
(ダッサ…)

は、はい!行くよ! 今回は「制」、つまり時制と空間制についてやります。
長いから覚悟してね。

空間制って初めて聞いた。ロジバンでは、空間も時制みたいに扱うってこと? 変な感じだ。

最初は違和感あるかもしれないけど、だんだん慣れてくるよ! というわけで、最初に空間制をやろう。

まず、ロジバンの空間制では次のようなことを言います。
*1
- (話者からみて)どの向き(位置関係)か。
- どれくらい離れているか。
- どれくらいの範囲で起こっているか。

「うさぎが私の右側の向こうの方の広い範囲で走る」みたいな?

そうそう。とりあえず1,2,3それぞれのための単語を見てみよう。
@方向(FAhA類)
be'a | 北に |
ne'u | 南に |
du'a | 東に |
vu'a | 西に |
ca'u | 前方に |
ri'u | 右に |
zu'a | 左に |
ti'a | 後ろに |
@距離(VA類)
@範囲(VEhA類)
ve'i | 小範囲 |
ve'a | 不定範囲(中範囲) |
ve'u | 大範囲 |

ここでも「イアウ」則が出てきてるのを見ててね。位置関係の語はまだまだあるけど、とりあえずはこれで。

ふむふむー。

これらはすべて
タグなので、sumtcitaとしてもselbritcitaとしても使えるよ。こんな感じ。
- la .kocon. cu cmila ri'u lo nu mi klaku / 私が泣いている右側(距離は不定)で、こしょんは笑う。
- la .kocon. cu ri'u cmila / こしょんは右(距離は不定)で笑う。 *2
- la .kocon. cu vi cmila / こしょんは近く(方向は不定)で笑う。

sumtcitaとして使うとき、取り込んだ項がどういう参照点になるのかについては補習授業でやることにします。まずはselbritcitaで話を進めるね。

まず、「距離」と「方向」は単体で使うことができるけど、そうした場合、片方の要素は不定という扱いになります。上の例文でもそう書いたように。

まあ日本語でもそうだよね。「右に」だけ言ったとき、「近くに」だけ言ったとき、それぞれ距離と方向については何も言ってないもんね。

そういうこと。ちなみにselbritcitaとして使うとき、
起点は「私の場所」になります。{ra ca'u citka}は「(私の場所から見て)前で、彼は食べる」となるよ。

ふむふむ。距離も方向も言いたいときはどっちも使えばいい?

うん。でもひとつ注意があって、
「方向」「距離」の順番で置かないといけないの。
- la .kocon. cu ca'u vi cmila / こしょんは少し前で笑う。

なるほどー。

この
[方向 - 距離]というのは大事な1セットなので覚えておいてね。あと、
「距離」は相対的なものです。足元の「近く」にあるゴミと、ここから「近い」駅。日本語でも「近く」は文脈的でスケールが変わるよね。
*3

さて、ロジバンの間制では[方向 - 距離]セットを
複数個連ねることができます。もちろん、方向や距離を言わない場合はそこは不定と解釈されるよ。
- lo nanmu cu ca'u vi ri'u vu sanli / 男は、[前-短距離][右-長距離]に立つ。
- lo nanmu cu vu ri'u sanli / 男は、[不定-長距離][右-不定]に立つ。

下の例文に注意。「距離」「方向」は[距離-方向]とは解釈されずに[不定-距離][方向-不定]と解釈されるよ。ちなみに、こういう[方向-距離]セットを複数使った制のことを
複合間制と言います。

ふむふむ。で、これどういう風な意味になるの?

ここで使うのが
架空の旅システムです。つまり、[距離-方向]を前から順番に処理して旅行していって、たどり着いた場所が目的地です。{ca'u vi ri'u vu}[前-短距離][右-長距離]ならこんな感じ。

ほうほう。UFOキャッチャーみたいだね。「前にちょっと、それから、右にずっと」。ボタンの押し方(レバーの倒し方)が間制として書かれてるって感じ!

そっちのほうが分かりやすいかもね。

思う存分『旅行』したら、次はその位置で「どれくらいの範囲にわたって起こっているか」を書こう。もちろん、範囲だけを言うと、[方向-距離]は不定になるよ。
- la .kocon. cu ca'u vi ri'u vu ve'i cmila / こしょんは[前-短距離][右-長距離][小範囲]で笑う。
- la .kocon. cu ve'u bajra / こしょんは[位置不定][大範囲]で走る。

ふむふむ…。ねえ。範囲っていうのは円を描くの?

いい質問だね。特に指定がなければ円を想定したらいいと思う。「こっちの方向に伸びてる」というのを言いたいときは、[範囲]のあとに[方向]を言えばいいよ。今までのことをまとめるとこんな感じだね。
【[方向-距離][方向-距離]...[方向-距離]】[範囲][方向]
- la .kocon. cu ca'u vi ri'u vu ve'a ti'a bajra / こしょんは[前-短距離][右-長距離][中範囲-[後ろ]]で走る。

なるほどね。初級コースに向けてで時制について「言わないときは適当に想定される」って言ってたけど、空間制でも同じ?

うん。空間について何も言わなかったら、「ある位置のある範囲で」というのが想定されるよ。

間制の応用(?)として、「動き」を表す{mo'i}があります。{mo'i}のあとに[方向-距離]セットを置くことで、「話者から見てその方向へ対象が動く」という意味を込められるよ。
- lo nanmu cu mo'i ca'uvu bajra / 男は(私から見て)右方向へ長距離走る。

なるほどー。さっきの「普通の」空間制と一緒に使うときはどうすればいいの?

そのときは、
普通の空間制のあとにmo'
i句を言えばいいよ。
- la .kocon. cu ca'uvi ri'uvu mo'i ti'ava bajra / こしょんは[前-短距離][右-長距離]{動き: [後ろ-中距離]}で走る。
{静的: 【[方向-距離][方向-距離]...[方向-距離]】[範囲][方向]} - {mo
'i: 【[方向-距離][方向-距離]...[方向-距離]】}

これで空間制は一応終わり。次は時制だけど、考え方はほとんど一緒。【[方向-距離][方向-距離]...[方向-距離]】[範囲][方向]がベースにあって、それに時制特有の表現が付け加わる感じ。

ふむふむ。初級コースに向けてではこんなのがあるって言ってたね。
- それはどれくらいいつのことか
- どれくらいにわたってか
- その範囲においてどういった感じでか(絶え間なくか、規則的にか、典型的にか、習慣的にか)
- その範囲において何回起こったか (1回か、2回か、…)

空間制で使った用語で書き換えるとこんな感じ。
@時制
- 方向 - 距離
- 範囲
- 範囲の性質

ほー、空間制とほとんど変わらない気がするぞ…!

時制での方向というのは、時間軸上の方向のことです。それじゃあ時制の「方向」「距離」「範囲」の語について見ていこう。
@方向(PU類)
@距離(ZI類)
@範囲(ZEhA類)

また「イアウ」則だね。あと、空間制では"v"だったとこが時制では"z"なんだね。分かりやすい。

よく出てくるでしょ? 時制の組み立て方も空間制と同じで、【[方向-距離][方向-距離]...[方向-距離]】[範囲][方向]に従うよ。起点は「私のいる場所」、つまり「今」だね。
*4
- mi puzi baza bazu puza ze'a ba citka lo plise / 私は[過去-短距離][未来-中距離][未来-長距離][過去-中距離][中範囲][未来]で林檎を食べる。

とまあ、こんな感じにめちゃくちゃな感じでいうことも可能!

ひえー。でも空間制のときと考え方は一緒だね。

でしょ。ここでひとつ言っておきたいことがあります。空間制で「範囲を指定しなかったら不定」になったけど、時制でもそうなります。
- mi puzi bajra / 私は[過去-短距離][範囲不定]に走る。

範囲が指定されていないから、その行為が今にも及んでいる可能性があるの。だから、「私はちょっと前に走った。」とは若干ニュアンスが異なるの。

なるほど。「私は、少し前の過去において走っている状態にある」としか言ってないもんね。
*5

そういうこと。ちなみに、
時制と空間制を一緒に使うときは時制を先に言います。だから構造としてはこういう風になるね。
{時制} - {空間制} - {mo'i句}

それじゃあ、範囲の性質についてやろう。これも結局、言わなかったら文脈的にいい具合に解釈されるわけだけど、はっきり言いたいときもあるしね。範囲の性質を述べるには2種類あって、ひとつは間隔を述べる方法、もうひとつは回数を述べる方法。「範囲の性質」は「範囲」のあとに言うよ。
【[方向-距離][方向-距離]...[方向-距離]】[範囲][方向][範囲の性質]
@範囲の性質(TAhE類)
di'i | 規則的に |
ru'i | 継続的に、ずっと |
na'o | 典型的に、形式的に |
ta'e | 習慣的に、いつものように |
di'inai | 不規則的に |
ru'inai | 断続的に |
na'onai | 非典型的に |
ta'enai | 反習慣的に |
- mi puzu ze'u di'i velckule / 私は[過去-長距離][大範囲][規則的]に学校の生徒だった。(= ずっと昔、私は長い間規則的に学校へ通った。)
- mi ca ze'u ba ru'i bajra / 私は今から長い間ずっと走り続ける。
- mi na'o klama le zarci / 私は典型的にあの店へ行く。
- mi ta'e klama le zarci / 私は習慣的にあの店へ行く。

んー…。{na'o}と{ta'e}がいまいちピンとこないなあ。

んっと、「客観的/主観的によくある頻度で」くらいの意味でとるといいかも。

ふーむ。{nai}をつけるとひっくり返るんだね。

うん。ま、でも有用なのは{di'inai}と{ru'inai}かな。あとの2つはあまり使えないかも。

もうひとつの方法も見てみよう。
@範囲の性質(ROI類)
- mi ca ze'i puzu pa roi klama le barja / 私は昔から今までにあのバーに1回来た。

ま、これも{roinai}はほとんど使いどころないかもね。

なるほど。ねえ、数字ならなんでもいいってことは、{so'e}「ほとんど」{so'i}「たくさん」{so'u}「少し」とかもOK?

オッケーだよ。{so'eroi}「たいてい」、{so'iroi}「何回も」、{so'uroi}「数回」って感じになるね。

ふむふむ。あ、これで「私は一度も〜したことない」って言えるね。

そうだね。でも{noroi}だけだとその意味にならないことに注意!なぜかは分かるよね?

それだけだと「どの範囲で0回なのか」が不定だから!

そのとおり。この場合、範囲は「無限の過去から参照時点まで」だね。そのために2つほど単語が必要だね。
@無限の時空間範囲

{ca ze'e pu}[今][無限範囲][過去]で「今から無限の過去の範囲で」という意味になるよ。
*6

なるほどー!じゃあ、「私は一度も死んでいない」は{mi ca ze'e pu noroi morsi}かな?

いい感じ!

さてさて、間制疑問というのがあります。{cu'e}を間制の置ける場所(述語の前)に置くことで、その命題に相応しい間制を尋ねることができるの。
- mi bajra / 私は走る。
- cu'e bajra / いつどこで走るの?
- puzi ze'u pu / ずっと前からちょっと前に
- zu / ずっと過去/未来に
- puzi ca'u / ちょっと前に、前で

ほうほう。気軽に訊けていいね。

最後に、表現の話を少しだけしていいかな? まず、
selbritcitaは述なれ語の一番頭につくということ。間制も当てはまるね。そして、それは冠詞で項化できる!

まあ、今までやったことと変わらないよね。

空間制のついた述なれ語が項化されるのはよくあって、{lo vi gerku}は「この犬」のいい訳語になるよ。

ふむふむ…。そうか、「私の近くの犬であるようなもの」か。{vi}{va}{vu}をつけて項化してやると指示形容詞のような表現ができるのか。

そういうこと。他にも{lo ve'i gerku}は「小範囲にあるような犬」ということで「小さい犬」という意味にとれるね。

空間制の使い道がまたひとつ分かったぜ!

というわけで、空間制、時制、すなわち間制についてやりました。架空旅行がポイントです!
{時間: 【[方向-距離]...[方向-距離]】[範囲][方向][範囲性質]} - {空間:【[方向-距離]...[方向-距離]】[範囲][方向]} - {mo'i句: 【[方向-距離]...[方向-距離]】}

はーい。英語に比べたら体系的だし、簡単だね。何が良いって、空間についても同じように表現できるってことだよ。

練習して使いこなせるようになってね。…とはいっても、

「ロジバンは言わないことができる」でしょ?

言われちゃったか。あ、気になる人のために言っておくと
時制の一致なんてものはありません。日本語と同じように時制を使ってね。

またまた日本人に優しいね。
*7
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