おーぷんモバマス隔離プラットホーム - デュラハンなボクとシャイな堕天使
…唐突な話だが、ボクにかけられた「呪い」は、何も便利なばかりのものではない。

あの時蘭子にかけられた「呪い」。
それによって中々面白い体質となった現状を満喫もしているし、
何より今ボクがこうして生きていられるのはそのお陰だ。
「呪い」なんて呼んではいるけれど、そういった意味ではかけてくれた蘭子への感謝の念は尽きない。

…けれど、感謝の念というモノは裏を返せばその対象への「弱み」に等しいわけで。

飛鳥「…蘭子。そろそろボクの身体を解放してもらえないかな?」
蘭子「…ならぬ。我が視線と貴方の視線の交わりは、この睦言の最中では刺激が強すぎる。
   まだ時の流れに身を委ねていなさい。」
飛鳥「…キミの視線と交わることがなくても、ボクの視線は嫌でもキミに注がれ続けているんだよ?
   むしろ一瞥も貰えずに見続けている事しか出来ないボクの方こそ、恥を耐え忍ぶ辛さに晒されているようなものなんだけれど。」
蘭子「うぅ…。…ごめんなさい…。でも、目が合うと恥ずかしいの…。」
飛鳥「……ふっ、ふふっ、キミの言葉は本当に卑怯だ。
   そうやって繊細に紡がれるキミの本音にはとても逆らえる気がしない。」

結局、まだしばらくはこの状態に甘んじるしかなさそうだ。
……一体どういう状態なのかと言えば、ボクはボクの「身体」が蘭子と交わっているところを、
「頭」だけでデスクの上から見つめている。



--
「あの事故」以来、ボクは特異な体質を手に入れた。
身も蓋もない直接的な表現をするならば、西洋の妖怪デュラハンよろしく、頭と身体を自在に分割できる体質になったのだ。
その原因は今ボクの眼前で甘い吐息を漏らし続けている、他でもない蘭子である。
…いや、「自在」という言葉を使っては語弊があるかもしれない。
それこそがこの現状を招いている最大の要点なのだから。

ボクが自らの意思で、己の手で頭を身体から離した場合、
ボクの意思たる頭部から物理的に切り離されてしまっているはずの身体も、ボクは自由に動かすことができる。
しかし、ボクの頭がボク以外の他者の手で身体と離されてしまった時、
ボクの身体はボクの意思からも切り離されて、ただの「モノ」に成り果ててしまうのだ。
動かすことができないばかりでなく、一切の感覚がボクの脳に流れ込んでくることがなくなる。
もちろん、生命活動や生理現象までもが止まることはない。そうなってしまっては困る。

…困るのだが、いっそそうなってくれた方がラクかもしれないと思わされたことが何度あったことか…。

この体質を知っているのはボク以外には、もう一人の当事者である蘭子のみだ。
つまりは必然的に、ボクの身体を勝手に弄ぶ事が出来るのは彼女一人ということになる。

蘭子「飛鳥ちゃん…っ、飛鳥ちゃん…っ!」
飛鳥「………。」ジーッ
蘭子「ふぅぅっ…!んんっ…!」フルフル
飛鳥「あっ…。」

快楽に脳天を貫かれ、無意識に頭を振りながら視線を彷徨わせた彼女と不意に視線が合った。

蘭子「…ぁっ。 ……ゃ、ぁ、やあぁぁぁっ!!」

――ただ、彼女は、俗な表現をするならば「恥ずかしがり屋」だった。


--
蘭子「ぁ、はうぅ………」
飛鳥「落ち着いたかい?蘭子。 …落ち着いたのなら、そろそろ元に戻してほしいのだけれど。」
蘭子「…すまない。貴方の視線に射抜かれて、魔力の流れが少々乱れてしまったわ。」
飛鳥「うん。キミがそういう性質だということはとっくの昔に理解している。
   あれは事故みたいなものだよ。決してボクに悪意があったわけじゃない。
   何も出来ない悔しさにキミに普段以上の熱視線を送り続けていたという訳では決してないのだからやめてそんなにきつく抱き締めないで」
蘭子「!あっ、ご、ごめんなさい!」
飛鳥「…ふぅ、ボクの身体はクッションではないんだからね?
   自分の身体がつぶれてしまうんじゃないかという程に締め上げられる様を、
   傍から見ている事しか出来ない気分なんて、さすがに理解ってもらえるとは思っていないけれど、
   …無い肝が冷える気分だったよ。」
蘭子「…貴方の感じている「世界」への配慮がまだまだ足らないということね…。
   …それにしても、綺麗…。ああ、貴方の鼓動を感じるわ…。」
飛鳥「…鼓動というか、快楽のあまりまだ震えているね…。いや、さすがにこれを見ているのは恥ずかしい…。
   後生だから寝かせておいてくれないか…。」
蘭子「そうね。…いえ。フフッ、蓄積された膨大な魔力の奔流に、貴方の「意思」はどこまで耐えられるのかしら?」
飛鳥「…! ま、待って蘭子! まだ早い! お願い、待って!」

懇願も空しく数分ぶりの再会を果たすボクの頭と身体。
切り離されていた身体の感覚が戻るということは、
さんざん蘭子と交わってボクの意思とは無関係に蓄積してくれた快楽をボクの脳に届けてくれるという訳で。

飛鳥「! ぃ、っ、んっ、ああ、ぁっ……!!!」
蘭子「ああ…、飛鳥ちゃん、すごい表情…。」
飛鳥「ぁっ、か、はぁ、っ、っ、っ、ああ…っ!!」
蘭子「こういうのも…いいかもぉっ…」
飛鳥「ひ、ぃ、−っ、ひゅっ、−っ、ひゅーっ、い、きが…っ!」
蘭子「放っておいてごめんね、「飛鳥ちゃん」…。ああ、なんていい声…。」
飛鳥「…っ、ぜっ、はっ、はっ、ら、らんこぉ…っ!」
蘭子「…んんーっ♡」ギューッ
飛鳥「ぅぁっ…! ぁぁっ、く、う、ぅぅ…ん、…。」ガクッ
蘭子「…飛鳥ちゃん? あ、気を…。
   …ああ、飛鳥ちゃん…っ! かわいい…っ!」ギューッ

……ボクは彼女に逆らえない。身体も、心も…。