はじめてのロジバン - 初級コースに向けて
さて、これで入門コースは終わりです。

いえーい。

今回は、「私たちはまだ何を学んでいないのか」について考えていこうと思います。



学んでいない(かつ文を書くにあたって重要そうな)ものをリストにしてみました。

…なんだかまだまだ序の口だったんだね…。

まあそうだね。でも、今までに習ったこと、tanruや心態詞を駆使すれば大体のことは言えると思うよ。

そうだね。よーし、頑張るか!



さて、入門コースの最後に、時制について少し話しておこうと思います。

あ、そういえば今までやってなかったね。

おなじみのこの文を見てみよう。

mi klama ti

「私はここに行く。」じゃなかった?

そうとも取れるし、おそらくそれが一番自然な解釈だね。

ん、「自然な解釈」ってどこかで聞いた気がする。tanruのところだ。あのときは確か…。え、まさか。

流石にtanruのときみたいに「解釈は無限大」ってわけではないけどね。この「素朴な文」には実際はこれくらいのことが含まれてるの。

@素朴な文が「無言」で伝えること*1
  1. それはどれくらいいつのことか (ずっと前か、ちょっと前か、最近か、まさに今か、ずっと未来か、ちょっと未来か・・・)
  2. どれくらいにわたってか(小範囲か、中範囲か、大範囲か)
  3. その範囲においてどういった感じでか(絶え間なくか、規則的にか、典型的にか、習慣的にか)
  4. その範囲において何回起こったか (1回か、2回か、…)
  5. その範囲において「行く」行為はどの段階であったか(アスペクト)(将前か、最中か、中断か、再開か、開始か、完了か、終了か…)*2
  6. 事実か可能性か (そのことを実際に起こしたのか、潜在的に起こす能力をもっているのか)

なんじゃこれ。頭がパンクしそう。

確かにごちゃごちゃしてるね。1.や5.はともかく、2.や3.や4.や6.が暗黙に想定されてるのは分かるんじゃないかな?

どういうこと?

たとえば、2.3.4.に関していえば、「私は学校に通っていました」という文をみて、「永遠の間、絶え間なく(1秒たりとも無駄にせず)学校に通っていた」と思う?

まさかっ!これは「何年間か、規則的に(土日は休みとか)繰り返し学校に通っていた」って意味だと思うよ。

そうだよね。文脈上「永遠に絶え間なく」とはとらないし、「たった1回限り」とも思わないよね。

うんうん。そうか、よくよく考えれば、これらのことが想定されているのは日本語でも同じだね。

さらに、「すべてのアヒルは泳ぐ」という文は、「実際にすべてのアヒルが泳いでいる」というより「すべてのアヒルは泳ぐ能力をもつ」という意味でとるよね。
他にも「木は燃える」というのは「実際に燃えている」とも「木には可燃性がある」ともとれるよね。2.3.4.6 の省略は日本語でも当然のように私たちがやってのけてることなんだよ。

そう言われればそうだ。日本語でもこういうのをしっかり言い分けることってあんまりしないもんね。

ロジバンが日本語と違うところは1.と5.だね。日本語で2.3.4.6.について普段特に言わないように、ロジバンではその文が「過去/現在/未来」のどれについてのものかも省略できるの。

ロジバンは時制すらも文脈に任せられるんだね。便利だ!

だから入門コースでは時制については触れなかったの。文脈が許せば時制について考えなくていいからね。

すごいなあ。tanruの解釈といい、この話といい、ロジバンって本当に自由だね。

ちなみに、{zo'e}ってあったでしょ? あれも、そこの項が何なのかを文脈に任せるという意味もあったね。

お母さんに「学校行ったの?」って言われて、{klama} って言うだけで「ちゃんと行ったよ」という意味にもなりえるんだね。

そうだね。その文脈では「行く」のは明らかに「そら(私)」だし、行き先は「学校」だもんね。「過去」ってことも「行く能力ではなく事実についての文」ということもお母さんの質問から正しく解釈できそうだもんね。

まあでも、私がひねくれて「明日行く能力はあるよ」って意味で{klama}って言ってる可能性もあるけど…。

おい。もちろんそうとられる場合だってあるから、その場その場での「いい感じの解釈」というのはあるよね。

ロジバンって、日本語以上に「テキトー」な一面もあるんだね。

言語学には「言語間の決定的な違いは話者にどんな表現を強制するかの違いだ」というボアズ=ヤーコブソンの原理があるけど、この点からみれば、ロジバンはかなり「自由」な言語といえるね。

極力言わない。それができるって、面白いね。

今後、文構造がどんどん複雑になっていくけど、それは強制されることではないことには注意しておこうね。初級コースも頑張っていこう。お疲れ様でした .iusai