| カフェ |
奏 | グラフィックは綺麗だったと思うわ。コンセプトも、今度のMV撮影とマッチしてて参考になったし |
伊吹 | ふむふむ、それで? |
奏 | でも、最近の映画って映像はたいてい綺麗よね。私は……少し欠けた、完璧じゃないものの方が惹かれるかな。 |
奏 | そうね……今日の映画だと、ヒロインの味方をしていた魔法使いの老婆の台詞が、印象に残ったわ。 |
奏 | 『己を貫け。されば道に迷うことはない。覚悟は自分だけのもの』──っていう……。 |
伊吹 | すっごい!よく憶えてんね! |
奏 | あら、気に入った台詞って憶えたりしない? |
伊吹 | うーん、アタシはどの台詞が好きとか、あんまり意識したことないな〜。 |
奏 | ふふっ、伊吹ちゃんらしいけどそれだと今日の映画は、少し難しい台詞も多かったんじゃない? |
伊吹 | あ、なにそれー。憶えてなくても、ちゃーんと話はわかってますー♪ |
伊吹 | それに、アタシは面白かったから大満足っ♪グッズもいろいろ買っちゃったしね〜☆ |
奏 | そういえば、何を買ったの?たくさん買ったみたいだけど。 |
伊吹 | へへ〜♪劇中のドラゴンが可愛かったからさ〜!キーホルダー買っちゃったっ♪もちろんパンフレットもね! |
伊吹 | あとはー、これ!ボールペン!綺麗でしょー?モチーフの翼が描かれてるの! |
奏 | 奏、こういうのは好きそうだし、はい、あげるっ♪ |
奏 | あら素敵。へぇ……グッズって、こういう感じなのね。普段買わないから、新鮮だわ。 |
伊吹 | あー、奏はグッズとかキョーミなさそうだよね〜。 |
奏 | そうね。私はチケットの半券があればいいの。 |
奏 | それに……こうして映画を観た後に人と感想を語り合うのも、いいものね。この感じ、久しぶりよ。 |
伊吹 | 奏って、一人で観る派だっけ。アタシはダメだなー。終わった瞬間にでも、誰かと語りたくなっちゃうからさー! |
伊吹 | 誰かと、ってのも……悪くないっしょ? |
奏 | ふふっ、そうね。悪くないわ。 |
奏 | (でも……私の周りには、伊吹ちゃんみたいに、熱く語ってくる子はいなかったのよね……) |
奏 | ……アイドルって、いろんな人がいて面白いわね。 |
伊吹 | ほんと、それ!奏も拓海も有香も法子ちゃんも!全然タイプ違うけど、一緒にいてめっちゃ楽しいもんね! |
奏 | ……伊吹ちゃんって、素敵ね。どんな急な話題の方向転換でも、ついてきてくるれるもの。そういうとこ、スキよ。 |
伊吹 | えっ?な、なんだよ急に!照れるじゃん!へへっ♪ |
伊吹 | んー……あ!そうだよ、そうそう!アタシたちって、アイドルなわけじゃん? |
伊吹 | てことは、そのうち映画の仕事も来るんじゃない? |
奏 | 伊吹ちゃんだったら、どんな役を演じてみたい?たとえば……アクション映画なんて合いそうだけど。 |
伊吹 | あー、いいね!ハリウッドで、ド派手に美人スナイパーとか!いやー、憧れちゃうなーっ! |
伊吹 | 奏も似合いそうだけど♪あでも、意外性のある役とかやってほしいかなー? |
伊吹 | 奏はなんでも、できそうだし〜……。そうだなぁ〜………… |
伊吹 | (たとえば、時代劇なんかはどうかな……) |
悪商人 | お代官様、こちら、山吹色の菓子にございます。 |
悪代官(奏) | あら、こんなに……。ふふっ、うふふ……♪おぬしも……悪よのう……♪ |
伊吹 | (……うんうん、悪くない♪) |
伊吹 | (あ、でも……動物モノの感動ストーリーもアリかもっ!それなら……) |
犬 | ワンッ、ワンッ! |
| ──夕陽に染まる海辺で、少女と犬が戯れている。天涯孤独の彼女にとっては、彼だけが唯一無二の家族だ。 |
少女(奏) | うふふふっ、うふふふふふふふっ♪ |
犬 | わふっ? |
少女(奏) | ふふっ、あははっ♪ふふっ♪ |
伊吹 | (……おっ、これもアリ!犬役は……聖來さんのわんこにお願いしたり?友情出演ってやつで♪へへへっ♪) |
奏 | ………………。 |
伊吹 | (いやでも、やっぱりラブストーリーかなー!豪華客船の舳先で……) |
伊吹 | へへっ、ふへへへ……☆ |
奏 | ………………。 |
奏 | コラ、伊吹ちゃん?そろそろ戻ってきなさい? |
伊吹 | ……えっ!?あ、ごめんごめん! |
奏 | 貴方、いま……私で、あらぬ妄想をしてたわね? |
伊吹 | いやー、あはははっ。奏って、なんでも似合うからさ〜♪ |
奏 | もう、しょうがないわね。……ふふっ。伊吹ちゃんってほんと、見ていて飽きないわ。 |
伊吹 | そう?褒められた♪もっと見ていいよ☆ |
奏 | あら、大胆ね♪……………………………………。 |
奏 | (伊吹ちゃんは……踊っているときの表現力の豊かさが、頭ひとつ抜けているのよね。つい見入っちゃうし……) |
奏 | (殺風景なレッスンルームで踊ってても、伊吹ちゃんの周りだけ、鮮やかに色づいて見えるもの) |
奏 | (表情もコロコロ変わるし、何より素直だわ。どれも……私には無いもの、ね) |
奏 | (人を惹きつける魅力を、全身から発してるみたい。……だから私も、このコに囚われてしまったのかも) |
奏 | ………………。 |
伊吹 | …………お〜い?奏ー?もしもーし?見すぎだぞー? |
奏 | 伊吹って…… |
伊吹 | お? |
奏 | ……いいわよね。 |
伊吹 | えっ!?何が!? |
奏 | ふふっ♪ |
奏 | ベタベタと群れるのは好きじゃない。でも──── |
伊吹 | ねぇねぇ、どこがいいの?どこどこ?っていうか、ニヤけてない? |
奏 | ううん。 |
奏 | なんでもないわ……♪ |
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