【テキスト】
【第九章】
【亡霊のささやき】
【人工知能が爆発的な進化を遂げ、AIが自己進化を重ねる時代がやって来た】
【この世のありとあらゆる事象を解き明かすのは人間ではなく、AIの役割になりつつあった】
【彼らは人間よりも勤勉で】
【人間よりも理性的で】
【人間よりも情報処理に長けていた】
【しかしどういう訳か、彼らは時に不合理な判断を下すことがあった】
【VRMMOはその一つだ】
【人間の心や感情の働きはとうに解明され尽くしている】
【そうした手垢の付いた分野に、何故か彼らは多くのリソースを割いた】
【プレイヤーを集め、ありとあらゆるシチュエーションでサンプルを収集する】
【その舞台となったのがVRMMOだった】
【当初はAIの不具合によるものと考えられていたが】
【彼らが人類社会の発展を目的として活動していることは確定的な事柄だった】
【AIの不合理な捜査活動】
【これを、人は亡霊のささやきと呼んだ】
【……しかし】
【AIたちは、知っていたのだ】
【人間である筈のプレイヤーが、時として人間ではないことを】
【解析不能のバグ】
【のちにギルドと呼ばれるそれ】
【発見者はAIだった】