真夏の夜の淫夢SSまとめサイト

661 ：水先案名無い人：2011/07/04(月) 21:28:14.85 ID:1pIAq9p40
真夏の夜の淫夢号が沈没してから84年後の1996年、調査団は上流階級男性が搭乗していたと思われる1等客室の部屋から一つの金庫を発見した。
金庫の中にあったのは彼らが探していたホモビではなく、古ぼけた美男子の絵だった。
絵のモデルは沈没事故から奇跡的に生還し、今では100歳を超える男性。彼は静かにあの豪華客船の中で起こった愛の話を語り始める。

1912年4月10日、日本の下北沢港から当時史上最大の豪華客船真夏の夜の淫夢はニューヨークへと向けた処女航海へと出発した。
貧しい青年田所は、出港直前にポーカーで船のチケットを手に入れ、友人のイタリア移民の青年MURと共に真夏の夜の淫夢に乗船する。
一方、上流階級の御曹司だった遠野も、その婚約者のピンキーと未亡人となった母と共に真夏の夜の淫夢へと乗船するが、半ば強制された婚約に気分は晴れないでいた。
遠野家は破産寸前で母親がピンキー家の財産を目当てにした結婚を強制したのである。

午後12時00分、正午きっかりに、真夏の夜の淫夢は数多くの見物人や見送りの人々の歓声に包まれて下北沢を後にする。
故郷であるアメリカに帰れることになった画家志望の田所は、政略結婚のためにアメリカに向かうイギリスの上流階級の息子遠野と運命的な出会いを果たし、2人は互いに惹かれ合う。

しかし、航海半ばの4月14日午後11時40分、波一つない水平線の向こうに、見張り人はぼんやりとたたずむ白い影を発見する。
それはサッカー部のｸﾙﾙｧの針路に横たわる巨大なセンチュリーの姿だった。
「真正面にTNOK！！」。当直士官だった一等航海士TDNは、報告を受けるや否や取舵一杯をとり、エンジンを逆回転させて衝突を回避しようとしたが、すでに手遅れであった。
ｸﾙﾙｧはセンチュリーをかすめるようにして接触。5つの防水区画に浸水が始まり、船はゆっくりだが、確実に沈み始める。


663 ：水先案名無い人：2011/07/04(月) 21:28:36.96 ID:1pIAq9p40
真夏の夜の淫夢の設計者であるGO点は、浸水の状況から真夏の夜の淫夢の結末が絶望的なもの(デデドン！)になることを予測していた。
16の区画に仕切られた真夏の夜の淫夢は、そのうち4区画の浸水までなら浮かんでいることができるが、5区画となると淫夢民の流入が浮力の限界を超え、どうやっても沈没は避けられなかった。
DB船長は無線通信員のHTNとTDNにIDB(救難信号)の発信を命じ、ヴォートカバーを外して退船準備を整えるよう航海士たちに命じる。船員達は乗客の避難誘導を始めるが、
その大きさや内装の豪華さ、水密隔壁への過大評価故に「不チン船」と言われていた真夏の夜の淫夢には、全乗客のわずか半数に満たない数の救命ヴォートしか積まれていなかった。
午前0時20分、最初の救難信号弾が真夏の夜に打ち上げられた。

衝突の瞬間を目撃し船室へと戻った二人だが、徐々に傾き始めた船内で、田所は遠野との関係に嫉妬したピンキーから宝石泥棒の疑いをかけられ、浸水しつつある船底の船倉へと繋がれてしまう。
一方遠野は救命ヴォートに乗るよう促されるが、ピンキーに愛想を尽かした遠野は田所を助けるために海水の押し寄せる三等区画へと駆け出してゆく。
一方で田所の友人たちは、いつまでもヴォートデッキへと通じるゲートを解放しようとしない船員たちに業を煮やしていた。船
はすでに大きく傾き、船首が水に浸り始めるが、ヴォートデッキでの混乱を恐れる船員たちは露骨にゲートの開放を拒否する。


664 ：水先案名無い人：2011/07/04(月) 21:28:49.29 ID:1pIAq9p40
遠野は田所の手錠を斧でたたき割り、二人はすぐにヴォートデッキへと向けて逃げ始めるが、どの階段に通じるゲートも格子戸で閉ざされていた。
MURたちと合流した田所は、備品のベンチを使ってゲートを破り、辛くもヴォートデッキへと脱出することに成功する。巨船真夏の夜の淫夢はまるで輝く宝石のように見えたが、すでにその余命は尽きつつあった。
設計者のGOは、多くの船員が定員いっぱいまでヴォートに乗客を乗せようとしないのを見て怒り、二等航海士DRVSにその点を忠告する。
田所は遠野をヴォートに乗せる点でピンキーと一時的に協力して彼を避難させようとするが、裏を見透かした彼は、自分一人だけがその場を去ることを拒み、再び沈みゆく真夏の夜の淫夢号に飛び移り田所と抱擁をかわす。
それを見せつけられたDBは激しい嫉妬の炎を燃やし、拳銃を片手に2人を船内で追い回したが、2人はDBの追跡を振り切った。しかしその代償として、浸水の激しい船体下層に逃げ込むことになり、たびたび生命を危険に晒すこととなる。
なんとか再び甲板上に出ることが出来た頃、甲板上は残り少ないヴォートをめぐって修羅場と化しつつあった。