| 第1話 |
| 毎日、私たちは思っています。今日も、輝くアイドルでいられた。それは、あなたのプロデュースのおかげだって。 |
| このまま、ずっと一緒に歩み続けられたら、どれだけ幸せだろうって。 |
| だけど……どれほど願っていたとしても、終わりの日は、やってきてしまうかもしれないんです。 |
卯月 | 本当に、もうお別れなんですね……。やっぱり、寂しいなあ……。 |
響子 | ここで、たくさんのことがあったよね。私たちの始まりの場所で、大切な居場所……。 |
美穂 | 寂しいけど……それでも最後は笑顔で、ありがとうって言いたいですっ! |
瑞樹 | そうね。時代の流れもあるしお別れは覚悟してたもの。 |
瑞樹 | 私たちは、ここで作ったたくさんの思い出を抱きしめて、これからを生きていきましょう。 |
響子・卯月・美穂 | ……!はいっ! |
清美 | あの!しんみりしてるところ悪いんですけど、手を貸してください! |
清美 | このままでは、予定日までに引っ越しが終わりませんっ! |
| 事務所の引っ越しが決まったのは、つい先日のことでした。建物が古くなってきたからという理由だそうです。 |
| 大きなLIVEも控えている私たちは、オフの日に少しずつ、事務所を掃除することにしました。 |
清美 | 私物だけでもすごい量ですから。各自、持ち帰るものと新しい事務所に持っていくものを分別してもらっています。 |
響子 | そして、みんなが私物を整理している間に、私たちが自慢のテクニックで、事務所を掃除して── |
??? | どこにいったの〜!?うわああああああん!なしてや!?ワンワン!! |
清美 | ……今、何か不穏な声が聞こえたような……? |
卯月 | トラブルでしょうか?探し物が見つからないとか……少し、様子を見てきますね! |
瑞樹 | いってらっしゃい♪お掃除は、私と清美ちゃんにお任せあれ! |
美穂 | 最初に声が聞こえたのはこの辺りですけど…… |
優 | アッキー!どこにいったの〜!?出てきてぇ〜! |
響子 | これは探し物というより…… |
都 | 探しアッキーです! |
頼子 | その……私たちは、事務所の絵画やポスターといった作品の搬出作業をしていたんですが…… |
都 | その様子を、アッキーさんが珍しそうに首を傾げて見ていたんですよね! |
優 | だから、教えてあげたんだぁ。事務所をお引越しするんだよ〜って☆そしたら、どっかにいっちゃったの〜! |
都 | 私の推理では、引っ越しを寂しく思ったアッキーさんが、この辺りでストライキをしているはずだったんですが……! |
卯月 | そういえば、さっき、犬の鳴き声も聞こえたような……?たしか、応接スペースの方でした! |
都 | なるほど……間違いありません!犯人はそこにいます! |
頼子 | 都ちゃん、犯人ではなくアッキーですよ……。 |
愛海 | うわあああああああん!あたしのお山コレクション捨てないでえええええ!! |
アッキー | ワン!ワンワン!! |
頼子 | カ、カオス……ですね……。 |
卯月 | あの、清良さん、一体何が起こってるんですか? |
清良 | 私は衣類やクッションの整理担当ということで……愛海ちゃんのクッションも洗濯しようとしたんです。 |
清良 | そこで、愛海ちゃんがとびかかってきて、アッキーが鳴いて、この状況に……。 |
優 | アッキー、いつもはちゃんといい子にしてるのにぃ〜。都ちゃんの言う通り、寂しかったのかなぁ? |
都 | やはり、事務所の思い出の品がどんどん片づけられていくわけですからね! |
清良 | そういうことね……愛海ちゃんもアッキーも、安心して?大切な物を、取り上げたり捨てたりするわけじゃないわ。 |
清良 | 綺麗に、ふっかふかにして、新しい事務所に持っていくのよ。 |
愛海 | そうなの!?お山の感触を完璧に再現したクッションだからダメだったのかなって思っちゃった……。 |
清良 | 大丈夫よ。公序良俗に反しない限りは。 |
頼子 | 古い物は、古いだけではなく歴史あるものですから……大切な価値があるんです。 |
頼子 | いくつかは新しい事務所へ持っていっていいとプロデューサーさんから許可をいただいていますよ。 |
優 | 全部がなくなるわけじゃないんだよ〜。アッキー、わかってくれたぁ? |
アッキー | ワンワン! |
美由紀 | よいしょ、よいしょ……タンボールが通りまーすっ! |
美穂 | わぁ、みなさん、すごい荷物ですね! |
みりあ | えっとね、こっちのは次の事務所にも持っていく、みんなの似顔絵だよ! |
舞 | こっちは、各自持ち帰る私物です。みんなで作ったアクセサリーとか。ぬいぐるみですね。 |
美由紀 | 全部詰めたら、ダンボールいーっぱいになったんだよね!運ぶのもたいへん! |
舞 | でも、全部大切なものだから、捨てたくなくて……そしたら、お姉さんたちが手伝ってくれました♪ |
若葉 | 任せてください〜♪こういう時に頼りになるのが、オトナのお姉さんですからね〜! |
亜里沙 | それに、みんなで力を合わせれば、引っ越し準備もすぐに終わりますからね♪ |
美由紀・みりあ・舞 | はーいっ! |
響子 | よかった。ここはもう大丈夫そうですね。次に声が聞こえてきた場所は…… |
卯月 | なしてや、って……きっとあかりちゃんの声ですよね。 |
りんごろう | ンゴー。ンゴー。 |
あかり | なしてや!?りんごろうが次から次へと発掘されるんご!こいつとか、鳴くし! |
あきら | どう考えても、あかりチャンが持ってきたやつだね。新商品が出る度に、自分はいらないからって。 |
あかり | それがこんなにあるなんて……こいつは売れ残りすぎ!誰か持って帰ってくれないですかね!? |
友紀 | はいはいっ!一匹連れ帰ってキャッツのユニフォーム着せていい?ポジションはどこにしようかなー♪ |
あかり | ぜひぜひお願いしますっ!ボールにでもしてやってください!渚さんもいかがです?バスケのおともに! |
渚 | いやいや、ボールにするのはさすがに気が引けるからね? |
渚 | とりあえず、りんごろうのぬいぐるみは、圧縮袋に入れれば運びやすくなると思うよ! |
渚 | 私、ちひろさんにもらってくるねッ! |
あきら | 率先して動いてくれるところ、さすがキャプテン。それに比べて。 |
りあむ | うぅ!それに比べて!ぼくは何もしてない!何もできない!むしろ邪魔では!? |
あきら | りあむサンは落ち着いて。 |
唯 | そうそう!りあむちゃんが頑張ってくれてるの、ゆいたちよく知ってるし♪ |
薫 | さっき、落ちてたゴミを集めてくれたよね!ありがとうございまーっ! |
りあむ | みんな優しい……話しかけてもらうまで部屋の隅にゴミを集めてゴミと一体化してただけだが!? |
卯月 | ……少しドタバタしてますけど、ここも大丈夫そうですね♪ |
美穂 | こっちからは、美味しそうな香りがしますっ♪ |
響子 | ごま油にしょうゆ……お腹が空いてくる匂いですね♪ちょっとだけ、お邪魔しますっ! |
菲菲 | いらっしゃいませー!ふぇいふぇい食堂ダヨー! |
卯月 | えっと、みなさんは料理中……ですか? |
ネネ | みんな、朝からずっと片づけをしてますから。そろそろお腹が空くと思って、差し入れの準備中なんです♪ |
ケイト | Yes♪フェイフェイ特製チャーハンに、UKのミートパイ。サラダはネネオススメのシーザーサラダ! |
ケイト | お腹いっぱいになれば、heavy liftingもへっちゃらデスネ♪ |
千夜 | 私はただ手伝っていただけです。お嬢さまの昼食も作っていいと言われたので、その、ついでに。 |
ちとせ | 私はみんなを見てただけ。手際よくて、退屈しないし♪ |
千夜 | 見るだけではなく、少しは食べていただけると嬉しいです。 |
ちとせ | はーい♪ |
響子 | よかったら、私も手伝いを……と思ったんですけど、料理はもうほとんどできてますね。 |
菲菲 | じゃあ、運んでほしいネ!お腹ぺこぺこな人のところにお願いするヨ! |
美穂 | はい、任せてくださいっ♪ |
藍子 | ふぅ、ごちそうさまでした♪差し入れ、ありがとうございます。お腹ぺこぺこだったので、助かりました♪ |
美穂 | 藍子ちゃんと夕美さんは、観葉植物やお花のお引っ越し担当ですもんね。大変そうですっ。 |
夕美 | みんなが水やりをしっかりしてくれたからね。どの子も大きく育ってくれて、嬉しいよ♪ |
藍子 | ほら、成長記録のアルバムもあるんです。つぼみが花咲くまで、毎日写真におさめてて。 |
夕美 | 大切な子たちだから、新しい場所でも綺麗に咲いてほしいんだ。大変だけど、頑張るよ♪ |
卯月 | 私たちも手伝いますよっ!でも、もう少し人手がいりそうですよね。 |
藍子 | じゃあ、手が空いている人がいたら、呼んできてもらえると嬉しいですっ♪ |
周子 | 食後のおやつに、八つ橋持ってきたよー。 |
紗枝 | 周子はんとこの和菓子は、いつ食べても絶品やからねぇ。 |
卯月 | あの……みなさん、今お暇ですか? |
フレデリカ | 暇かどうかはフレちゃんが決める!今はおやつタイムだから……暇デリカー♪ |
志希 | あたしは暇じゃないよー?ここにほら、キケンなお薬があるでしょ?悪用されないよう見張る必要がある! |
美穂 | えっ、それ危ない薬なんですか?一体どんな効果が? |
志希 | えっとねー、寂しくなくなる薬だよ♪ |
紗枝 | ああ、引っ越しいうと、どうしてもせんちめんたるになる子もおるしねぇ。 |
周子 | それでも、怪しい薬は使わないに限るんだけどねー。 |
| ガチャ |
周子 | おや、プロデューサーさん、おかえりー。 |
卯月 | お疲れさまですっ!私たちは引っ越しの準備……の休憩中ですね。 |
卯月 | プロデューサーさんは……これからまた会議が?そうですか。……無理はしないでくださいね。 |
| パタン |
紗枝 | プロデューサーはん、大変そうどすなぁ。 |
フレデリカ | 疲れるにしても元気がなかった!どっちかっていうと……寂しそう? |
志希 | 引っ越しだけであんなにへこむものなのかにゃー?何かヒミツがあったりして♪ |
志希 | いっそのこと、この寂しくなくなるお薬飲ませちゃう? |
響子 | さすがにそれはちょっと……。 |
周子 | ま、みんなに相談するか、プロデューサーさんが帰ってきたら訊いてみるかでいいんじゃない? |
周子 | なんだかんだ、引っ越しのために、アイドルみんなそのうち事務所に来るだろうしさ。 |
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