
はい。じゃあ始めます。今回は否定と命令。命令はかなり簡単だから、メインは否定かな。

おう。

まずは否定。一番簡単なのは、述語の前に{na}を置くのだね。「〜ということは真ではない」という意味にするよ。

ふむふむ。{mi na klama ti} で「私はここに行くということは真ではない」で、「私はここに行かない」になるんだね。

そう。簡単だね。ただし、ひとつ注意してほしいことがあって、日本語だと{na}の文を上手く訳せられていないときもあるんだよ。たとえばさっきの訳を「私
はここに行かない」と言ったらどう思う?

「私じゃなくて他の誰かが行く」って感じるかな。

だよね。{na}が否定するのは命題全体であって、ある特定の語(項)ではないことには要注意。迷ったら、「〜は真ではない」で訳せばいいと思うよ。

ふむふむ…。でも、そんなことを言われると、「特定の語を否定するにはどうすればいいの?」って思うんだけど。

まあ、ちょっと待ってって。ちなみに、{na}の反対、{ja'a}というのもあるよ。「本当に〜だ」「実に〜だ」って感じ。これも{na}と同様、命題全体を肯定するの。
*1*2*3

特定の語の否定方法はひとまず置いておいて、次に
段階否定というのをやるよ。
@段階否定
na'e | 段階否定(〜以外の/〜ではなく) |
je'a | 段階肯定 : 段階詞; 段階否定にたいして肯定を上書きする |
no'e | 段階中間 : 段階詞; je'a と to'e の中間 |
to'e | 段階反対 : 段階詞; je'a の反対; 対義語を造る |

今のところ段階否定という訳がつけられているけど、機能的には単に「段階語」でもいいかもね。
段階否定はSE類みたいに述なれ語の直前につけて、新しい述なれ語を作る。

ほうほう。どう新しくなるの?

スケールが変わるのです。述なれ語の表す概念には、程度があるものがあるよね。「好き」とか「美しい」とか「高い」とか。

そうだね。「好き」「ちょっと好き」「普通」「あんま好きじゃない」「嫌い」みたいな。

そういう「程度」を考えられる述なれ語には専用の定規(scaler)があると考えるとする。

で、まあたとえば、{nelci}は「好き定規」の3目盛りだとするじゃん。段階否定をつけることで、他の目盛りをさす述なれ語を作れるんだよ。

ほうほう。この前辞書で見つけた{xebni}「憎む」と{to'e prami}「愛するの反対」はイコールってこと?

そう考えていいよ。これ、どういうことかと言うと、「程度」系の述なれ語は片方覚えてしまえば、対義語も言えるということ。

たしかにそうだ。いいね!

どれが「程度」系の述なれ語なのかというのは共通理解の元で、って感じだね。「美しい」の反対は大多数が「醜い」と答えるだろうけど、「雲」の反対とか言われても…ね?

だね。ま、これは常識の範囲内で使えってことだよね。あれ、そういや{na'e nelci}はいずこへ。

{na'e}は「元の目盛りではない目盛り」を指す。まあ、これはやっぱり否定に近いよね。日本語で言えば、「非」が当てはまるかな。

ふむ。{na'e nelci}は「非-好き」なわけか。{to'e}ほどではないけど、って感じだね。

じゃ、特定の語を否定する…つまり、「これではない別のもの」って言えればいいんだよね。

だね。

これに使えるのが、さっきやった段階否定。{na'e bo 項}としてやることで、「[項]ではない別のもの」「[項]以外のもの」になる。
*4

おお、いいじゃん。{na'ebo mi klama ti}で、「私
はここに行かない」になるんだね。{mi klama na'ebo ti}で「私はここに
は行かない」かな。

そんな感じだね。{no'e bo}{je'a bo}{to'e bo}もあるけど…、ま、一応まとめておこう。((これらは、構文的にはLAhEに似ています。つまり、「ある項の頭につけて、その意味を変えるような語」です。詳しくは後々やりましょう。(→
限定詞(LAhE))
na'e bo | 〜以外のもの |
je'a bo | まさに〜と同じもの |
no'e bo | 〜とその正反対のものの間のもの |
to'e bo | 〜と正反対のもの |

じゃあ、最後に命令を。命令の仕方は強いて分ければ2つあって、ひとつは心態詞を使うやり方。もうひとつは{ko}を使うやり方。
@命令チックな心態詞
e'a | 許可 | それをしてもいい、そうであってもいいということを権威者として表す気持 |
e'anai | 禁止 | それをしてはならないということを権威者として表す気持 |
ei | 義務 | それが義務である/当然であると見なす気持 |
e'i | 制約 | それについて制約を与える/求める/義務を負わせる気持 |
e'o | 要請 | それをしてほしいという気持 |
e'u | 提案 | 行為や概念を勧める気持 |

全部頭文字eだね。ふむふむ。

いくつか例文を書いておこう。
stali | x1 は x2 (場/性質/状態)に留まる |
- .e'a do stali ti - ここにいてもいいですよ。
- .e'anai do stali ti - ここにいてはいけません。
- .ei do stali ti - 君はここにいなければなりません。
- .e'i do stali ti - ここにいなさい。
- .e'o do stali ti - ここにいてください。
- .e'u do stali ti - ここにいませんか。

今までの知識で命令文は作れたんだね。しかも割と豊富だ。

もちろん{na}を使えば禁止文にできるよ。で、より一般的な命令をしたいときは{ko}を使う。
ko | do の代わりに用いて命令を表す; 「〜しろ」から「〜してください」まで広いニュアンスをカバーする |

doの代わりに用いる…って、{ko stali ti}で「ここにいなさい」ってこと?

そゆこと。普通に文を作って、{do}を{ko}に置き換えればOK. 別にx1の{do}しか{ko}にできないってことはないからね。
mi nelci do -> mi nelci ko

えっと…?どう訳せばいいんだ。

形式的には「〜ということを真にしなさい」だね。今の例だと「私があなたを好む、を真にしなさい」、つまり「私に好かれるようになりなさい」だね。

女王様だ…。

一応言っておくと「ここに留まるな」は {ko na stali ti}、「あなたはここに留まらない、を真にしなさい」でいいのは分かるよね。

はい。まとめです。否定には命題否定と段階否定がありました。

うん。{na}は命題全体を否定するんだったね。{na'e}{je'a}{to'e}{no'e}は述なれ語に段階的な変化を与えるんだったね。

うん。質問は{ko}を使うか、心態詞を使うか。そんな難しいものではないね。じゃあ、課題を出しておきます。
→
命題を項に(抽象詞)
問題 : 次の文を訳せ |
1. mi to'e prami do |
2. lo nixli ku na klama lo barja |
3. lo nixli cu klama na'ebo lo barja |
4. do ja'a melbi |
5. .e'u te vecnu ti |
語彙 |
prami | x1 は x2 を愛する/にたいして愛情が湧く |
klama | x1 は x2 (終点)に x3 (起点)から x4 (経路)を x5 (方法)で行く/来る |
barja | x1 は x2 (品)を x3 (客)に提供する酒場/居酒屋/バー/パブ |
nixli | x1 は x2 (年齢)・ x3 (基準)の少女/未成熟の女 |
melbi | x1 は x2 (審美者)にとって x3 (性質)・ x4 (審美基準)において美しい/綺麗/麗しい/ハンサム/かわいい |
vecnu | x1 (者)は x2 (品/サービス)を x3 (者)に x4 (価格/費用)で売る |
答え |
1. 私はお前を憎んでいる。 |
2. 少女がバーに行くというのは真ではない。(少女はバーに行かない。) |
3. 少女はバーには行かない。(少女が行くのはバーではない。) |
4. 君は本当に美しい。 |
5. これを買うのはどうでしょう。(これなどいかが。) |
コメントをかく