覇穹封神演義検証wiki - 十六話 通天教主
◆脚本:高橋ナツコ ◆絵コンテ:小寺勝之 ◆演出:ながはまのりひこ ◆作画監督:飯飼一幸・竹島照子

完全に妖怪に覚醒した楊戩を挑発する王天君。
楊戩を誘うように導いた先に待っていたのは金鰲島の教主・通天教主。
王天君の狙いは、通天教主と楊戩の親子二人での殺し合い。
自分の運命を歪めたもの全てへの禍々しいまでの復讐だった。
自我を無くした通天教主の攻撃が、楊戩を襲う! 
一方、金鰲島の動力炉を目指す太公望と普賢。
「動力炉を壊し金鰲島を落とす」というその狙いの真の目的は、
聞仲をおびき出すことだった。

(アニメ公式サイトより引用)

ぞんざい感あふれる消化試合

宇宙空間のような見た目の謎の場所にて例の三姉妹が妖怪らしき正体不明のキャラクターと対峙している。(※)
その後の台詞の展開から、どうやらこの正体不明は残された十天君の二名であり、雲霄三姉妹は手こずるどころか彼女らの奥の手「究極黄河陣」によって一瞬で形勢を逆転し勝利してしまったことが伝えられる。

原作でも残ったこの白天君(白っぽい方)と秦天君(ダブってる方)との対戦は実にアッサリしたものだったが、覇穹では彼らの名乗りはおろか、三姉妹のいる空間が彼らの十絶陣を合わせた多重空間であることを説明する台詞すらも省いてしまっているので、「究極黄河陣が発動して多重空間をパンクさせた」という、既に負けが確定してから場面の状況が判明するという雑っぷりである。

これが一瞬たりとも無駄にされていないほどの高速展開の最中であれば仕方ないと割り切れるのかも知れないが、直前の通天教主と楊戩の場面からこの三姉妹の戦いの場面に転換し、無理やり宝貝の中に避難させられた黄飛虎が三姉妹に怒鳴り出すまで、環境音のみで台詞が一切無い画面がたっぷり10秒近くも続くのはどういうわけか?
白天君も秦天君もやられるシーンではちゃんと喋るので声優の割当が無いわけでもない。まるで元々彼らの自己紹介や多重空間についての台詞が入るはずが、編集ミスか何かで消されてしまったかのような、おかしな演出である。

※一応、白天君も秦天君も、これまで王天君が十天君全員に命令を下すシーンなどでチラチラと映り続けてきたのだが、ちゃんと覚えている視聴者は少数派であろう。

ガッツポ太公望




霊獣・四不象に跨って飛行する際の太公望は、四不象の角を握って騎乗する。
だがこの楊戩のイメージ中の太公望は、角を握らずに腰だめで両手ガッツポーズをしているだけ。作画ミスだろう。

周囲の信頼3割減ッス


16話より

楊戩が太公望の周囲からの信頼の厚さをイメージする映像。普賢真人や武吉、武成王は百歩譲って理解できるとしても、本アニメにおいてこのイメージに黄天祥が加わる理由がサッパリ不明である。覇穹封神演義では太公望と黄天祥は一度も会話したことが無いからだ。黄天祥は第13話で第5話以来の再登場をするが、その時のシーンも太公望が一方的に命令を下したのみで、その後に続くのは兄の黄天化とだけのやりとりであった。これでは何の絆も窺えない。


原作15巻より

無論、原作では太公望は危険を冒して黄天祥の命を救う出来事が描かれているので、この画面の下書き元となったであろう上掲した15巻の一コマに混ざっていても不思議ではない。楊戩がこのイメージ中に黄天祥を見た理由も、己が黄天祥くらい幼い頃に苦しんだ孤独さとの対比なのだろうが、それが成立するのは黄天祥が助けられるシーンが先にアニメでも映っているのが前提のはずである。
「過去回想で映っているからアニメ画面になっていない物語のどこかの時点で会話があったはずだ」とも解釈できようが、そういう空想で味付けしなければ理解できない演出を準主役級の楊戩の”重要な”シーンに足すべきだろうか(その”重要”はもはや食傷気味なほど繰り返されてきたが)。

ま・オレが聞仲をけしかけたんだけどな!!←何の話?


楊ゼンに対し封神計画の裏事情や自分の思惑を語る王天君。
しかしクソジジィの唯一の誤算が聞仲だった。まさか聞仲が金鰲島をまるごと持ってくるとは考えもしなかったはずだ。 おかげで必死に守ろうとした崑崙山もぶっ壊れちまってよぉ。 ま・オレが聞仲をけしかけたんだけどな!!いい気味だぜみんなぶっ壊れちめぇ!!!

覇穹第6話では、聞仲は金鰲島に来て十天君に「協力しろ」と要請。王天君は自分たちは聞仲より位が上の仙人だと最初は渋るが「崑崙のやつらは気に入らなかった」として結果として快諾する。
この流れのどこが「聞仲をけしかけた」のだろうか?

・原作の流れ
原作だと確かに崑崙に対し「聞仲をけしかけて」いる。
十天君は聞仲を長期間幽閉していたが、趙公明封神の報を聞き、王天君の主導で聞仲の開放を決断する。
その際、王天君は「だからもぉ あんたに頼るしかねぇの」「オレら十天君を率いて崑崙をやっちまってくれよ」
と聞仲に「お願い」する。

原作だと何らおかしくない台詞だが、聞仲の要請に応えただけのアニメだと意味のわからない台詞になってしまった。

間違ってる”ネタバレ”

みんなダマされてんのさ。元始天尊はそういうやつだ。
と口にして、得意げに封神計画のウラ話を暴露する王天君。だが喋っている内容は女媧が本格的に登場する以前の、原作15巻時点での「真実」である
覇穹封神演義では理解不能の展開シャッフル連打により、歴史の道標=女媧の存在や太公望と王天君の関係など、断片的ながら視聴者は既に原作22巻時点までのネタバレを食らっており、封神計画の真相は彼の語りがすべてではないということをとっくに知ってしまっているにも関わらず。

ましてや、その最も重要な物語設定のひとつである22巻時点のネタバレを、覇穹13話冒頭で先走りでブッ放したのは他ならぬ王天君自身である。
彼自身の覇穹での発言や明かされている設定を総合すると、
  1. 封神計画は妲己を仕留めるための計画である(16話)
  2. 彼は妲己の手駒として金鰲島内で活動し、妲己と共に通天教主の精神を破壊した(13話)
  3. 彼は封神計画の陰の実行者であり、性善にして陽の実行者・太公望が出来ないことを代わりに行った(13話)
となる。
妲己の手駒として活動している(2)が、陰から太公望に協力して(3)、封神計画のため妲己を倒す(1)ための手助けをしていると主張している。つまり彼は妲己を裏切るつもりなのか?

王天君の設定ネタバレ


ここでの王天君の話は何から何まで的外れというわけでもないのだが、特に「封神計画とは元始天尊が仕組んだ、打倒妲己を最終目標とする計画である」という主張は、13話や14話で明かされた「本作の真のラスボスは歴史の道標と通称される、女媧という名のグレイ型宇宙人である」という真実に反する。あまつさえ、今回16話のネタバレ冒頭は「女媧に脅威を感じた元始天尊が封神計画を立ち上げた」という原作19巻からの決定的瞬間ではないか。なぜこんなシーンの後に誤った"ネタバレ"を意味ありげに聞かせようとするのか。(※)
さながら数週間前の”最新ニュース”をペラペラ語って悦に浸っているような王天君のありさまは、ただでさえ楊戩と対比される不憫な生い立ちの彼をますます可哀相な奴に見せている。

他にもこの構成が本作の見どころを壊していると言える理由の一つとして、原作で封神計画にまつわる元始天尊のウソが順を追って暴かれることで匂わされていた裏読み「実はラスボスは妲己ではなく、主人公に隠し事をしている元始天尊の方ではないのか?」という可能性を潰している点が挙げられる。ご存知の通り13話あたりでもうそんな解釈は出来なくなってしまった。



※王天君の言う「封神計画は妲己を倒すだけの計画」である説は、元始天尊の冒頭の宣言が「たとえ、いかなる方法を採ろうとも!」と口にしたのみであり、その方法が封神計画のことだとまでは断言していないので両者の話は共に真実だったとしても矛盾しない、という反論も一応出来るかも知れないが、そうだとするとこれまで以上に話の筋が乱れる上、もはやその穴を埋める展開を描く時間もアニメ完結までには残っているまい。


犯人はゲンシ(ネタバレ)

お耽美エンドカード




5ちゃんねる覇穹封神演義スレッド内でも話題になった今回のエンドカードである。
90年代的な加齢臭を放つ耽美な構図が人気を博した。