とある日 | |
涼 | 『涼さんの歌でアツい気持ちになれました。これからもずっと歌い続けてください』か……。 |
涼 | みんな、嬉しいこと書いてくれるよな♪ |
千枝 美由紀 小梅 | お疲れさまでーすっ♪ お疲れさまですっ! お疲れさま……♪ |
涼 | ああ、千枝に美由紀に小梅か。これまた、珍しい組み合わせだな。 |
美由紀 | さっきね、みんなとそこで会ったんだー! |
千枝 | 千枝はレッスンが終わったところで、美由紀ちゃんはお仕事の資料を取りにきてたんですよね。 |
小梅 | えっとね、私は……涼さんに、前に撮った写真……渡そうって思って……。涼さんは……? |
涼 | あ、ああ、あの写真な!アタシは、プロデューサーサンからさっきもらってきたファンレターを読んでたんだ。 |
美由紀 | すごーい!お手紙、いっぱいあるね!どんなことが書いてあるの? |
涼 | そうだな……お、これとか、テーマパークでの仕事の感想と、最近のハロウィンLIVEのことも書いてあるな。 |
涼 | 『テーマパークの時、千枝ちゃんや美由紀ちゃんとステージに立つ時の涼さんは、お姉ちゃんみたいでした。』 |
涼 | 『小梅ちゃんたちとのハロウィンLIVEも、とってもかっこよかったです。』 |
涼 | 『私はひとりっ子なのですが、涼さんみたいなカッコイイお姉ちゃんが欲しいなって思いました。』 |
美由紀 | その気持ち、みゆきもわかるなー♪ |
千枝 | 千枝もです。お仕事前で緊張もしてたけど、涼さんやうさぎさんたちと写真を撮ってリラックスできました……♪ |
美由紀 | 3人であれ、やったもんね! |
涼 | ははっ、うさちゃんピース!ってヤツな♪ |
千枝 | はい♪洋子さんと二人で、千枝たちの素敵なお姉さんでした! |
美由紀 | 小梅ちゃんは?ハロウィンのLIVEで一緒だったんだよね? |
小梅 | うん……涼さんが、たくさん褒めてくれたから……自信を持って、お仕事、できたよ……♪ |
千枝 | あ、涼さん、何か落ちましたよ。これは……メモですか? |
涼 | ああ、これな。ファンレターの中にあった質問をまとめたメモだよ。SNSとかで、少しずつ答えていこうと思ってさ。 |
美由紀 | みゆきたちが見ても大丈夫なの? |
涼 | 問題ないよ。箇条書きでまとめてあるだけだし、誰かのプライベートに触れるもんでもないからさ。 |
美由紀 | 最初の質問は、『涼さんはゾクゾクする感覚が好きで、ホラー映画鑑賞を趣味にしているそうですね。』 |
美由紀 | 『ホラーが好きということは、実際の心霊スポットにも行ったりするんでしょうか』だってー! |
小梅 | 心霊スポット……お墓には、前……一緒に、行ったね……。 |
涼 | あ、ああ……行ったな。 |
千枝 | 涼さん、目をそらしてる……?まさか、そこでとっても怖いことがあったんじゃ……! |
涼 | あー、違う違う。安心しな。怖いことは何にもなかったよ。 |
涼 | ただ……アタシがカッコ悪かったっていうだけだ。 |
小梅 | カッコ悪いなんて……そんなこと、なかったよ……? |
美由紀 | みゆきも、カッコ悪い涼さんは想像できないなー。 |
涼 | その、なんだ。隠してるわけじゃないんだけど…… |
涼 | アタシ、ホラー映画は好きでも、ガチの心霊現象はあんまり得意じゃないんだよ。 |
涼 | で、あの時は肝試しにって小梅と一緒にお墓に行ったんだ。 |
涼 | (本当は、遠い場所だし、夜だしで、アタシが心配してついていっただけなんだけどな) |
――肝試しの帰り道 | |
小梅 | 涼さん、大丈夫……?ひとりで、歩けそう……? |
涼 | あ、ああ、悪いな。まさか音葉サンも肝試しに来てるとは思わなくて驚いてさ……。 |
小梅 | うん……ハロウィンパーティーの前に、雰囲気を知ろうとしてって、言ってたね……。けど……。 |
涼 | けど? |
小梅 | あそこにいたのは……本当に……音葉さん、だったのかな……? |
涼 | …………え? |
小梅 | あの子が、言ってた……。あのお墓にいるのは、悪い子なんだって……。 |
小梅 | 生きてる人間が、羨ましくて、羨ましくて……土の中から、這い出して……入れ替わりたがってるの……。 |
小梅 | 一度でも、いいなって、思われたら……どこまでも、追いかけてくるよ……。 |
涼 | な、なんだよ、小梅……まだ肝試しの続きか? |
小梅 | 涼さんには……聞こえないの……?追いかけてくる、足音……。 |
ザッザッザッ | |
涼 | お、おい、マジかよ……。 |
小梅 | 追いつかれて……名前を呼ばれたら、入れ替わっちゃう……。 |
小梅 | 音葉さんは、耳がいいから……聞いちゃったのかも……。 |
??? | ……さん……待って…… |
小梅 | ……涼さん?…………どうしたの? |
涼 | どうって……聞こえないのか!?これ、今度はアタシたちが呼ばれてるんじゃないのか!? |
??? | 待ってください……涼さん……。 |
ぽんっ | |
涼 | うわああああああああああっ! |
音葉 | ……すみません。肩を叩いただけのつもりだったんですが……また驚かせてしまいましたね……。 |
音葉 | 二人が帰った後、落とし物を見つけまして……こちらのピアスは涼さんのものかと思ったのですが……。 |
音葉 | あの……涼さん? |
涼 | あ、あはは…………また、腰が……抜けて……。 |
涼 | で、結局帰り道も小梅に肩を借りたんだよな。アタシはずっと叫んでただけだったけど。 |
涼 | ずっと小梅が楽しそうだったのが救いだな。 |
小梅 | でも、涼さん……一緒に来てくれた……。レッスンがあるって、一回断ったのに…… |
小梅 | もしかして……心配、してくれたのかなって……。その気持ちが、嬉しかった……。 |
涼 | (アタシは、小梅と同じ趣味の友だちだと思ってる。でもそれと同時に、ほっとけないところがあったんだ) |
涼 | (何かがあれば、自分の殻に閉じこもるんじゃないかって、お嬢様扱いしてたのかもな) |
涼 | でも、何の心配もいらなかったな。小梅は度胸もあるし、一人前だったよ! |
小梅 | えへへ……♪ |
涼 | テーマパークの時に頼ってくれた二人には、情けない姿を知られるのもなって思ったけどさ。 |
千枝 | そんな……むしろ、新しい涼さんを知ることができました。 |
美由紀 | ねーっ、涼さんにも怖いものがあるんだーって、ちょっと近くなれた気持ちだよ! |
涼 | ははっ、サンキューな。 |
涼 | (ま、ビビると変な声が出ることもあるし……それを知られたくなかったってのもあるんだけど) |
涼 | とにかく、しばらく肝試しはいいかなって思ってるよ。 |
小梅 | じゃあ、肝試し離れしちゃう涼さんに……はい、肝試しの後……みんなで撮った写真だよ……。 |
千枝 | あ、あの……この写真、もしかして幽霊さんとか写ってたり……? |
涼 | 大丈夫じゃないか?ほら、何も変なところなんてないし。 |
美由紀 | あっ!でもここ!脚のとこ!白いもやもやが映ってるよ!? |
涼 | えっ?どこだ? |
千枝 | あ……ここの、涼さんの、左脚のところに……。 |
ぴとっ | |
涼 | きゃあああああああああっ!? |
小梅 | えっと……涼さんに、触っちゃった、みたい……? |
涼 | い、今のは、小梅の手……で、いいんだよな? 体温低すぎじゃないか……? |
涼 | (はは……結局、変な声も出ちゃったし……やっぱ、現実のホラーは勘弁だわ) |
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