| とある日… |
薫 | おじゃましまーっ! |
薫 | わぁー!すごい、すごーい!ここが、ことかお姉ちゃんの「ベッタク」なんだねっ! |
| はい。今日のゲストは薫ちゃんだけですから、どうぞ気兼ねなく、くつろいでいってくださいませ♪ |
執事 | お話し中失礼します。お嬢様、少々よろしいでしょうか。奥様からお電話が…… |
琴歌 | あら、何かしら?すぐにまいりますわ。 |
琴歌 | 薫ちゃん、私、少々席を外させていただきますわね。 |
琴歌 | その間は、このメイドがおりますから、 困ったことがあったら、なんでも言ってくださいませ。 |
薫 | はーい!かおる、いい子で待ってまーっ! |
琴歌 | ふふっ♪じゃあ、よろしくね。 |
メイド | はい、かしこまりました。 |
薫 | (この人が、本物のメイドさん。それから、ここが「ベッタク」で、ことかお姉ちゃんは、お嬢さま……) |
薫 | ねぇねぇ、「お嬢さま」ってなーにっ? |
琴歌 | え……えーっと……?その質問は、次のお芝居のことと、関係しているのでしょうか? |
薫 | そうっ!かおるたち、お嬢さまのお芝居するって決まったでしょ? |
薫 | 決まったけど……かおる、わかんないなーって!どういう風なのが、お嬢さまなのかな? |
薫 | キレイなお洋服着たり、美味しいお料理食べたり?あとは……おっきい犬飼ってたり!あってるっ? |
琴歌 | どうでしょうか……。おそらくは、暮らしぶりというよりも……生まれに、その答えがあると思いますわ。 |
薫 | うまれ? |
琴歌 | たとえば……「家族」や「家」などを挙げれば、わかりやすいかもしれませんわね。 |
琴歌 | そうですわ……よろしければ、お食事にいらしてみませんか?たしか今週末は、父も母も夜は別宅でゆっくり過ごすと |
琴歌 | 聞いていたので……お話しできる場も設けられるかもしれません。薫ちゃんをご招待いたしますわ♪ |
| カチャ…… |
薫 | 紅茶だー!ありがとうございまーっ! |
薫 | あっ!ねえねえ、お嬢さまってどうやって紅茶飲むのっ? |
メイド | どうぞ、薫様のお好きなようにお飲みください。 |
薫 | かおるさまって……かおるのことっ!? |
薫 | えー!じゃあじゃあ、お砂糖は何個までっ?この白いの……牛乳?どっち先に入れるのっ? |
メイド | 牛乳……はい、ミルクです。順番は、お好きなように……。 |
薫 | えーっ!!どっちからにしよーっ!! |
琴歌 | お待たせしました。……何か、困ったことでもありましたか? |
薫 | お嬢さまの、紅茶の飲み方を教えてもらおうと思ったの!でもメイドさんって、よけいなおしゃべりはダメなんだね? |
琴歌 | ふふっ、紅茶をいただくときのマナーなら、私が教えいたしますわ。 |
琴歌 | メイドがお喋りできないのは、お仕事中だからなのです。薫ちゃんも、お仕事しているとそんな場面があると思います。 |
薫 | うーん……うんっ!他の人が歌ったり、おしゃべりしてたりするときはしーってしてるよ! |
琴歌 | ええ、それと同じですわ。それに本当は、この子、お喋りが大好きなんですのよ。 |
薫 | えー、ほんとーっ!? |
琴歌 | そう。ですからあなたも、いつも通りになさって。その方が、きっと薫ちゃんも、楽しい時間を過ごせますわ。 |
メイド | お嬢さま……。 |
琴歌 | それと、その「お嬢様」も今はよしてくださいませ。いつも通り、「琴歌」と♪ |
メイド | ……わかりました、琴歌様。 |
執事 | お嬢様、度々申し訳ございません。坊ちゃまからご連絡がありまして……。 |
琴歌 | まぁ。お二人とも、しばらくは私抜きでお喋りをお楽しみいただけるかしら? |
薫 | はーいっ!かおる、メイドさんといい子にお話ししてまーっ! |
| ……………………………………………… |
メイド | ─それで、習い事で水泳を始められたのですが、思うように上達しないからと、自宅で練習するようになったんです。 |
薫 | へー!おうちにプールがあるんだねーっ! |
メイド | 本邸の方にあるんです。使用人たちを集めては、泳ぎを競い合ったりして…… |
メイド | ふふっ、琴歌様は、とっても負けず嫌いなところがあるんですよ。 |
メイド | だけど、それでこそ西園寺家のお嬢様だと、私は思ってます。琴歌様は、常に努力の人。家名に恥じない方だと…… |
メイド | ……はっ!すみません。琴歌様が席を外しているところで、話しすぎていましたね……。 |
薫 | んーん!お嬢さまっていろいろ大変なんだね〜。 |
メイド | ……立派な生まれの方は、相応に、多くの期待を背負っているものです。琴歌様も、坊ちゃまもまた…… |
薫 | ぼっちゃま? |
メイド | ああ、私ったらまた、余計なことを……! |
琴歌 | 少し、よろしいかしら?薫ちゃんに、ご紹介させていただきたくて。 |
メイド | はっ、はいっ! |
琴歌 | 私の弟です。ちょうどこちらに本を取りに来ていたらしくて。薫ちゃんの話をしたら、ぜひご挨拶をしたい、と。 |
弟 | こんにちは。姉がいつもお世話になっています。 |
薫 | 龍崎薫ですっ!9歳です!ことかお姉ちゃんと同じで、アイドルやってまーっ! |
弟 | 薫さん。元気いっぱいだ。今後とも、姉のことをどうぞよろしくお願いします。 |
薫 | ……ヒソヒソ(この人が、ぼっちゃまだよねっ!) |
メイド | ……コソコソ(そ、)そうですが、先ほどの会話は内緒で……! |
琴歌・弟 | ? |
琴歌 | 緊張しなくても、大丈夫ですわ。優しくて頼りになる、自慢の弟なんですのよ。 |
弟 | あははっ、姉さんも、僕の自慢ですよ。じゃあ薫さん、またいつでも遊びに来てくださいね。 |
薫 | あっ……はいっ!ありがとうございまー! |
琴歌 | 慌しくて、申し訳ありません。弟も忙しい身なもので……。 |
薫 | ううんっ!さいおんじけのぼっちゃまともおしゃべりできて、よかったー! |
メイド | か、薫様〜? |
琴歌 | ふふっ、二人が打ち解けたようで、嬉しいですわ。薫ちゃん、お嬢様について何かわかりそうですか? |
薫 | うーんと、えーっとね〜……。 |
琴歌 | 難しいですわね。私も、明確な答えを持っているわけではありませんもの。この後、両親も帰ってきますし、そこで…… |
薫 | かおるね、お嬢さまも、まわりの人たちもがんばってるってわかったよ!それでね、お嬢さまは…… |
薫 | ことかお姉ちゃんは、みんなに優しくてりっぱなの!かおるも、そんなお嬢さまになりまーっ! |
琴歌 | 薫ちゃん……どうもありがとうございます。とても嬉しいお言葉ですわ。 |
琴歌 | 私も、みなさまのサポートを全力でいたします。 |
琴歌 | 時に美しく……時に大胆に。どんな舞台でも、胸を張って挨拶ができる、素敵な淑女を目指しましょう♪ |
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