NT.1000は、統合戦争の戦後時代の技術復興(ルネッサンス)の開発だった。
皮肉なことに、それは統合戦争が始まる前、数十年以上も前に殆んど放棄された「空気より軽い航空機の技術領域」【folder】の発展を表している。
NT.1000 ヘリシュタット【Helistat】は貨物積載能力を高める為にヘリコプターの技術を利用した金属製・硬式/剛性構造飛行船である。
飛行船は、20世紀の
LZ127 グラーフ・ツェッペリン【GrafZeppelin】とほぼ同じ全長で、全幅と全高でそれより遥かに大きい。
NT.1000 の外皮は実質的に歩兵規模の小火器の発砲に難攻不落であり、軽・対車両火器に耐性になる薄い装甲外皮である。
この装甲外皮下にヘリウム浮揚ガス袋(気嚢)が囲む軽量複合構造がある。
上部と飛行船の側面に沿って大気から水を凝集する為のコンデンサー、姿勢微調整の為の小型釣り合いタンク線下の内部に浮力を発生する気嚢(きのう)が位置する。
この水は、飛行船の下部の複数の排出孔より船外に排出可能。
▼ヘリウムガスは高価な為に、ガス排出に代えて、水を凝集することで、重量を増やし下降用の錘とする。緩やかな下降の場合にしか使えないが、ガス排出や、回転翼(ローター)の羽根角変更や逆転による強制下降より経済的である。
浮揚気嚢の下に目を移すと、下部気嚢の中に延びるのはゴンドラ貨物倉と機関区画である。
このゴンドラの両側に推進力と追加揚力の両方を提供するヘリコプターシステムの側面の左右双子配置の回転翼(ローター)がある。
20世紀の飛行船とは異なり、NT.1000 の艦橋(ブリッジ)は浮揚気嚢(きのう)の先端部である船首に位置している。
艦橋は軽量であり、その竜骨(キール)に沿って、飛行船の中心を通って通路で機関室区画上の乗組員容積に接続されている。
NT.1000の貨物倉は、最大90トンの貨物を運び、複数の第1世代
デストロイドを収容するのに十分な容積を持つ。
貨物倉の前方に展開・収納が自在な傾斜式の車輛搬入出板(ランプ)が簡単に接続可能である。
NT.1000は、調理室、シャワー設備、小型休憩室(小ラウンジ)、複数段形式の睡眠宿舎を含め20人までの乗組員生活容積を持っている。
旅客船として敢えて就役させたならば、初期状況であるが、数百人の乗客を飛行船の大貨物室に収容可能である。
飛行船システムと回転翼の為の動力はフレックス式燃料電池で提供され、それはどんな炭化水素、またはSLMHでさえ作動可能である。
- 「安定化・液体金属水素」【Stabilized Liquid Metallic Hydrogen (SLMH) 】〔 金属水素 - Wikipedia 〕
動力システムの燃料タンクは、釣り合い(バラスト)タンクと共に点在収容され自動防漏されると共に、安全の為に装甲が施されている。
回転翼システムが飛行船に80mph(128km/h)の最高速度、30,000フィート(9,144m)の上昇限界、4,000マイル(6,400km)の航続距離を提供し、SLMHを使用した場合はこの値はおよそ倍になる。
回転翼システムは飛行船の浮揚ガスの垂直離着陸能力を支援し、羽根角度や回転周期の正確な制御を行うならば、回転翼ポッドの角度調整をも制御に用いて、飛行船は「所定位置にて旋回」(履帯車輛で云う
超信地旋回)可能で、「後進飛行」や「横方向飛行さえ可能」だが、特に後者は最大速度の僅か10分の1の速度割合になる。
NT.1000 は完全に非武装であるが、衛星アップリンク機能を備えた無線システム(有効通信距離300マイル/482.7km.)の追加で、航法レーダーシステム(捜索範囲50マイル/80.45km.)と可動式ターレットのビデオカメラを備え、自動操縦装置は航法コンピューターが利用可能な有効GPS、無線測位、または地形照合により自機の現在位置を決定し、進路をプロットする。
- ★ アップリンク:地上海上、上空の端末機から、測地人工衛星へのデータ信号の送信作業。
- ◎ GPS, 全地球測位システム
- ※ プロット:(海図などに)船・飛行機などの位置を記入する作業。
NT.1000は、米国とブラジルの企業からライセンスを取得し、ドイツで製造設備の建設と飛行船の建造を行った。
それは空港に専門支援設備が必要とされ、貨物機よりも遥かに遅かったが、その航続距離、貨物倉の規模、重貨物を運搬する能力により、NT.1000は、統合戦争が終わった後の時間で貴重な道具を形成した。
NT.1000達の多数が地球統合政府のマクロス島のための支援努力とSDF-1の復興の主要な部分であり、国際貿易に対する、公衆には比較的未知の屋台骨となった
多くはゼントラーディ基幹艦隊の「死の雨」を生き残って、至る地域にて価値ある道具になった。
特に注目に値した NT.1000 の使用は、発展しかけの
サザンクロス軍の陸軍に対する、その組織にただでさえ欠如していた機動性を提供する、部隊輸送と補給物資輸送船としての超・運送屋(スーパー・ホットロッド)任務だった。
NT.1000 は2020年代に入って以降も就役を継続し、さらに使用されている最も一般的な民間貨物機の一つとなって、復興時に低率の生産を見た。
2031年に
インビッドの到着後、NT.1000は主にそれらの非戦闘性質と非
プロトカルチャー (資源)動力源に起因するインビッドの無視により、人類社会では引き続き採用され続けた。
入手し易い水素浮揚ガスを使う為に大抵が改装された複数の NT.1000 は、取引や投機の対象にすらなり、場合によっては星間大戦の戦前のジプシーのものに類似した共同体の放浪や隊商(ファクトリー)の移動住居にすらなった。
レジスタンス達は長大な航続距離、VTOL能力、そして
インビッドのセンサーに比較的不可視な為に NT.1000を愛した。
或るレジスタンス分子は機動兵器のその供給を犠牲にすることなく強大な機動性を獲得した1隻の独自改造された NT.1000 を以て、一般民間船として、簡単に
インビッドの検問を通過することが出来た。
飛行船の脆弱な性質により抵抗グループは、滅多に NT.1000 を武装化せず、代わりに偽装するか、防衛の為の戦闘人員を乗船させる措置に頼った。