| ある日の昼下がり |
奏 | はい、コーヒー。それと、お茶漬けのチョコレート。私の手作りよ。 |
奏 | ふふ、意外だったかしら?バレンタインにお菓子作りの仕事をしてたから、たまに作りたくなるのよ。 |
奏 | それに……今日のレッスンはかな子と一緒だから、ふいに作りたくなったのかもね。 |
奏 | あら、いけない?バレンタインの頃よりは、随分上達したのよ?あの時は、たしか…… |
| 二月某日── |
奏 | へぇ、これが製菓用のチョコね。美味しそう。ちょっと味見してみる?はい、拓海。 |
拓海 | おっ、やりぃ!へへっ♪サンキュ奏!有香も食うか?ホラ! |
有香 | ありがとうございます!では、失礼して…… |
拓海&有香 | あー……あ゛っ!!? |
伊吹 | ちょっ、えっ?二人ともどうしたの!? |
拓海&有香 | にっがっっっ!!! |
法子 | ん?……ああ〜!それ!二人がいま食べたのって、ハイカカオのビターチョコですよ〜っ!? |
奏 | ふふっ、うふふふっ♪ |
拓海 | テメッ、奏ェェッ!!ひっかけやがったなァ!? |
奏 | あの時は、拓海と一緒に、有香さんも釣れたのよね。うぶな反応で可愛かったわ♪それに…… |
法子 | 二人とも、安心して♪そんな時はこれ!ドーナツ!甘いし、すっごく美味しいよ♪……はいっ、ぱーくっん♪ |
拓海&有香 | ぱーっくん……!もぐもぐもぐ………… |
拓海&有香 | うまーっ♪ |
法子 | えへへ〜っ♪二人とも、まんまる笑顔になったねっ! |
奏 | 咄嗟にドーナツを差し出した法子ちゃんも可愛かったわね。ふふふ♪ |
奏 | あの後、フレちゃんも顔を出してくれたし、かな子もケーキを差し入れしてくれたり、他にもイロイロ……。 |
奏 | なにかと賑やかなお仕事だったわ。楽しかったわ。 |
奏 | あの後から、かな。かな子とよく話すようになったのは……。 |
| ──バレンタインの数日後 |
| カチャカチャ… |
奏 | あら……?誰かいる?何か作ってる音がするし。もしかして…… |
かな子 | よいしょ……っと♪ココアパウダーと、バナナ。それから、あとは……。 |
奏 | ふふ、やっぱりかな子ね。今日は何を作ってるの? |
かな子 | あ、奏さんっ♪ふふっ、なんだと思います? |
奏 | そうねぇ……材料を見るに、ケーキかしら? |
かな子 | はーい、当たりですっ♪実はこの前、お菓子の国をコンセプトにしたPVの撮影をしたんですけど…… |
かな子 | その時の小道具に、魔法の本を象ったケーキがあって!とっても可愛くて、しかも美味しかったんですっ♪ |
かな子 | すごく気に入ったから、撮影後に、レシピを教えてもらったんです。それで、早速作ってみようと思って♪ |
奏 | へぇ。今日のおやつは、魔法の本……か。子どもも大人も喜びそうね。 |
かな子 | はいっ。出来上がりを楽しみにしててくださいね♪ |
奏 | ……ねぇ、私も手伝ってみていいかしら?今日の用事はもう済んだから。 |
かな子 | えっ、いいんですか? |
奏 | むしろ、是非お願い。……この間ね、お菓子を作る仕事をしたの。だからきっと私も、役に立てると思うわ。 |
かな子 | ありがとうございます♪ぜひ、一緒に作りましょう〜。一人で作るより、二人で作った方が楽しいですから! |
奏 | ありがと。じゃあ、準備してくるわね。 |
奏 | それで、これから何をするところだったの? |
かな子 | 次は、スポンジを焼くのと、甘〜いホイップクリームを作るところです♪奏さんは、どっちをやりたいですか? |
奏 | それじゃあ、私はクリームを引き受けるわ。柔らかい口どけのクリームにしましょうか。 |
奏 | とろけるキスみたいな……♪ |
かな子 | キッ!い、イエッ!ケッ、ケーキだからちょっと固めがいい、かなっ?それ、スポンジに塗る予定ですしっ! |
奏 | あら残念♪ふふふっ。じゃ、戯れはここまでにしてちゃちゃっと作りましょうか。まずはグラニュー糖を…… |
奏 | っと、こっちは塩ね。ふふ、危ない危ない♪ |
奏 | ……ああ、そう言えばね。さっき話した仕事でも、砂糖と塩を間違えそうになったのよ。あの時は焦ったわ。 |
かな子 | あ〜、咄嗟に間違えちゃうことって、ありますよね〜。お菓子作りあるあるなのかも?よく話にも聞きますし。 |
奏 | あら、かな子はそんなミスしないでしょう?完璧なスイーツを次々生み出す……まるで魔法使いみたいだもの。 |
かな子 | そんなことないですよ〜?最近は間違えるのはないですけど、昔は何度かやっちゃいましたから。 |
奏 | ……あら、本当?かな子が? |
かな子 | はい、何度も♪そうだな〜……今でも覚えてるいるのは、小っちゃい時のバレンタインのお話なんですけど。 |
かな子 | 私、お父さんにチョコレートドリンクを作ったんです。もう、すっごく張り切って♪けどその時に……。 |
奏 | ……塩と砂糖、間違えたの?……お父さん、飲んじゃった? |
かな子 | えへへ……はい……♪頑張って飲もうとしてくれたんですけどね……。 |
奏 | ふふ、健気なお父さんね。 |
かな子 | でもやっぱり飲めなくて。まあ、そうですよね〜。だってお塩すっごく入れちゃいましたから。 |
かな子 | 結局、全部捨てることになっちゃって……お母さんに怒られちゃいました。えへへ……。 |
奏 | かな子にも、そんな失敗談があったのね。意外だったわ。それじゃ、私はあなた以上に慎重にやらないとね。 |
かな子 | ふふっ、大丈夫ですよ〜、奏さんは器用ですし♪それに、失敗よりなによりも楽しく作るのが一番ですから! |
奏 | かな子って、いつも楽しそうにお菓子を作るわよね。それって……食べる人のことを考えて作るから、かしら。 |
かな子 | ん〜、どうだろう?それもあるかもしれないけれど作ってる時から「美味しそう」って、思っちゃうからかも。 |
かな子 | 味を想像したら、自然とにこにこしちゃうんです♪ |
奏 | そういうことね。かな子らしいわ。 |
かな子 | あっ、いたいた!奏さ〜ん、そろそろレッスンの時間ですよ〜♪ |
奏 | あら。噂をしたら影がさしたわね。今行くわ。 |
奏 | 私の話、最後まで聞いてくれてありがとう。……といっても、私のストーリーは、始まったばかりなのだけれど。ふふ。 |
奏 | じゃ、行ってくるわね。 |
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