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*セリフ
||CENTER:LIVE会場|
|CENTER:観客|ワァァァァァ……！涼ー！！もっと歌ってー！！！|
|CENTER:涼|(ははっ、盛り上がってくれてるね。……でも、まだだ。まだいるよ。冷めてるヤツに、独りつまらなさそうなヤツ)|
|CENTER:涼|(まるで、昔の『私』みたいなヤツがさ)|
||自分がお嬢様だと気づいたのは、いつからだっただろう。|
||着るべきものは既に用意されていた。ひらひらのスカートに清楚なブラウス。|
||通うべき学校ももう決められていた。松永家の淑女は、代々あそこの私立に通ってるって話だった。|
||まるで、レールが敷かれているみたいだろ？|
||だからかな。アタシはずっと、わからなかったよ。自分が何を望んでいるのかね。|
||欲のない性格？ははっ、違うね。これでも、ステージでは好き勝手やってるんだ。|
||あの時のアタシは、ただ諦めてたんだろうな。あそこじゃ、望んだものは手に入らないって。|
|CENTER:同級生A|明日からの連休、私の家はおばあ様の別荘へ行こうって話になってるの。|
|CENTER:同級生B|まあ、素敵ね。私の方はいつも通り。家族でヨーロッパに行くくらいかしら？松永さんのところは？|
|CENTER:涼|私は、別に……。することも、したいこともないし……。|
|CENTER:同級生B|そう？でも、音楽の授業の時、松永さんはとても楽しそうに歌っていたと思うわ。|
|CENTER:同級生A|ええ。歌声も伸びやかで……ミサの時もつい聞き惚れたわ。きっと、歌が好きなのねって、私も思ったもの。|
|CENTER:涼|……そうだね。歌は好きだよ。昔から、ずっと。でも、一日中歌って過ごすなんてできないし……。|
||学校では、お淑やかなおしゃべりと静かな授業が続いていく。|
||毎日が同じことの繰り返しで、息が詰まる。でも、当時のアタシは、息苦しいのが当然だと思ってたんだ。|
|CENTER:同級生A|そういえば、この近くに喫茶店ができたって聞いたわよ。|
|CENTER:同級生B|あら、どんなお店なのかしら？|
|CENTER:同級生A|それが、路地裏にあってよくわからないそうなの。ほら、あの薄暗い細道のところの。|
||次の日からは、予定もない連休。家族も多忙で家には誰もいない。いつもは、クラシックを聴いて過ごすだけ。|
||あの時、噂の喫茶店に向かったのは、気まぐれか、度胸試しか……。|
||もしくは、限界を感じた本能が、逃げ出そうとしていたのかもしれないね。|
||何からかって？息苦しい日々――教養のために音楽を聴いてるような日々からさ。|
|マスター|コーヒーをおひとつですね。かしこまりました。|
||しばらくして目の前に置かれたのは、背伸びして頼んだ苦いコーヒー。|
||マスターが口を開くまで、アタシはずっと、コーヒーに映る自分とにらめっこしてたよ。|
|CENTER:マスター|珍しいですね。貴方のような年頃の方が、ジャズ喫茶にやってくるなんて。|
|CENTER:マスター|よほど音楽がお好きなのでしょう。リクエストはありますか？|
|CENTER:涼|リクエスト……？|
|CENTER:マスター|ジャズ喫茶ですからね。お客様からよく、「この曲をお願い」と言われることが多くて。好きな曲はありますか？|
|CENTER:涼|好きなのは……モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス。あとは、バッハのブランデンブルク協奏曲第5番。|
|CENTER:涼|……どっちも、ジャズじゃないけど。|
|CENTER:マスター|ええ。ですが、いい選曲です。なぜお好きなんですか？|
|CENTER:涼|……モーツァルトの方は、素朴な音運びの中でも、和音を入れた転調で一貫性を出してる。|
|CENTER:涼|バッハは、史上初のチェンバロ協奏曲とも言われて、フルートが大きな役割を果たしてるところが画期的。|
|CENTER:涼|どっちも、後世の音楽に大きな影響を与えたと思う。……この言葉で、正解ですか？|
|CENTER:マスター|もともと、音楽にも、好きな理由にも、正解はありませんよ。|
|CENTER:マスター|大人でも、何のどこが好きなのか、語ることは難しいですからね。|
|CENTER:マスター|胸が熱くなったから、思い出の曲だから、それだけでも十分、好きな理由になるという方もいます。|
||マスターの言葉を聞いて、心底思ったよ。悔しい、恥ずかしいってね。|
||音楽が好きと言っておきながら、当時の『私』が答えたのは、教養としての音楽だった。|
||音楽の授業やミサで、歌って胸がアツくなる感覚を、知っていたはずなのにね。|
||もっと色んな音楽を知りたいと言ったら、マスターは『私』が来る度、店にあるレコードを片っ端からかけてくれたよ。|
|CENTER:涼|世界には、たくさんの音楽があるんですね。|
|CENTER:マスター|ええ、ここにあるのはジャズが多いですけどね。踊りたくなるようなEDMや、悲しみを表現するブルース。他にも――|
|CENTER:涼|胸にある強い意志を、歌にのせるロック、とか……。|
|CENTER:涼|気になって、自分で調べてみて思ったんだ。『私』にも、胸にある想いを、叫びたくなることがあるのかなって。|
|CENTER:マスター|気になるなら、直に触れてみるのもいいですよ。レコードだけでなく、実際のパフォーマンスに。|
|CENTER:マスター|近くのライブハウスでは、様々なバンドが曲を披露していますし。|
||そうして足を運んだライブハウスでは、殴られたような気持ちになった。|
||聴き終わっても、放心して、その場を動けなくなるくらい……新しい歌との出会いに、夢中になったんだ。|
|CENTER:女性|もうLIVEは終わったよ。ぼーっとしてないでさっさと……って、アンタ、アレじゃん！珍しいJK！|
|CENTER:涼|え……？|
|CENTER:女性|最初はさ、ひやかしかなって思ったんだ。よくいるんだよね。最後までつまんない顔してる、冷めたヤツがさ。|
|CENTER:女性|でもアンタは、いざLIVEが始まると、目を輝かせてた。|
|CENTER:女性|こんな小さなハコで、アタシらみたいなマイナーバンドの曲をキラキラした目で見るんだ。珍しくて覚えてたんだよ。|
|CENTER:女性|ああ、コイツは熱いヤツなんだってね。胸の奥に叫びたいことがあるって顔してた。|
|CENTER:涼|私は、別に……。|
|CENTER:女性|いいじゃん、言ってみなよ。その服……近所のお嬢様学校の制服だね。でも、ここでは上品な振る舞いはいらない。|
|CENTER:女性|アンタの想いを聞きたいっていうアタシしかいないんだ。遠慮しないでよ。|
|CENTER:涼|私……アタシ、は……音楽と生きたい。教養としての音楽じゃない。自由でアツい音楽と！|
||それから、彼女はアタシを自分のバンドに誘ってくれた。彼女がギターとボーカルを兼任してるけど……|
||歌はイマイチらしい。上手かったらボーカルにしてやるよと言ってくれた。|
|CENTER:父|涼は見たことのない世界を珍しがってるだけだろう。|
|CENTER:父|何ひとつ不自由しない暮らしが、どれだけ恵まれてることか分かっていないのか？|
|CENTER:母|涼ちゃんくらいの年頃の子は、誰でも毎日が息苦しく感じることがあるのよ。|
|CENTER:母|厳しいことを言うけれど……退屈から逃げるだけという理由なら、音楽は趣味でおやりなさい。|
|CENTER:涼|……最初は、逃げてただけかもしれない。でも、今はアタシの意志ではっきり言える。|
|CENTER:涼|二人が聞かせてくれた、バッハやモーツァルトも好きだよ。でも、音楽は星の数だけあるんだ。|
|CENTER:涼|クラシックだけが音楽じゃない。それしか知らない『私』には、もう戻りたくない。|
|CENTER:涼|タシが聴く音楽は、アタシが選ぶよ！アタシは自分の人生を、自分で決めたいんだ！|
||生意気、頑固……親には散々言われたよ。でも、自分を貫かないヤツの叫びなんて、誰にも届かないだろ？|
||家を出た夜、道で初めてロックを歌ってみたんだ。月を見上げてさ。|
||アタシは、ずっと歌いたかったんだと思ったよ。自分のアツい想いを、メロディに乗せてね。|
||あとは、プロデューサーサンも知っての通り。売れないマイナーバンドをやってた。|
||プロデューサーサンのことは、正直言って、おかしなヤツだって思ったな。|
||アタシらマイナーバンドの曲を聴いたって言って、キラキラした目で「アイドルになりませんか」ってさ……。|
||ま、アンタも実は、アタシと同じくらい、アツいヤツだったわけだけど。|
|CENTER:涼|スカウト？当然断ったよ。ガラじゃないし……アタシもアイドルをやりたいってわけじゃないしさ。|
|CENTER:メンバーA|そうじゃない……そうじゃないんだよ、涼。アタシらは、涼の本音を聞きたいんだ。|
|CENTER:メンバーB|だったら、ここは私らも本気で話そうか。このバンドは売れてないし、LIVEも盛り上がることがない。|
|CENTER:メンバーB|私たちは正直、この道を諦めるって選択もあると思ってるよ。|
|CENTER:メンバーC|でも、涼は？歌うことを、諦められるの……？|
|CENTER:涼|……諦めたく、ないよ。歌って歌って歌い続けて、アタシの全部を歌い切って、いつかステージの上で終わる。|
|CENTER:涼|アタシの人生は、そうでありたい。|
|CENTER:涼|タシの人生は、そうでありたい。|
|CENTER:メンバーC|……そうだよね。ねえ、涼が歌いたいのって、どんな歌？|
|CENTER:涼|決まってるよ！冷めてるヤツの気持ちを、全部吹き飛ばすような……|
|CENTER:涼|世界中のヤツら全員を、アツくさせる歌だ！|
|CENTER:メンバーA|うん、アンタならそう言うと思った。でもって……|
|CENTER:メンバーA|それはきっと、アイドルでもできることだよ。|
||――現在|
|CENTER:涼|(今のアタシには、歌える場所がある。聴いてくれる人もいる。……悪くないね、アイドルも！)|
|CENTER:涼|気持ちがノってないヤツ！冷めてるってヤツ！まだいるだろ！？|
|CENTER:涼|上等だ！全員、アツい気持ちにしてやるよ！|
|CENTER:涼|今日は失神して病院送りになるまで帰さないから！じゃ、いくよッ！！覚悟はいいッ！？|
*セリフ
||CENTER:LIVE会場|
|CENTER:観客|ワァァァァァ……！涼ー！！もっと歌ってー！！！|
|CENTER:涼|(ははっ、盛り上がってくれてるね。……でも、まだだ。まだいるよ。冷めてるヤツに、独りつまらなさそうなヤツ)|
|CENTER:涼|(まるで、昔の『私』みたいなヤツがさ)|
||自分がお嬢様だと気づいたのは、いつからだっただろう。|
||着るべきものは既に用意されていた。ひらひらのスカートに清楚なブラウス。|
||通うべき学校ももう決められていた。松永家の淑女は、代々あそこの私立に通ってるって話だった。|
||まるで、レールが敷かれているみたいだろ？|
||だからかな。アタシはずっと、わからなかったよ。自分が何を望んでいるのかね。|
||欲のない性格？ははっ、違うね。これでも、ステージでは好き勝手やってるんだ。|
||あの時のアタシは、ただ諦めてたんだろうな。あそこじゃ、望んだものは手に入らないって。|
|CENTER:同級生A|明日からの連休、私の家はおばあ様の別荘へ行こうって話になってるの。|
|CENTER:同級生B|まあ、素敵ね。私の方はいつも通り。家族でヨーロッパに行くくらいかしら？松永さんのところは？|
|CENTER:涼|私は、別に……。することも、したいこともないし……。|
|CENTER:同級生B|そう？でも、音楽の授業の時、松永さんはとても楽しそうに歌っていたと思うわ。|
|CENTER:同級生A|ええ。歌声も伸びやかで……ミサの時もつい聞き惚れたわ。きっと、歌が好きなのねって、私も思ったもの。|
|CENTER:涼|……そうだね。歌は好きだよ。昔から、ずっと。でも、一日中歌って過ごすなんてできないし……。|
||学校では、お淑やかなおしゃべりと静かな授業が続いていく。|
||毎日が同じことの繰り返しで、息が詰まる。でも、当時のアタシは、息苦しいのが当然だと思ってたんだ。|
|CENTER:同級生A|そういえば、この近くに喫茶店ができたって聞いたわよ。|
|CENTER:同級生B|あら、どんなお店なのかしら？|
|CENTER:同級生A|それが、路地裏にあってよくわからないそうなの。ほら、あの薄暗い細道のところの。|
||次の日からは、予定もない連休。家族も多忙で家には誰もいない。いつもは、クラシックを聴いて過ごすだけ。|
||あの時、噂の喫茶店に向かったのは、気まぐれか、度胸試しか……。|
||もしくは、限界を感じた本能が、逃げ出そうとしていたのかもしれないね。|
||何からかって？息苦しい日々――教養のために音楽を聴いてるような日々からさ。|
|マスター|コーヒーをおひとつですね。かしこまりました。|
||しばらくして目の前に置かれたのは、背伸びして頼んだ苦いコーヒー。|
||マスターが口を開くまで、アタシはずっと、コーヒーに映る自分とにらめっこしてたよ。|
|CENTER:マスター|珍しいですね。貴方のような年頃の方が、ジャズ喫茶にやってくるなんて。|
|CENTER:マスター|よほど音楽がお好きなのでしょう。リクエストはありますか？|
|CENTER:涼|リクエスト……？|
|CENTER:マスター|ジャズ喫茶ですからね。お客様からよく、「この曲をお願い」と言われることが多くて。好きな曲はありますか？|
|CENTER:涼|好きなのは……モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス。あとは、バッハのブランデンブルク協奏曲第5番。|
|CENTER:涼|……どっちも、ジャズじゃないけど。|
|CENTER:マスター|ええ。ですが、いい選曲です。なぜお好きなんですか？|
|CENTER:涼|……モーツァルトの方は、素朴な音運びの中でも、和音を入れた転調で一貫性を出してる。|
|CENTER:涼|バッハは、史上初のチェンバロ協奏曲とも言われて、フルートが大きな役割を果たしてるところが画期的。|
|CENTER:涼|どっちも、後世の音楽に大きな影響を与えたと思う。……この言葉で、正解ですか？|
|CENTER:マスター|もともと、音楽にも、好きな理由にも、正解はありませんよ。|
|CENTER:マスター|大人でも、何のどこが好きなのか、語ることは難しいですからね。|
|CENTER:マスター|胸が熱くなったから、思い出の曲だから、それだけでも十分、好きな理由になるという方もいます。|
||マスターの言葉を聞いて、心底思ったよ。悔しい、恥ずかしいってね。|
||音楽が好きと言っておきながら、当時の『私』が答えたのは、教養としての音楽だった。|
||音楽の授業やミサで、歌って胸がアツくなる感覚を、知っていたはずなのにね。|
||もっと色んな音楽を知りたいと言ったら、マスターは『私』が来る度、店にあるレコードを片っ端からかけてくれたよ。|
|CENTER:涼|世界には、たくさんの音楽があるんですね。|
|CENTER:マスター|ええ、ここにあるのはジャズが多いですけどね。踊りたくなるようなEDMや、悲しみを表現するブルース。他にも――|
|CENTER:涼|胸にある強い意志を、歌にのせるロック、とか……。|
|CENTER:涼|気になって、自分で調べてみて思ったんだ。『私』にも、胸にある想いを、叫びたくなることがあるのかなって。|
|CENTER:マスター|気になるなら、直に触れてみるのもいいですよ。レコードだけでなく、実際のパフォーマンスに。|
|CENTER:マスター|近くのライブハウスでは、様々なバンドが曲を披露していますし。|
||そうして足を運んだライブハウスでは、殴られたような気持ちになった。|
||聴き終わっても、放心して、その場を動けなくなるくらい……新しい歌との出会いに、夢中になったんだ。|
|CENTER:女性|もうLIVEは終わったよ。ぼーっとしてないでさっさと……って、アンタ、アレじゃん！珍しいJK！|
|CENTER:涼|え……？|
|CENTER:女性|最初はさ、ひやかしかなって思ったんだ。よくいるんだよね。最後までつまんない顔してる、冷めたヤツがさ。|
|CENTER:女性|でもアンタは、いざLIVEが始まると、目を輝かせてた。|
|CENTER:女性|こんな小さなハコで、アタシらみたいなマイナーバンドの曲をキラキラした目で見るんだ。珍しくて覚えてたんだよ。|
|CENTER:女性|ああ、コイツは熱いヤツなんだってね。胸の奥に叫びたいことがあるって顔してた。|
|CENTER:涼|私は、別に……。|
|CENTER:女性|いいじゃん、言ってみなよ。その服……近所のお嬢様学校の制服だね。でも、ここでは上品な振る舞いはいらない。|
|CENTER:女性|アンタの想いを聞きたいっていうアタシしかいないんだ。遠慮しないでよ。|
|CENTER:涼|私……アタシ、は……音楽と生きたい。教養としての音楽じゃない。自由でアツい音楽と！|
||それから、彼女はアタシを自分のバンドに誘ってくれた。彼女がギターとボーカルを兼任してるけど……|
||歌はイマイチらしい。上手かったらボーカルにしてやるよと言ってくれた。|
|CENTER:父|涼は見たことのない世界を珍しがってるだけだろう。|
|CENTER:父|何ひとつ不自由しない暮らしが、どれだけ恵まれてることか分かっていないのか？|
|CENTER:母|涼ちゃんくらいの年頃の子は、誰でも毎日が息苦しく感じることがあるのよ。|
|CENTER:母|厳しいことを言うけれど……退屈から逃げるだけという理由なら、音楽は趣味でおやりなさい。|
|CENTER:涼|……最初は、逃げてただけかもしれない。でも、今はアタシの意志ではっきり言える。|
|CENTER:涼|二人が聞かせてくれた、バッハやモーツァルトも好きだよ。でも、音楽は星の数だけあるんだ。|
|CENTER:涼|クラシックだけが音楽じゃない。それしか知らない『私』には、もう戻りたくない。|
|CENTER:涼|タシが聴く音楽は、アタシが選ぶよ！アタシは自分の人生を、自分で決めたいんだ！|
||生意気、頑固……親には散々言われたよ。でも、自分を貫かないヤツの叫びなんて、誰にも届かないだろ？|
||家を出た夜、道で初めてロックを歌ってみたんだ。月を見上げてさ。|
||アタシは、ずっと歌いたかったんだと思ったよ。自分のアツい想いを、メロディに乗せてね。|
||あとは、プロデューサーサンも知っての通り。売れないマイナーバンドをやってた。|
||プロデューサーサンのことは、正直言って、おかしなヤツだって思ったな。|
||アタシらマイナーバンドの曲を聴いたって言って、キラキラした目で「アイドルになりませんか」ってさ……。|
||ま、アンタも実は、アタシと同じくらい、アツいヤツだったわけだけど。|
|CENTER:涼|スカウト？当然断ったよ。ガラじゃないし……アタシもアイドルをやりたいってわけじゃないしさ。|
|CENTER:メンバーA|そうじゃない……そうじゃないんだよ、涼。アタシらは、涼の本音を聞きたいんだ。|
|CENTER:メンバーB|だったら、ここは私らも本気で話そうか。このバンドは売れてないし、LIVEも盛り上がることがない。|
|CENTER:メンバーB|私たちは正直、この道を諦めるって選択もあると思ってるよ。|
|CENTER:メンバーC|でも、涼は？歌うことを、諦められるの……？|
|CENTER:涼|……諦めたく、ないよ。歌って歌って歌い続けて、アタシの全部を歌い切って、いつかステージの上で終わる。|
|CENTER:涼|アタシの人生は、そうでありたい。|
|CENTER:涼|タシの人生は、そうでありたい。|
|CENTER:メンバーC|……そうだよね。ねえ、涼が歌いたいのって、どんな歌？|
|CENTER:涼|決まってるよ！冷めてるヤツの気持ちを、全部吹き飛ばすような……|
|CENTER:涼|世界中のヤツら全員を、アツくさせる歌だ！|
|CENTER:メンバーA|うん、アンタならそう言うと思った。でもって……|
|CENTER:メンバーA|それはきっと、アイドルでもできることだよ。|
||――現在|
|CENTER:涼|(今のアタシには、歌える場所がある。聴いてくれる人もいる。……悪くないね、アイドルも！)|
|CENTER:涼|気持ちがノってないヤツ！冷めてるってヤツ！まだいるだろ！？|
|CENTER:涼|上等だ！全員、アツい気持ちにしてやるよ！|
|CENTER:涼|今日は失神して病院送りになるまで帰さないから！じゃ、いくよッ！！覚悟はいいッ！？|