イマジネーション

無害な粉末で死亡する若い女性の旅路


出血死すると信じ込まされた死刑囚ネタを取り上げた1886年のLancetの記事には「無害な粉末で死亡する若い女性」というネタも書かれている。


This is, perhaps, hardly the correct form of question that the British and Colonial Druggist puts to itself in discussing the death of the young woman at Hackney under circumstances in which Keating's insect powder largely figured. As the powder appears by Dr. Tidy's experiments to be perfectly harmless, the suggestion is not unnaturally made that the deceased, who was possibly of a hysterical, highly imaginative turn of mind, took the powder in the full belief that by its means her death might be accomplished.

Keatingの殺虫粉末のおおよそ引き起こす状況のもとで、Hackneyの若い女性の死について、英国と植民地の薬剤師が論じることは、おそらく正しい問いかけではないだろう。Dr. Tidyの実験により粉末はまったく無害であることがわかっているので、故人は、ヒステリックで、非常に想像力に富んだ心を持っていて、それで彼女の死を完遂できると完全に信じて、粉末を使ったと、考えるのは不自然なことではない。

[ The Lancet Vol 127 No 3277 Jun 19, 1886, p.1175 "CAN IMAGINATION KILL?" ]

これを引用する形でFlammarion(1990)も、このネタを取り上げている。
Again, an English journal, the Lancet, has more recently published the case of a young woman, who, wishing to put an end to her existence, swallowed a certain quantity of insect powder, after which she lay down on her bed, where she was found dead. There was an inquest and an autopsy. An analysis of the powder found in the stomach showed that it was absolutely harmless in the case of human beings. Nevertheless, the young woman was stone dead.'

英国の雑誌Lancetに、最近、自殺しようとして、特定量の殺虫剤粉末を飲み、倒れて、死亡しているのが発見された若い女性の事例が掲載された。検死と死体解剖が行われ、腹から人間には、まったく無害な粉末が見つかった。しかし、その若い女性は死亡していた。

[ CAMILLE FLAMMARION: "THE UNKNOWN", NEW YORK AND LONDON, HARPER & BROTHERS PUBLISHERS, 1900, p.338 ]


これと非常によく似た事件が1904年に米国で報道されている。


シンシナティに住んでいる若い学校教師Miss Belle Herrittが最近、病気で教職を失った。彼女は落胆し、生きることに疲れたと言っていた。

数日前、彼女は兄と歩いているとき、突然、ポケットから小瓶を取り出して、中味を飲んだ。彼女は、フェノール[殺虫剤]を飲んだが、気が変わって、生きたいと思うので、医者につれていってほしいと懇願した。医師がただちに呼ばれたが、治療の甲斐なく、彼女は倒れて死亡した。検死官はフェノールの小瓶はコルクで栓がされていて、触った形跡がなく、体にも毒物の痕跡がないことを発見した。

検死官は、少女がどうやら2本の小瓶を持っていて、ひとつのは害のない混合物が入っていて、少女はフェノールだと間違って飲んだと述べた。彼女は毒を飲んだと信じ、恐怖と想像の効果が合わさって死亡した。

[ KILLED BY IMAGINATION. Star , Issue 8170, 19 November 1904, Page 4 ]

1900年のFlammrionの記述をなぞるような事件記事である。Flammarionの"The Unknown"出版の4年後であり、途中からLancet/Flammarionネタをつないだと疑いたくなる。

そして、さらに20年以上あとに、少し変異した記事が登場している:


さらに、想像で死亡した例は、結婚前日に恋人に捨てられ、自殺を決意した若い女性についてである。彼女は6人の人間を殺せるだけのフェノール[殺虫剤]を買って、飲んで、懺悔の言葉を残して、数時間で死亡した。しかし、検死が行われて、腐食剤や毒物の痕跡がまったくないことがわかった。彼女はフェノールを飲んだと信じて、毒性のない液体を飲んでいたのだ。

[ St. Petersburg Times - Feb 21, 1926 ]
これは1904年の報道の変形のように見える。

なお、このネタもFlammarion:"The Unknown"を引用する形で、谷口雅春: "生命の實相 : 生長の家聖典"(1932)に載っている。





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