| ある日のこと… |
| ──数年前。あたしが、まだ女子高生だった頃。 |
| あの頃のあたしは、自分は無敵だと思っていた。 |
| そして、きっとこのまま、いつもキラキラしてて、いつも完璧な……お母ちゃんみたいな大人になれるって、思ってた。 |
美嘉 | あっれー?加蓮じゃん。もしかして自主レッスン? |
加蓮 | うん。美嘉も? |
美嘉 | まあね、学校帰りに、レッスンルーム空いてたら使おーって、思ってたんだ。…………って、あれ? |
美嘉 | これ、忘れ物かな?そこに置いてある紙袋。中に、なんか入って…… |
| ガサゴソ…… |
美嘉 | ……雑誌? |
加蓮 | ファッション雑誌だね。前使ってた人が、置いていっちゃったのかも。 |
美嘉 | 忘れ物かー。じゃあプロデューサーに聞けば、前が誰か分かるよね!アタシ、ちょっと聞いてく…… |
美紗希 | すみませぇん!忘れ物ありませんでしたぁ!? |
加蓮 | あれ、美紗希さん?あ、じゃあもしかして……この雑誌、美紗希さんの? |
美紗希 | あ、それ!そう、あたしの!朝買って、レッスンの合間に読もうと思ってたんだけど、すっかり忘れてたんだよねぇ。 |
美嘉 | なるほどね★この雑誌、衛藤さんなら、イメージぴったりかも! |
美紗希 | イメージ? |
美嘉 | そ!雑誌の表紙にさ、『オシャレも仕事も!欲張るオトナのあなたへ』って、書いてあったからさ♪ |
美嘉 | 衛藤さんって、まさにオシャレも仕事もデキるオトナってカンジだし! |
加蓮 | うん、言えてる。この前、プロデューサーさんとちひろさんが話してたよ。 |
加蓮 | 美紗希さんって、事務所でも現場でも、誰かが困ってるとすぐ気づいて、フォローしてくれるんだって。 |
美嘉 | それそれ!アタシも前にヘアゴム貸してもらった!あの時は、助かった〜!ホント、気が利くよね★ |
美紗希 | うふふ、ありがとぉ♪でもぉ、二人ともベタ褒めしすぎだよ〜? |
美紗希 | あたしは……あたしって、まだまだだなぁって思うしねぇ。 |
加蓮 | そうなの?なんか意外かも。 |
美紗希 | そうだよぉ〜。この前も撮影でも、プロデューサーさんや、千秋ちゃんがフォローしてくれたからミスなくできたし。 |
美紗希 | それに……この業界って、オシャレな人も、仕事ができる人もいっぱいいるでしょ?だから……ねぇ〜。 |
加蓮 | ……悔しい、とか? |
美紗希 | そう、ちょー悔しいっ!でも、それ以上に……アイドルになってよかったなぁって、思ってる♪ |
美紗希 | まだまだ自分を磨いていこうって、思えるんだよねぇ。 |
美嘉 | あはは、意外!衛藤さんって、けっこう負けず嫌いなんだ!その気持ち、わかるケド★ |
加蓮 | 私たち、アイドルだもんね。みんな、もっと輝きたいって、すごく努力してる。 |
美紗希 | ふふっ♪そーいうコト☆でも学生は、学業両立が大変そうだよねぇ。 |
美嘉 | あーっ!!!明日の古典、ヤバいんだった!出席番号的に、絶対あてられるし〜……どうしよ〜っ……。 |
加蓮 | もしかして、美嘉の先生、その日の日付けと出席番号が同じ人をあてるタイプ? |
美嘉 | そう、それ!あてられんの予測できるのはいいんだけど、難問の時はマジ勘弁〜……。 |
美紗希 | 懐かしい〜♪あたしの時も、そんなカンジであてられたなぁ〜。たまーに気まぐれで、順を逆にする先生もいたり。 |
加蓮 | あ、いるいる!そういう時、焦るよね。 |
美紗希 | 今も、そういうのは変わらないんだねぇ♪ |
美嘉 | ねぇねぇ、衛藤さんって、どんなJKだった? |
加蓮 | あ、それ私も気になる。 |
美嘉 | バリギャルってカンジじゃなさそうだけど……やっぱ、最強オシャレJKってカンジだった? |
美紗希 | ん〜、別に普通の子だったと思うなぁ。 |
美紗希 | あたしが通ってたのは、派手なオシャレはできない高校だったんだよねぇ。 |
美嘉 | え〜、そうなんだ!それ、つらくない〜? |
美紗希 | ううん。厳しすぎってわけでもなくってぇ、まぁまぁ自由なトコだったしね♪ |
美紗希 | だから、香りつきリップとか、淡いピンクのマニキュアとか、そーいうカンジで、さり気ないオシャレを楽しんでたかなぁ。 |
加蓮 | シンプルでも、ネイルって気持ちが上がっていいよね。……私も、次のネイルは淡いピンクの、買おうかな。 |
美紗希 | みんなでおそろにするのもオススメだよぉ♪放課後集まって、オシャレ女子会とかも楽しいし! |
美嘉 | あはっ★なーんだ!やっぱ、最強オシャレJKだったんじゃん♪ |
美紗希 | ふふっ!そーかも☆ |
加蓮 | 今も昔も、美紗希さんにとっては、その自信が、一番のオシャレなんだね。 |
美嘉 | なにそれめっちゃ熱い!加蓮、イイコト言う! |
美紗希 | だから持ち上げすぎだって〜!でも、そうだなぁ〜……そういうのもあったのかも。 |
加蓮 | へぇ〜? |
美紗希 | きっとあたし、お母ちゃんの自慢の娘でいたかったんだよねぇ。お母ちゃん、いっつも輝いてたから。 |
美紗希 | ほら、オシャレするのって、自分のためでしょ〜?あたしは、胸を張れる自分でいるためだったのかも。 |
美紗希 | な〜んて、ちょっとカッコつけすぎだけど☆ |
加蓮 | ううん、全然。素敵だなって思うよ。だって今の美紗希さんも、すごく輝いてみえるから。 |
美紗希 | ありがと、加蓮ちゃん♪お母ちゃんもね、そう言ってくれるんだぁ。 |
美紗希 | 「前も素敵だったけど、今の美紗希も、いちだんとキラキラしてるね」って!ふふっ、イイでしょ♪ |
美嘉 | うん、最高っ!アタシたちも、負けてらんないな★ねっ、加蓮! |
加蓮 | 本当にね。美紗希さんからオシャレテク、盗んじゃおうっと。 |
美紗希 | やる気だねぇ〜♪じゃあ、さっきのやつ……やってみるぅ? |
美紗希 | 今度一緒にランチしよ♪でー、その後はあたしの部屋で、オシャレ女子会!どうかな? |
美嘉 | わっ、いいの!?やった!! |
加蓮 | ぜひお願いします♪あっでも、大人すぎるランチだと、緊張しそうだけどね。 |
美嘉 | たしかに!JKでも行けそうなところでお願いっ★ |
美紗希 | も〜!あんまりハードル、上げないでぇ!でも、美味しいトコにはするから、お楽しみにぃ♪ |
美紗希 | っと、もうこんな時間!話しこんで、レッスンの邪魔しちゃってごめんねぇ。 |
美紗希 | じゃ、女子会の件は、また後で連絡するねぇ〜。それじゃあ、二人とも、レッスン頑張ってねっ! |
加蓮&美嘉 | はーい!よろしくお願いしまーす♪ |
| 今のあたしは、もう女子高生じゃない。 |
| あの頃には戻れないし、完璧な大人でもないし。……うん、わかってる。 |
| でも、それでいいの。 |
| 理想の自分に向かって、磨いて行ける『今』が、とっても楽しいから♪ |
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