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gurugurian 2014年01月16日(木) 06:35:15履歴
国を挙げて軍隊の「慰安所」を設置したのは日本とナチスドイツだけ
大阪市長で日本維新の会共同代表の橋下徹氏は2013年5月13日に慰安婦問題に触れ、「当時は日本だけじゃなくいろんな軍で慰安婦制度を活用していた」と発言しました。果たしてこれは事実でしょうか。
吉見義明氏の『従軍慰安婦』(岩波書店/1995年)によると、確かに第二次世界大戦時、アメリカやイギリスの軍人が一時期軍専用の慰安所(売春宿)を設置した、あるいは設置しようとしたことはあったようです。しかしそのような場合でも、後に本国や軍上層部によって閉鎖・廃止させられています。また敗戦直後に日本政府は「一般の婦女子を暴行から守るため」という名目で 、上陸する連合軍兵士の慰安所(売春宿)RAAを設置しました。当初この施設は「活用」されたものの、兵士に性病が蔓延したため、1946年3月に兵士の立ち入りが禁止されました。
それに対して、第二次世界大戦中に軍中央の方針に基づいて慰安所を組織的に設置したのが明らかになっているのは現時点では日本の他にはナチスドイツだけです(※注1)。ドイツ軍は第一次世界大戦時に大量の性病患者を出したことの「反省」からフランスやオランダなどの占領地で慰安所を設置しました。こうしたナチスドイツによる慰安所に関する研究はドイツでも始まったばかりで、まだ明らかになっていないことも多いのですが、女性の中には意に反して売春を強要された人もいたようです。
ただ、慰安所を組織的に設置したのがナチスと旧日本軍だけとは言え、他の国の軍隊が清廉潔白かと言えばそうではありません。軍隊、あるいは戦争と性暴力が密接に結びついているのは確かです。たとえば日本、特に占領が長く続いた沖縄では米軍兵士による婦女暴行事件が多発しましたし 、現在も起きています。またこちらでも触れた旧ユーゴスラビアにおける組織的集団強姦(民族浄化)も悲惨な戦時性暴力の一例です。
そうした意味において、慰安婦問題は単なる日本の問題ではなく、普遍的な問題をはらんでおり、それゆえに世界から注目されています。日本が慰安婦問題に誠実に対峙し、積極的に取り組むことは、そうした他国の性暴力の問題にも光を当て、解決・改善のきっかけになり得るでしょう。しかし、橋下氏のようにただ「 日本だけが悪かったんじゃない」と自己正当化の論理で発言しても、より多くの非難を浴びるだけで、何の国際貢献にもいわゆる「国益」にも結び付かないのは、発言後の海外の反応(※注2)を見れば明らかです。
(※注1)ただし、朝鮮戦争の際、韓国軍は日本と同じような慰安所を作り、運営していました。当時の韓国軍の軍人には旧日本軍の出身者が多かったこともあって制度や体質などの面で日本軍の影響を受けた部分が少なくありませんでした。
(※注2)橋下大阪市長の「慰安婦は必要だった」発言に関する海外報道まとめ橋下徹氏の発言と自己正当化の強弁、コ ロコロ変わる主張とデリダについてなど参照のこと。
関連記事:すくらむ 兵士のためのレイプ施設つくったのは日本とナチスだけ-レイプ犯の理屈で慰安婦容認する橋下大阪市長
大阪市長で日本維新の会共同代表の橋下徹氏は2013年5月13日に慰安婦問題に触れ、「当時は日本だけじゃなくいろんな軍で慰安婦制度を活用していた」と発言しました。果たしてこれは事実でしょうか。
吉見義明氏の『従軍慰安婦』(岩波書店/1995年)によると、確かに第二次世界大戦時、アメリカやイギリスの軍人が一時期軍専用の慰安所(売春宿)を設置した、あるいは設置しようとしたことはあったようです。しかしそのような場合でも、後に本国や軍上層部によって閉鎖・廃止させられています。また敗戦直後に日本政府は「一般の婦女子を暴行から守るため」という名目で 、上陸する連合軍兵士の慰安所(売春宿)RAAを設置しました。当初この施設は「活用」されたものの、兵士に性病が蔓延したため、1946年3月に兵士の立ち入りが禁止されました。
それに対して、第二次世界大戦中に軍中央の方針に基づいて慰安所を組織的に設置したのが明らかになっているのは現時点では日本の他にはナチスドイツだけです(※注1)。ドイツ軍は第一次世界大戦時に大量の性病患者を出したことの「反省」からフランスやオランダなどの占領地で慰安所を設置しました。こうしたナチスドイツによる慰安所に関する研究はドイツでも始まったばかりで、まだ明らかになっていないことも多いのですが、女性の中には意に反して売春を強要された人もいたようです。
ただ、慰安所を組織的に設置したのがナチスと旧日本軍だけとは言え、他の国の軍隊が清廉潔白かと言えばそうではありません。軍隊、あるいは戦争と性暴力が密接に結びついているのは確かです。たとえば日本、特に占領が長く続いた沖縄では米軍兵士による婦女暴行事件が多発しましたし 、現在も起きています。またこちらでも触れた旧ユーゴスラビアにおける組織的集団強姦(民族浄化)も悲惨な戦時性暴力の一例です。
そうした意味において、慰安婦問題は単なる日本の問題ではなく、普遍的な問題をはらんでおり、それゆえに世界から注目されています。日本が慰安婦問題に誠実に対峙し、積極的に取り組むことは、そうした他国の性暴力の問題にも光を当て、解決・改善のきっかけになり得るでしょう。しかし、橋下氏のようにただ「 日本だけが悪かったんじゃない」と自己正当化の論理で発言しても、より多くの非難を浴びるだけで、何の国際貢献にもいわゆる「国益」にも結び付かないのは、発言後の海外の反応(※注2)を見れば明らかです。
(※注1)ただし、朝鮮戦争の際、韓国軍は日本と同じような慰安所を作り、運営していました。当時の韓国軍の軍人には旧日本軍の出身者が多かったこともあって制度や体質などの面で日本軍の影響を受けた部分が少なくありませんでした。
(※注2)橋下大阪市長の「慰安婦は必要だった」発言に関する海外報道まとめ橋下徹氏の発言と自己正当化の強弁、コ ロコロ変わる主張とデリダについてなど参照のこと。
関連記事:すくらむ 兵士のためのレイプ施設つくったのは日本とナチスだけ-レイプ犯の理屈で慰安婦容認する橋下大阪市長
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