昭和十五年七月、欧州の戦局が急転しドイツが今にも英本土上陸を開始するのではないかとの情勢に日本政府は世界情勢の推移に伴う時局処理要綱を決定しました。
陸軍はこの決定に基づいて南方作戦に関する研究を始めますが、対ソ或いは支那事変に没頭していたため南方作戦についての具体的な内容は主として情報収集、増微船舶に応じる艤装、兵装などに関する材料の整備、前方海運施設の増設などほとんどが基礎的なもので作戦計画については机上研究の域を出ない程度のものでした。
其の為南方作戦に関しては大部分は新しく準備する必要がありましたが、船舶の徴傭、艤装(船舶に兵員、馬などの居住施設を設置すること)兵装(船舶に高射砲を取り付けたり見張り所を設置すること)関係部隊の配置運用、各種部隊の編成、動員、軍需物資の調達等は長年に渡る支那事変や関特演による大規模な対ソ警戒戦備が南方作戦準備の役割を果たしたことになり、ゼロの状態から準備するよりかは恵まれた状態にあったようです。
しかしながら、なお準備するべき分野はまだ残っていました。
- 不足船舶の徴傭と船舶の艤装、兵装実施
- 主要海運地の諸施設の整備増強。
- 船舶関係部隊の事前配置と海運地業務の早期開始。
- 作戦発起時の展開飛行場の獲得、整備、拡張などの早期着手。
- 作戦地の地形特に上陸地付近一帯にわたる事前偵察と兵用地誌及び作戦用地図の整備と配布準備。
- 海象、気象の研究、特に上陸方面全般にわたる長期気象判断の実施とこれのための気象部隊の配置。
- 敵国軍に関する戦力判断資料の総合整理。
- 作戦計画の策定と陸海軍間における作戦協定の実施。
- 作戦地及び作戦要領に対する軍需品の事前集積。
- 上陸作戦部隊の上陸部署細部の検討と船舶の配当及び乗船区分の決定。
- タイ国進入作戦のための対泰措置要領及び日仏共同防衛に関する事前研究。