みんなダマされてんのさ。元始天尊はそういうやつだ。
と口にして、得意げに封神計画のウラ話を暴露する王天君。だが喋っている内容は女媧が本格的に登場する以前の、
原作15巻時点での「真実」である。
覇穹封神演義では理解不能の展開シャッフル連打により、歴史の道標=女媧の存在や太公望と王天君の関係など、断片的ながら視聴者は既に
原作22巻時点までのネタバレを食らっており、封神計画の真相は彼の語りがすべてではないということをとっくに知ってしまっているにも関わらず。
ましてや、その最も重要な物語設定のひとつである22巻時点のネタバレを、覇穹13話冒頭で先走りでブッ放したのは他ならぬ王天君自身である。
彼自身の覇穹での発言や明かされている設定を総合すると、
- 封神計画は妲己を仕留めるための計画である(16話)
- 彼は妲己の手駒として金鰲島内で活動し、妲己と共に通天教主の精神を破壊した(13話)
- 彼は封神計画の陰の実行者であり、性善にして陽の実行者・太公望が出来ないことを代わりに行った(13話)
となる。
妲己の手駒として活動している(2)が、陰から太公望に協力して(3)、封神計画のため妲己を倒す(1)ための手助けをしていると主張している。つまり彼は妲己を裏切るつもりなのか?
王天君の設定ネタバレ
原作既読者なら承知の通り、13話冒頭の王天君と今回16話の王天君は”別人”であり、15巻時点の王天君は彼自身も太公望との運命に気付いていなかったので、こんな破綻が起きる。
ここでの王天君の話は何から何まで的外れというわけでもないのだが、特に「封神計画とは元始天尊が仕組んだ、打倒妲己を最終目標とする計画である」という主張は、13話や14話で明かされた「本作の真のラスボスは歴史の道標と通称される、女媧という名のグレイ型宇宙人である」という真実に反する。あまつさえ、今回16話のネタバレ冒頭は「女媧に脅威を感じた元始天尊が封神計画を立ち上げた」という原作19巻からの決定的瞬間ではないか。なぜこんなシーンの後に誤った"ネタバレ"を意味ありげに聞かせようとするのか。(※)
さながら数週間前の”最新ニュース”をペラペラ語って悦に浸っているような王天君のありさまは、ただでさえ楊戩と対比される不憫な生い立ちの彼をますます可哀相な奴に見せている。
他にもこの構成が本作の見どころを壊していると言える理由の一つとして、原作で封神計画にまつわる元始天尊のウソが順を追って暴かれることで匂わされていた裏読み「実はラスボスは妲己ではなく、主人公に隠し事をしている元始天尊の方ではないのか?」という可能性を潰している点が挙げられる。ご存知の通り13話あたりでもうそんな解釈は出来なくなってしまった。
※王天君の言う「封神計画は妲己を倒すだけの計画」である説は、元始天尊の冒頭の宣言が「たとえ、いかなる方法を採ろうとも!」と口にしたのみであり、その方法が封神計画のことだとまでは断言していないので両者の話は共に真実だったとしても矛盾しない、という反論も一応出来るかも知れないが、そうだとするとこれまで以上に話の筋が乱れる上、もはやその穴を埋める展開を描く時間もアニメ完結までには残っているまい。
犯人はゲンシ(ネタバレ)
実際、原作連載中に放送開始し、原作に女媧が登場する以前の段階で最終話に到達せざるを得なかった1999年のアニメ「仙界伝封神演義」では、元始天尊がすべての黒幕だった、というストーリーで完結している。