日本の歴史年表 - 米国国際政策の基本原則に関するハル国務長官声明
一九三七年七月十六日

(仮訳)
予は多くの方面より世界の種々の地域に於ける騒乱状態より起こる質問と示唆とを接受せり。
或る地方に於いて切迫と緊張の事態が存在し、夫等は一見単に近接諸国のみを渦中に巻込むが如くなるは疑いもなき所なるが、窮極に於いては全世界に取り避け得べからざる関心事なり。武力に依る敵対行為が進行し、若しくは其の脅威を伴うが如き情勢は一切の国民の権利及び利益に重大なる影響を与うるか又は其の脅威を感ぜしむる事態なり。世界の何れに於けるを問わず、重大なる敵対行為にして何等かの形に於いて此の国の利益、権利又は義務に影響せざるものはあり得ず。かかる故に予は此の国が深甚なる関心を有する国際問題及び情勢に対する我が政府の立場に関して声明を為すに付き正当なる理由を有するものなり、否実に其の義務ありと思料す。我国は絶えず且終始一貫して平和の維持を唱導す。吾人は国家的及び国際的自制を唱導す。吾人は一切の国家が政策遂行の為にする実力行使及び他国の国内事項に対する干渉を回避せんことを唱導す。吾人は国際関係に於ける諸問題の平和的討議及び合意の手続きに依る調整を唱導す。吾人は国際協定の忠実なる遵守を唱導す。吾人は条約神聖の原則を遵守すると共に、条約規定の変更はその必要起こりたる際には相互扶助及び和解の精神に基づきて為さるる秩序ある手続きに依りなし得べきを信ず。吾人は一切の国家に依る他国の権利の尊重及び既存義務の履行を信ず。吾人は国際法の復活及び強化を主張す。吾人は全世界に亙る経済的安全及び安定増進の為の諸方策を唱導す。吾人は国際貿易に於ける行過ぎたる障壁の軽減又は撤廃を唱導す。吾人は実質的なる商業上の機会の均等を要請すると共に、一切の国家に対し待遇平等の原則の適用を勧奨す。吾人は軍備の制限及び縮小を信ず。国家の安全に適当なる武力維持の必要を認め、吾人は他国の縮小又は拡張に応じて吾人自身の武力を縮小又は拡張するの用意あり。吾人は同盟に入ること又は紛争に介入せらるるが如き約定を避くるものなるも、吾人は敍上の諸原則擁護の為平和的且実際的手段に依る協調的努力を信ずるものなり。


参考文献