| 机の下 |
乃々 | ……シュ。…………シュ。 |
まゆ | …………? |
乃々 | …………シュ。シュッシュッ……。……………………ふふ。 |
まゆ | あの……? |
乃々 | えっ……あわわ、まゆさん……!いつからそこに……! |
まゆ | ええと……乃々ちゃんが霧吹きでキノコにお水をシュッシュしながら微笑んでいる時から……ですね。 |
乃々 | あう……一番見られたくないところをばっちり見られてたんですけど……もりくぼ、閉店です……。 |
まゆ | そんな、机の奥に隠れなくても大丈夫ですよ?乃々ちゃんも、机の下でキノコを育てているんですか? |
乃々 | いえ……このキノコさんたちは輝子ちゃんのトモダチです。輝子ちゃん、昨日から泊りがけのお仕事なので…… |
乃々 | お節介かとも思ったんですけど……輝子ちゃんも留守が心配でしょうし、メールでお世話のしかたを聞いたんです。 |
まゆ | そうだったんですね。……お世話、難しいですか?よかったら、まゆにも教えてもらえませんか? |
乃々 | 特に難しいこともないですけど……まゆさん、キノコに興味が……? |
まゆ | ふふ♪同じ机の下の住人として、まゆにもお手伝いができればいいなって思ったんです。 |
まゆ | それに、ときどきお料理に使わせてもらってますし……♪ |
乃々 | そうなんですね……じゃ、じゃあ……私が、頑張って説明します……教えるなんて恐れ多いですけど……。 |
まゆ | お願いします♪ |
乃々 | ……こうして、まんべんなく表面に……シュッシュッと……。 |
乃々 | ……あんまりたくさんかけると、カビが生えるそうなので……あげすぎに注意、だそうです……。 |
まゆ | まぁ……お水も愛情も、与えすぎるとかえってよくないんですね……。難しいものですね……。 |
乃々 | 愛情……は、わかりませんけど……輝子ちゃんはいつも、声をかけながらお水をあげてますよね……。 |
乃々 | 大切なんだなって、思います。 |
輝子 | た……ただいま……フヒ。 |
乃々 | あ、輝子ちゃん。おかえりなさい……お仕事お疲れさまでした。 |
まゆ | おかえりなさい♪長旅大変でしたね。 |
輝子 | ボノノちゃんも、まゆさんも、お疲れさま……。ふ、二人してキノコを囲んでどうしたんだ……? |
まゆ | 今、乃々ちゃんから輝子ちゃんのお友だちのお世話のしかたを教わっていたところなんです。 |
輝子 | えっ、あ……そうだ、ボノノちゃん、留守を預かってくれて、あ、ありがとう……! |
乃々 | いえ……も、もりくぼはただ、いつも輝子ちゃんが大切にお世話してるのを見てたので……何かお役に立てればと。 |
輝子 | フヒ……れ、連絡もらって……嬉しかったんだ……その……本当にありがとう。 |
まゆ | ………… |
輝子 | みんなも、ボノノちゃんとまゆさんに優しくしてもらって、きっと……喜んでる。まゆさんも、ありが……あれ? |
乃々 | まゆさん……いないんですけど……。 |
輝子 | 用事でも……あったのかな?……あっ、お、お土産、渡したかったな……。 |
まゆ | 乃々ちゃん、輝子ちゃんのために代わりにお水をあげてたなんて……優しいですね。輝子ちゃんも、お仕事たくさん |
まゆ | 頑張ったでしょうし、二人にあたたかい飲み物でも淹れてあげましょう。ふふっ♪ |
まゆ | コーヒー……は、あとでプロデューサーさんが帰ってきてから淹れるとして…… |
まゆ | そうだ、学校のお友だちにもらったアップルティーにしようかな♪ |
まゆ | (……不思議。前までは、プロデューサーさんの近くに他の子がいることで、嫌な気持ちになったりしたけど) |
まゆ | (今は……プロデューサーさんが大切にしているものを、まゆも、大切にしたい……) |
まゆ | (だって……プロデューサーさんのアイドルは……みんなに優しいアイドルであるべきだもの) |
まゆ | 二人とも、お茶がはいりましたよぉ♪ |
輝子 | え、お茶……?おお……まゆさん、お茶淹れてくれてたのか……あ、ありがとう……。 |
乃々 | いい香りです……。もりくぼにまで……ありがとうございます……。 |
まゆ | 乃々ちゃんも輝子ちゃんも、とっても頑張りましたから……まゆに労わせてください♪ |
輝子 | う、嬉しいな……ボッチの私にわざわざお茶を淹れてくれる人がいるなんて…… |
輝子 | これも……アイドルになってよかったことの一つだな……。 |
乃々 | うう……もりくぼ、まゆさんの笑顔に浄化されそうです……でも……嫌じゃない……。 |
まゆ | ふふっ♪さぁ、冷めないうちにどうぞ♪ |
乃々・輝子 | いただきます……。 |
3人 | ………………………………はー……♪ |
乃々 | 美味しいです……甘くて、リンゴの香りがして、絵本の世界にいるみたい……。 |
輝子 | うん……あったかいし、美味しい……。し、仕事、頑張ってよかった……。 |
まゆ | あたたかいお茶で一息つくと、ホッとしますよね♪ |
輝子 | うん……私がシイタケクンだったら、今すごく傘が開いたと思う……あ、そうだ。 |
輝子 | お、お土産買ってきたんだ。二人とは……よく机の下でご一緒するし……。トモダチもお世話になったし……。 |
輝子 | でも、ぼ、ボッチが選んだから……微妙かも……い、要らない、かも……。 |
まゆ | そんなことないですよ。忙しい合間にまゆたちのために選んでくれたんですよね?まゆ、とっても嬉しいです♪ |
乃々 | わ、私も……大したことしてないので、かえってもうしわけないんですけど……でも、嬉しいです……。 |
輝子 | よ、よかった……じゃあ、これ……ど、どうぞ。 |
まゆ・乃々 | わぁ……ありがとうございます……♪ |
乃々 | これは……キノコのイラストのメモ帳と……キノコの香りの入浴剤……?す、すごいんですけど……。 |
まゆ | キノコのキャラクター、とっても可愛い♪キノコのグッズってこんなにいろいろあるんですね。 |
輝子 | う、うん……キノコが名産品のところだったから……入浴剤も、ほんのりシイタケの香りらしい……。 |
乃々 | それは……気になります……。出汁の気分になれそうですね。 |
輝子 | あと……こっちのクッキーは、み……みんなで、食べたいなって……。 |
輝子 | ちょうど、まゆさんが淹れてくれたお茶もあるし……お茶請けに……どうだろう。 |
まゆ | いいですね♪みんなでいただきましょう♪ |
乃々 | もりくぼ……今日は、嬉しい日です……♪ |
輝子 | フ、フヒヒ。楽しい……な。ふ、二人とも……今日はもう仕事終わったのか……? |
まゆ | はい、まゆはさっき雑誌のインタビューが終わりました。 |
乃々 | 私も……ダンスのレッスンが終わったので……。 |
輝子 | じゃ、じゃあ……のんびりできるな……。そういえば、帰ってくるとき、天気がすごくよかった……。 |
乃々 | ……どこか、行きます? |
まゆ | そうですねぇ……。 |
3人 | ………………………………。 |
乃々 | ……き、今日は、机の下にいましょうか。 |
まゆ | まゆもそう思いました。輝子ちゃんも遠くまでお出かけしていましたし、久しぶりに机の下に帰って来たから、 |
まゆ | ゆっくりしたいかなって。 |
輝子 | そ、そうだな……。お出かけは、また今度……勇気が出たら……。 |
乃々 | じゃあ……今日は、机の下で。何かします……? |
まゆ・輝子 | 何か……。 |
まゆ | (と言っても……一緒に日記を書くわけにはいかないですし……) |
輝子 | (と言っても……一緒にトモダチに話しかけるわけには……い、いかないか) |
乃々 | (と言っても……一緒にポエムを書くわけには……あ) |
乃々 | そ、そうでした。もりくぼ、学校で絵本を借りたんです。とっても素敵な絵本だったので……一緒に読んで、 |
乃々 | のんびりおしゃべりとか……や、やっぱりなんでも…… |
まゆ | あら、いいですね♪ せっかくですし、輝子ちゃんのお友だちにも読み聞かせしてあげるなんてどうでしょう? |
輝子 | い、いいのか……?キノコ、きっと大喜びですくすく育つぞ……! |
乃々 | も、もりくぼが読み聞かせなんて……恐れ多いんですけど……でも、もりくぼも何かしたいので……。 |
輝子 | フ、フヒ……なんだか、私たちらしい過ごし方……だな。 |
乃々 | そうですね……安心安全ですし……。 |
まゆ | ええ、結局落ち着くのは…… |
3人 | 机の下だな。机の下です。机の下ですね♪ |
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