| 撮影中 |
| 密着ドキュメント!アイドル相原雪乃〜挑戦の日々と、休息〜 |
| 某月某日・午前10時──都内某所 |
ディレクター | …………あの。そろそろ、降りてこられるでしょうか? |
家政婦 | そうですねぇ。先程ばあや様が、朝の紅茶をお部屋へお持ちしていましたから、もう間もなくかと。 |
ディレクター | では少し、家政婦さんにお伺いしたいのですが……「ばあや様」というのは、相原さんのおばあ様ですか? |
家政婦 | いえ、ばあや様は、相原家の使用人のトップでいらっしゃいます。 |
家政婦 | お嬢様が幼少の頃から、身の回りのお世話を任されている方ですよ。 |
ディレクター | なるほ……うわ!今、何か影が二階の廊下を横切ったような……! |
家政婦 | ああ、ばあや様ですね。いつもキビキビされていて、それはもう素晴らしい方で。 |
家政婦 | あそこをばあや様が通ったということは……間もなく、お嬢様がいらっしゃいますよ。 |
ディレクター | はぁ……ばあや様……すごいんですね。 |
| Q.朝は苦手ですか? |
雪乃 | 実は、あまり得意ではありませんの。うふふふ……♪ |
| Q.今日のご予定は? |
雪乃 | せっかくのお休みですし、お天気もいいので、今日はお散歩に行きますわ。では、まいりましょう。 |
| 美術館──。 |
雪乃 | こちらは、広いお庭もあって散策もできますし、おすすめの癒しスポットですの。 |
| Q.移動は電車なのですね |
雪乃 | ええ、極力電車に乗るようにしていますの。ICカードも持っておりますのよ♪ |
| Q.美術館巡りがお好きなのですか? |
雪乃 | 幼い頃より、父や母に連れられましたから、今でも時々足を運んでおりますの。静かで落ち着きますでしょう? |
雪乃 | ……あら!次回の催しはロマネスクですって。母にも教えてあげなくては。ねぇ、ばあや? |
| 相原さんが見る先には、にっこりと笑うばあや様のお姿が──。 |
| Q.ばあや様は無口なようで… |
雪乃 | ふふふっ♪そう見えますか?いつもは違いますのよ。 |
雪乃 | 本日は、私の密着撮影。声が入らないようにすると、話していましたのよ。編集が大変でしょうからと。 |
雪乃 | よく気のつくばあやでしょう?いつも助けてもらってますの♪ |
| Q.相原さんは秋田のご出身ですよねご家族もこちらに? |
雪乃 | 家は、今も秋田にありますわ。今朝みなさんがいらした家は、数年前に、私の進学とともに、父が用意しましたの。 |
雪乃 | ですから今は、秋田の家とこちらの家、どちらも使っています。家族も、そうですわね。 |
雪乃 | それに、ばあやったら、私がこちらに越すときに一緒に来ると言って聞かなかったんですよ。ふふ♪ |
雪乃 | 母も、東京の歯科に通っているので、よくこちらにおりますの。友達もできて、楽しそうにしていますわ。 |
| Q.このあとのご予定は? |
雪乃 | お昼ご飯にいたしましょう。そのあとはお買い物に……♪ |
雪乃 | まずは、雑誌コーナーからチェックしましょう。…………あっ! |
| Q.何か見つけましたか? |
雪乃 | はい♪こちらの雑誌にのあさんが載っていますわ! |
雪乃 | 今度のお仕事で、ご一緒すると事務所で伺いましたの。それから……まぁ!こちらの雑誌には、志希さんが♪ |
雪乃 | ばあやも何か見つけて……あら。そちらの雑誌にはそらさんがいるのね♪ありがとう、ばあや。 |
| Q.全部買うのですか? |
雪乃 | もちろんですわ♪せっかくご縁があってご一緒するのですから、少しでも知りたいのです。 |
| Q.たくさん買いましたね |
雪乃 | ふふっ、そうですわね。欲しい本が次から次へと見つかるものですから。紅茶の本もありましたし♪ |
| それにしても……本ってとても重いですわよね。……あ、ばあや大丈夫よ。自分で持てるわ。 |
| Q.手伝いましょうか? |
雪乃 | ありがとうございます。ですが、大丈夫ですわ。 |
雪乃 | ショッピングモールには、コインロッカーという便利な設備があると伺いましたの。そちらに預けてみますわ♪ |
| Q.引き続きお買い物を? |
雪乃 | はい♪お洋服を少々……。流行のお勉強になりますから。雑誌だけでは、質感などが、わかりませんものね。 |
雪乃 | すっかり暗くなるまで連れ回してしまいましたわね。 |
雪乃 | 撮影前、いつも通りで……と伺っていましたから、自由に過ごしてしまって。その……大丈夫でしたか? |
雪乃 | もっと、アイドルとしてですとか……撮れ高?というものがあった方が、よろしかったのでは……。 |
| 今日は、相原さんのオフの過ごし方に密着したかったので撮れ高バッチリです。 |
雪乃 | まぁ……♪それなら安心いたしました。 |
| Q.昼食はファミレス、アフタヌーンティーはホテルという過ごし方が意外でした |
雪乃 | ふふっ、そうですか?ファミリーレストランは家族とも行ったことがなくて、ずっと気になっていましたの。 |
雪乃 | 今は、お友達も増えましたし、みなさんがどちらでどのように過ごしているのか……少しでも同じ経験をしたいのです。 |
雪乃 | ですが、アフタヌーンティーも外せないでしょう?あちらのホテルは、私のイチオシですのよ♪ |
雪乃 | ご同行いただいたみなさまにも味わっていただきたくて、お連れしてしまいました♪ |
| たいへん美味でした。 |
| Q.最後に…相原さんのアイドルとしてのビジョンを聞かせてください |
雪乃 | そうですわね……私はこれまで、自分が世間知らずであることに、あまり頓着していませんでした。 |
雪乃 | 日々が流れていくままに、身を委ねていたのです。不満はありませんでしたわ。ですが…… |
雪乃 | アイドルの世界は、そんな私の価値観を一変させました。いろいろな経験を経て、楽しいと感じるようになりました。 |
雪乃 | 何よりも、無知だった私が、知りたいと思うことが増えたのです。 |
雪乃 | 険しい道でも構いません。これまで充分に、穏やかな道を歩んできましたから。 |
雪乃 | 焦ることは不得手ですので、ゆっくりではありますが……自分の足で、しっかりと歩んで参りたいと思います。 |
| こうして、密着ロケは無事終了したのだった。 |
| ところが── |
ディレクター | 相原さん、ばあやさん。本日は長時間の密着ロケ、お疲れさまでした。ありがとうございました! |
雪乃 | こちらこそ、ありがとうございました♪時に……みなさま、本日はもうお仕事はよろしいのですよね? |
ディレクター | ?はい、我々もバラシですね。 |
雪乃 | でしたら、是非我が家で夕食を召し上がってください。シェフが腕によりをかけて、用意してまっていますわ。 |
ディレクター | えっ!?いいんですか? |
雪乃 | もちろんですわ♪ばあやの提案ですのよ。一日中、重たい機材などを持って、お疲れでしょうって。 |
雪乃 | たくさん召し上がっていってくださいね。私の日常にお付き合いいただいた、ほんのお礼です。 |
雪乃 | どうぞ、ご遠慮なく♪ |
| ──アイドル、相原雪乃。 |
| そのもてなしの心は、あたたかく、一朝一夕で身につくものではない。 |
| 彼女がアイドルになったのは── |
雪乃 | 必然だったのかもしれませんわね♪ |
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