2011/12/31(土) 21:35:39.64 ID:ijJ3s02L

美子と柊が金沢へ向かった前日、他のメンバー(廉とNANAは別行動だが、ハワイで合流することになっていた。)達は社長の自家用機でハワイへと目指している最中だった。
ただ、当初は日本時間27日の午前10時ぐらいに旅立つ予定だったのだが、思わぬ吹雪が飛行場を襲い、最終的に同日の午後9時に日本を出発。

おかけで旅立つ前から眠気に襲われてしまっていた一同は、到着するまで静かに眠っていた。

そして、飛行しだしてから6時間50分ほどが経過した。
飛び立った時、日本は真っ暗だったがハワイに到着する頃には外は太陽の光によって晴ればれとしていた。

「うぉぉぉーーー!ほら!美男見ろよ!!すっげー綺麗だぞ!!」
「んんん・・・・勇気・・・うるさい・・・。」
飛行機に乗っていると、窓の外で広がる、透き通っているかのほど綺麗な青い海に
窓に顔を張り付けながら目を輝かせて勇気は見つめていた。
一方の美男は長旅のせいか疲れてしまい、薄い毛布に包まりながら静かに眠りについていたのだが
大はしゃぎしていた勇気によって無理やり起こされた。

「ふわぁ・・・・。で?何が綺麗・・・?」
寝起きバリバリの美男は、重たく垂れさがる瞼を擦りながら欠伸をした。
「だ〜か〜ら!!ほら!!海だよ!!海!!」
美子の両肩を掴むとぶんぶんと前後に体を揺すった後、強引に窓の方へと顔を引き寄せる。
「勇気さぁ・・・少し眠いんだから・・・もう少し・・・・。」
海なんて日本でも見れるものだし、もう少し眠らせてくれと言わんばかりに眉間にしわを寄せながら勇気をちらっと睨みつけようとしたが
すぐ目の前に広がる透明感のある海の色、少し遠くに見える白い砂浜に言葉を失う。
「な?綺麗だろ?」
「・・・・あ、あぁ・・・綺麗・・・だな・・・。」
「よ〜し!ハワイに着いたらすぐに泳ぎに行くからな!!」
「え・・・で、でも・・・少し街の中とか歩きた「絶対一緒に行くんだからなぁ〜!今回は柊さんも居ないんだから、ぜ〜〜ったい!!」
と、ハワイにもう少しで着こうとする中、最初から子供の様にフルパワーで大騒ぎする勇気に
初めて訪れるハワイという地に期待に胸を高鳴らせていた美男は若干困ったような表情を浮かべていた。

そんな姿を、大人たちは微笑ましく見つめていた。

「いやぁ〜。今年は美男が新加入した事だし、ハワイに行く事にして正解だったな。何より楽しそうだ。」
「その代わり・・・・休暇が終わった後には膨大な数の仕事が待ってます。」
まだハワイに到着していないのにアロハシャツとサングラス装備で準備万端の社長に
冷静に休暇の後に待ち構える絶望を突きつける沢木。
「沢木〜」
「な、何ですか・・・?」
真顔の沢木に社長はむっと表情を曇らせた後、指を鳴らして沢木を見た。
その社長に沢木は戸惑いながら声を突っかかられる。
「こういう時ぐらいはオフを楽しんだらどうだ?仕事は仕事。プライベートはプレイベート。
出来る女はしっかりと分けるものだぞ?」
「・・・・す、すいません・・・。」
「まぁ、仕事熱心なのはお前の良い所だけどな。」
社長の助言に申し訳なさそうな顔をした沢木だが、安藤の優しい表情と言葉を聞くと少しだけ微笑むのだった。

まぁ、こっちはこっちで良い雰囲気を醸し出していたのだが・・・・。
一人浮かない顔・・・というより、女の顔で外を眺めているRINA。

(はぁ・・・・。)
隣で大いびきをかいて眠る馬淵の事など気にせず、RINAは珍しく物思いにふける様にぼんやりと外を眺め続けていた。


7時間近くの飛行の後、ようやく辿り着いたハワイ。
飛行機から降り、社長専属のガイドによって1週間泊まり続ける社長の別荘に案内され
夕方までプライベートビーチなるものを満喫し、辺りは既に真っ暗となっていた。
途中、遅れてやってきた廉たちも合流し、今は皆でバーベキューを行おうと準備をしていた。
そんな中、RINAの姿が別荘前の庭に居ない事に後から来たNANAが気が付き
美男がRINAの部屋まで様子を見に行ってくれと頼まれ、渋々RINAの部屋の前までやってきていた。

「たく。みんなして俺に押しつけやがって・・・。お〜い。RINA?いるか?」
流石に女性の部屋に入ることに躊躇いがあった美男はノックをし、RINAが起きているかを確認する。
しかし、いくら声を掛けても部屋の中から返事がなかった。
ドアノブに手を伸ばし、回してみると鍵がかかってはいない。
美男は特に悪い事をしているわけでもないのに辺りをきょろきょろと誰もいない事を確認した後、ゆっくりと中へと入って行った。

「RINA・・・いるか?」
「んんん・・・・・」
部屋の扉を閉め真っ暗な部屋の中へと入って行き、部屋中を見渡すと月明かりに照らされながらベッドで眠るRINAの姿が目に入る。
また、その近くにあったテーブルの上に大量の酒。
(RINA、昼間浜辺に来てないと思ったら部屋で飲んでたのか・・・。)

呆れ模様な表情を浮かべるも、すぐにすやすやと気持ちよさそうに眠るRINAに何かがあったわけではないとわかると
安堵の表情を浮かべた美男は寝冷えしない様に薄いタオルケットを被せ
疲れているせいか、外でにぎやかに騒いでいる面々に合流する気分にもなれず、勇気に事情をメールで送った後
RINAが目覚めるまで部屋に備え付けられていたバルコニーで煌く星や輝く海などといったハワイの景色を見つめることにした。
「ふぅ・・・風、気持ちいいな・・・・。」
常時聞こえ続ける面々の声の中、時折部屋中に吹き抜ける風に心地よさを感じる。
風の香りが、ヤシの木が揺れる音が、海が靡く音が、その全てが今まで感じた事のない物。
その一つ一つをRINAが起きるまでの30分近く、他に何も考えずに美男は感じ続けていた。


そして、美男がRINAの部屋に訪れて30分が経過した。

「んん・・・んぁれ・・・?っ!いったぁ・・・・。頭がんがんする・・・・。」
ベッドから起き上がったRINAは頭に走る激痛に表情を歪めると頭を右手で抑える。
(あぁ・・・私、お酒飲んで・・・そのまま寝ちゃったのか・・・・。)
ちらっと視界に入った大量のワインの瓶に昼間の記憶を思い出す。
部屋の暗さから既に夜になっている事を把握すると、だるそうに体を立ち上がらせようとベッドから降りようとする。
だが、ベッドから降りて立ち上がろうとした時、まだ酔いがさめていないのか、くらっと体が揺れた後に後ろへと倒れそうになってしまう。
咄嗟に目を瞑るRINAだったが、いくらまっても体に衝撃が来ない。
変だと思ったRINAはゆっくりと瞼を開いていくと、目の前には慌てた表情を浮かべる美男がRINAの体を抱き寄せる様な形で抱える姿があった。

「え・・・あんた誰?」
「・・・・取り敢えず寝ぼけてるか?」
「あ、あぁ!美男ね・・・って、あんた!!な、何で私の部屋に!?」
月明かりを背にしていた美男を一目見ただけでは誰だか分からなかったRINAだったが
声を聞いて美男と分かったら分かったでどういう状況か分かっておらず、ガンガンと頭が痛む中、美男から離れよと美男の胸の方へと手を当てると前に向かって力を入れる。
ただ、酔いのせいなのか力が制御されておらず、思わず美男は体を一瞬だけ体勢を崩しそうになる。
「ちょ!あ、危ないだろ!!少しはこっちの話し聞けよ!!」
「だ、だって!女の部屋にいきなり男がいたら普通驚くでしょ!?」
「だ〜か〜ら!!話を聞けぇ〜〜!!」

いつも以上にパワフルなRINAを説得しようと試行錯誤した美男は、この際強引に話を進めることにした。
食事の時間になってもRINAが来ない事を心配して、代表して自分が来たと・・・。

ただし、RINAの変な誤解が解けるのは10分近くたった後だった・・・・。


「はぁ・・・美男・・・ご、ごめん・・・。」
「ふぅ・・・。ホント、少しは話聞いてくれ・・・。頼むから・・・。」
ようやく現在の状況を把握したRINAはベッドに腰を掛けたままバルコニーの方で
ずっと背を向けていた美男に手を合わせながら謝罪をしていた。
美男の方はRINAの大暴れのせいでさらに疲れが増していたが
RINAにも何かわけがあったんだろうと自分の中でそう結論付け、謝罪するRINAにそれ以上何かを言う事もなく、睨んだり疲れた表情を見せない様にしていた。

(はぁ・・・私、恥ずかしい所見られちゃった・・・。美男、呆れてるか・・・。)
だが、逆に自分の方を見ない美男にRINAは不安を抱き、顔を俯かせ膝の上に両手を置いてその手でズボンを少しだけ掴んでいた。
と、そんな陰気な雰囲気が漂う部屋だったが、バルコニー側から風が吹き抜けていくと
その風は部屋の空気を入れ替えたかのように話を急展開へとさせて行った。

「んん・・・おぉ!RINA!!こっち来いよ!こっち!!」
風が吹き終わると先ほどまで背を向けていた美男が珍しく子供の様に目を輝かせながらRINAへと手招きをする。
「な、何かあったの?」
美男のはしゃぐ声にびくっと体を震わせ驚くが、異様なほどに輝く美男の目に何も考えずにバルコニーの方へと歩いていく。
「で、何かあったの?そんなに目輝かせて。」
「流れ星!ほら!見ろ!!」
一度RINAの方へ視線を向けると、すぐに星がきらめく夜空へとその視線を移し
人差し指をその夜空を指差した。
「・・・って、あんたそれ、私が見た時に見たんでしょぉ!?もう見えるわけないじゃない!!」
「あ・・・。そうか・・・・。っい、イタっ!た、叩くな!人の背中ぁ!!」
美男の少し抜けている行動に曇らせていた表情を緩め、美男の話の途中から笑いながら美男の背中を叩く。
美男は叩かれて本気で痛いと感じていたが、それと同じぐらいに安心もしていた。

「いったぁ・・・・。す、少しは加減して欲しい気が・・・・。」
「だ、だって、あんたがあんな間抜けな事するなんて・・・思わなかった・・・から・・・。」
背中を擦りながら痛みを和らげる美男子を余所目にRINAは顔を隠す様にバルコニーの隅にしゃがみながら、笑い声を殺しながら言葉を返していた。
「ま、間抜けって・・・あ、あれはわざとに決まってるだろ!流石に・・・・。」
本当にわざとやったはずなのに、くすくす笑うRINAを見てると恥ずかしくて顔から火が出る思いになる・・・。
ちらちらと笑いながら見るRINAに美男はどこかに隠れたい気分になったが隠れる場所もなく
赤くなった顔を隠す様に顔をRINAから逸らし、目の前の海を見つめた。
そして、気分を入れ替える様に息を吐き、外で吹く涼やかな風を体に吸い込んだ後
ちらっとRINAの方に視線を向け、笑い終えているのを確認するとすぐに視線を海の方へ戻し、口を開きだした。

「だってさ、ハワイに来る前からRINA元気なかっただろ?それの事が気になって。
何あったかは分かんねーけど折角の旅行なんだし、楽しんだもん勝ちだろ?」
「も、もしかして・・・美男、そのためにわざわざ私の部屋まで来てくれたの?」
自然と浮かべる美男の笑顔と言葉にしゃがみながら美男の事を目を見開いて見つめる。
美男はずっと海の方を向いて言葉を発しているため、RINAがどんな顔をしているのかは分からないが
いつもの様な力強い声ではなく、細くか弱い声を聞くだけで何だか調子が狂ったかのように頭を掻きながら照れ隠しをしていた。


「・・・RINAが元気じゃないと調子が狂うし、RINAにはいつも良くしてもらってるし。
その・・・たまには俺もさ、何かしてやれないかなって思って・・。ちょ、お、おい!だから笑うなよ!!」
「だって、美男に心配されるなんて思ってなかったからさぁ~。」
「くそぉ・・・心配なんてするんじゃなかった。今年1年分の恥ずかしい気分を今日味わったみたいだ・・・。」
バルコニーに備え付けられていた柵に腕を乗せていたが、RINAに笑われ
柵のすぐ近くで柵を掴み、しゃがみながら蹲ると真赤になった顔を俯かせて隠していた。
そんな美男の姿を笑い終えたRINAは涙を拭き取ると美男に近寄ると隣にしゃがみ込んで
「でも心配されてて凄く嬉しかったし気持ちが楽になった。ありがとう。」
と言うと美男の顔が上がったのを確認するとにこっと微笑みを浮かべた。
その笑顔に一度わざとらしくRINAの顔を睨みつけたが、すぐに表情を緩め笑みを浮かべると
RINAの体を持ち上げる様に自分と立たせ、二人で外の景色を眺めた。

「綺麗ねぇ・・・。私、ハワイって初めて来た。」
ハワイの地に吹き渡る風に髪を靡かせ、その髪の毛を手で抑えつけながらそう言う。
「え?今回みたいにメンバーとかと来た事なかったのか!?」
意外だったのかそれとも予想外だったのか、RINAの言葉に身を乗り出して聞き返す。
RINAは目を丸くしてこちらを見てくる美男に冷静さを失わずに
「社長、世界各地に別荘持ってるみたいで、毎回行く場所違うのよ。」
と淡々と答えた。
「社長・・・って何者?」
「さ、さぁ?私に聞かれても何も分かんない。」
「まぁ・・・それもそうか。」
真剣な表情で考えていた美男だがRINAの言葉に納得すると考えを止めたのか
再び体を目の前へと向けると、「あ!そうだ!」と何かを思い出したかのように声を出す。

「ん?どうかした?」
「そうだ!なぁ!明日、俺とどこか行かねー?気分転換にさ!!」
「え・・・そ、そうねぇ・・・。まぁ、今日の事もあるし私なんかで良いならいくらでも付き合ってあげる。」
「まじ!!よっしゃ!!ありがとう!!おぉ〜!明日が楽しみだぁ〜!」
(美子もそうだったけど・・・美男も頑張りやで思いやり溢れてて・・・兄妹揃って良い子ね・・・ホント。ありがとう。美男。)

母親が子供見守る様にはしゃぐ美男をRINAはしばらく微笑みながら感謝しながら見つめていた。
そして、その二人を星空が静かに見守っていた。何一つ音を立てずに静かに。

すぐ近くでは他の面々が楽しそうに騒いでいたが、この二人がいた空間だけ
同じ場所なのに全く違った場所に居るかのようにバルコニーから見える幻想的な景色と
隣で嬉しそうにしている美男の姿にRINAは一人、そんな事を考えるのだった。

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