の女性を見下している低レベルな心の持ち主だ」、BUSINESS INSIDERの治部れんげ氏]は「企業の中で『男性的な文化』を学習して一般女性の気持ちが分からなくなったのだ」という。

 しかし実際のところ、「ハーフの子」つまり白人志向も上昇婚志向も、統計的に立証された習性である。
 一例として海外の出会い系サイト“OKCupid”は、アジア系女性が特に白人男性に惹かれやすいことを示すデータを出している。
 
 また女性の上昇婚志向についてもこちらの論考を見て貰えば納得してもらえるだろう。
 女性に対する無理解というより「理解し過ぎてしまった」からこその炎上例と言える。

 いせよしは2019年6月20日に「今回頂いたご意見を真摯に受け止め、今後の広報活動の参考にさせていただきます。なお、本ページの一部についても掲載を中止いたしましたことをお知らせいたします」と見解を発表している。
 もちろんこの広告は3年も昔のものであり、使用自体はとっくに終わっているので、いせよし側の「勝ち逃げ」の形である。「今回頂いたご意見を真摯に受け止め、今後の広報活動の参考にさせていただきます」と、一目でポーズと分かるポーズを平気で出来る余裕が前面に出た回答だ。

参考リンク・資料:
「ハーフの子を産みたい方に。」で炎上の呉服店がコメント発表「関心を持たなかった人にも目を向けてほしかった」
呉服店「いせよし」のコピーに見る、女性たちの断絶
「ハーフの子を産みたい方に。」着物の広告コピー炎上で思い出す私の黒歴史
日本女性の上昇婚・上昇婚志向