一進会は日本の傀儡

人数

会員100万人を自称した一進会だが、それは誇大である。

（写）
合邦反対の理由*1
大垣丈夫談

日韓合邦は目下の状勢に於て寧ろ我国の一大不利なりと断言するを憚らず。其理由は概ね左の五項を以て之を悉くすを得ん
三、合邦主唱者たる一進会が実数四千に満ざる会員を以て漫りに百万と称するは虚声も亦太甚し。一進会員果して百万なりとせんか老幼及婦女子を除くの外殆んど韓民の総てを挙て同会員たらざる可らざる筈なり。然るに事の実際に於て一部少数の同会員なれば左まで政治的及社会的勢力を有する者にあらず、反て同会は予て韓民多数の排斥を受け居るは事実なり。故に民心の安堵を図らんとせば窮余の一策に出でたる同会の合邦論に対し特にい深重の顧念を払ふの要あり、実状洵に然り区々たる一進会を非難するにあらざるなり。

日韓合邦声明を主謀した内田良平は1905年12月から韓国統監府嘱託、1906年10月から一進会顧問を務めていた*2が、その内田の1907年4月15日付報告書*3によると、「一進会支部長等」は「二十三郡十万余名の会員は今や減退して三万余名に過ぎず」と述べたという。また大韓協会の方が優勢だったという資料が複数ある*4 *5 *6 *7。
一進会の方が多いが「現状の維持困難」で大韓協会は一進会より少ないが「若干の進境」とする資料もある。*8

日露戦争時の対日協力者数

資料*9 *10には「每日応役一千一百五十人」などとあり10万超は延べ数である。
また1905年当時日本に亡命していた韓国人の言によれば「目下京城門門内に一進会員十五万人内外、各地方に断髪した会員が二十一万内外京釜鉄道工役に義務を以て助役する人六千人内外相成候」*11。

「百万」が慣例化？

1906年にも会員百万と名乗っており、その自称会員数が慣例化していた可能性がある。
「外交時報　第109号」1906年12月10日発行

一進会会長李容九　外会員一百万人

主張・活動

第二次日韓協約への賛同

1905年（明治38年）10月、日本政府は韓国保護権の確立の方針を閣議決定し、翌11月には伊藤博文を特使として派遣し、11月28日に第二次日韓協約の締結が強行された。これに先立ち、一進会は同年11月5日に会の顧問であった佐瀬熊鉄の起草*12で保護国化に賛同する声明を発表した*13が、それにより「世上の攻撃を受け」「勢力を失墜」し、またその後も保護国時代を通じて「国賊」「売国奴」扱いされ、殺された会員も多かった*14 *15 *16 *17。

義兵鎮圧への協力

当時の韓国では排日目的の義兵が起こり（→義兵#後期義兵）日本軍が鎮圧していた。その際一進会が日本の軍・警察に協力した*18 *19。

韓国民衆に対する非行

1907年12月8日付で韓国副統監曾禰荒助が内田良平に宛てた私信*20では、一進会が韓国民衆に非行を行い「容易ならざる形勢」にあると報告が来ているので善処せよ、と指示している。
朝鮮新報6月30日付2面では「殊に地方会員の行為は会の勢力及（伊藤博文）統監の援護に増長悪用して種々の非行を為し或は暴徒草賊の輩と選ぶ処無き所行もあり又悪弊頻々として起るあり」とある。
一進会の非行については当時から報じられていた*21 *22 *23 *24 *25 *26。

韓日合邦の要請

1909年12月、一進会「顧問」*27として東京から同会を「指揮」*28「操縦」*29していた内田良平が「主謀」*30して、一進会名義の「韓日合邦建議書（韓日合邦を要求する声明書）」を純宗、第二代韓国統監曾禰荒助、首相李完用に提出した。
内田は東京で武田範之に声明草案を示して文章化させ*31 *32、自ら渡韓して12月1日京城に入り、一進会会長李容九らと打合せ*33、語句修正の後同月3日に一進会本部で声明書を可決*34、翌4日に提出した。
韓国各地の一進会員は本部からの電報と同会機関紙により声明を知った*35。
また声明書は、事前に山県有朋、桂太郎首相、寺内正毅陸相の同意を得ていたという*36 *37 *38 *39。
後藤新平逓信相の関与に言及した文書もある*40 *41。

騙された李容九

「1909年韓日合邦を要求する声明書」の「内田良平が李容九を騙して言いくるめた」を参照

声明発表後の各方面からの反発

「1909年韓日合邦を要求する声明書」の「声明書発表後の韓国内の反応」を参照

日本人の関与

京城府編「京城府史. 第一巻」（1934年）には「同会（一進会）創立の当初より日本人にして会の顧問たりしものに望月龍太郎・神谷卓男・佐瀬熊鉄等があったが、後ち望月帰国し神谷が平安北道に任官した頃より会は漸く衰へ、統監府時代には同府嘱託内田良平その顧問を兼ねたが、殆んど会に備はるのみであった。」*42とある。
宋秉畯から松石大佐に宛てた1904年12月2日付書簡*43では「一進会組織の当初林公使萩原書記官は共に扇動的態度なりしに」とある。
1904年12月8日付全州駐在巡査から警部への報告((進步會ニ關スル報告))で「仄かに聞く処によれば一進会に対し日本政府は十万円の運動費を密かに支出し居る様承り候事実なるや否や」とある。
1904年12月31日付林在韓公使から小村外相宛の報告「一進会は兼て機密一一四号信所報の如く我より勧告して一時其集会を中止せしめ居りたるに、政府の大官中殊に李容泰及び許蔿等の一派は該会を根本的に解散せしめて更に陛下の信任を得ん為め今の共進会を組織して反対行動を採らしめたる為め再び一進会を激昂せしめ且つ最近各地方に義兵なるものを組織して地方一進会員に当らしめ近来各地方に多少の騒擾を生じたる…一進会の重立たる連中は本邦人望月及神谷の二人に常に協議する所あり、両人は主義方針を謝まらざる様同会に説諭し来りたる様子に付き是亦両人をして全く同会との関係を断たしむることに勧告したり。又軍司令部通訳韓人（日本名野田）は同会の重立ちたるものとして行動し且つ自己の財産を同会の為め投じたり。此事実は韓国政府が一進会を以て我軍隊の保護の下にあるやに疑はしめたる重もなる原因と信ぜらるるに付同人も亦此際同会の関係を断たしむべし」「全州出張中の関谷警部よりの電報左の如し…観察使初め皆一進会は日本の保護の下にあるものと信じ居るものの如し」*44
梁谷成章在鎭南浦副領事から林権助在韓公使への1905年1月18日付報告では「一進会と我が軍隊との関係は寧ろ良好にして一進会員は我軍隊庇護の許に其人員を拾集し」とある。
1905年3月14日付有吉明釜山領事から林権助在韓公使への報告では、一進会員が日本人領事からの「保護」や長谷川大将の「後援」を公言しているとある。
萩原（書記官？）から小村外務大臣への1905年5月1日付報告*45では、李載現から韓国外交官李範晋宛の書簡の内容を報じている。「長谷川好道大将が金満家韓人から多額の金額を徴発し一進会を使って全国にばらまかせている」とある。
1906年9月22日　韓国統監府嘱託内田良平が伊藤統監と面会し、投獄された宋秉畯への配慮を要望*46。
1906年10月　韓国統監府嘱託内田良平が一進会顧問就任。*47
一進会顧問内田良平が韓国副統監曾禰荒助に宛てた1907年12月10日付「所見陳述」では、「京城官民は一進会員が統監下に知られ長谷川閣下に知られ現に閣下優過したまふを羡望して一進会の全盛を嫉視せる」と述べている。
1907年5月13日、宋と李が伊藤統監を官邸に訪問し「数刻会談」。*48
1907年5月15日、日本陸軍が一進会の財政窮状に際して10万円を機密費枠で支出。*49
1907年5月末～6月頃、寺内陸相が李を激励。*50
1907年6月10日、内田良平が桂太郎伯爵と会談。「午前九時より午後二時に至る正に五時間の長会談をなせり。」*51
1907年6月12日、内田良平が山県有朋侯爵と会談。「午前九時より十一時半に至りて退出す。」*52
1907年6月18日、李が伊藤博文統監を官邸に訪問。*53
1907年7月の第三次日韓協約後、伊藤から一進会に「授産金」10万円。*54
1908年5月25日付内田良平から杉山茂丸への書状*55に「斉藤大佐来京し、会員の間島移住を勧誘せられたれば、既に人を派し第一着の移住を試みしめ居れり。」とある。
朝鮮新報1908年10月22日付2面に「十三師団送別会　一進会は二十七日第十三師団長以下将校一同を独立館に招待し送別会を開催す」
1909年6月17日付文書で宋秉畯が伊藤に随伴し帰日との内容
1909年8月杉山茂丸が一進会顧問に就任。*56
1909年12月の合邦声明に際し後藤新平逓信相から宋秉畯に五万円との記述。*57
1910年1月29日付文書*58「日韓電報通信社長菊地忠三郎は内田良平が退韓後同人に代り一進会操縦の任に当り居りたるが」
1910年2月頃、山県有朋侯爵から李・宋に対して「一進会従来の行動を是認…との覚書」と「（併合の）実行は議会閉会後なるを以て之に関し互に研究し置くべしとの口達」*59。類似内容が別文書*60にもある。

併合前月の1910年7月、李容九が新任の寺内韓国統監と会談。*61

その他「日韓合邦秘史」では、「一進会は始め陸軍側の援助を以て成立せるものなる為め、創立の当初より、公使館側との関係円満ならず、加ふるに宋秉畯は曽て公使林権助と激論し、遂に組打喧嘩を為したることあり、為めに公使の極端なる反感を招き、公使館事務の統監府に引継がるゝや、一進会は無頼漢の集団にして後難測る可からず、時機を見て解散せしむるを可とすとの言継ぎあり」とある。

一進会発足当初の韓国人の反発・対抗

朝鮮駐箚軍司令部「朝鮮駐箚軍歴史第一巻」1916（大正5）年6月1日発刊

第二篇　韓国駐箚軍創立より日韓併合期間
第六章　韓国内の綏撫（暴徒討伐を含まず）
第二節　結社の状況（283頁～）

明治三十七年（※1904年）九月進歩主義の韓人京城に会し駐箚軍の認可を得て一進会を組織す該会は文明の鼓吹、旧慣の打破、施政の改善を標榜し其の行動穏健にして党勢漸次盛大に赴くや要路の大官等其の自己の地位を危くせられむことを恐れ百方之を纔〔ママ〕誣せせしかば韓帝亦之を嫌忌するに至り両者の間互に扜挌し漸く軋轢を生じて一進会の行動は将に治安を害する至らむとせり九月二十七日軍司令官は同会に警告する所ありしが爾来其の行動を慎みて単に政府の欠点を指摘するに止り政府も亦暴圧手段を避け特に詔勅を発し平和の裡に之を解散せしめむとせり
九月末一進会の領袖李容九は別に進歩会と称する政社を京城に創設し漸次に支会を平安、黄海、江原忠清の諸道に置き以て会員の勧誘に努め活動を開始す進歩会は元来一進会と異名同体のものなりしが十二月上旬に至り果然両会合同せり是に於て宮内府大臣兼内部大臣李容泰一派の大官等は尹孝定、羅裕錫、趙翊等をして進明会なる政社を創設せしめ一進会と連合を画し漸次に其の内部を攪乱して一進会を自滅せしめむと図りしも一進会は之を敬遠して其の連合を避け益行動を慎みて地方官の専横或は政府の失政を指摘して自己の主張を社会に声明せしかば政府は之が防圧の策無きに至り加ふるに時勢の進運は為政者をして窃に一進会に賛同の意を表せしむるに至れり同会は亦駐箚軍に妨害を加ふるの不利なるを知り頻に其の同情を得むことを勉む
十一月九日参謀次長は一進会の現況を左の各項に準じ調査すべく通牒せり
　一進会の組織及目的、会員の種類並主なる会員、中央地方に於ける勢力、治安上放棄し置くも可なるか或は取締の為何等かの処置を要するか
之に対し軍司令官は左の要旨を返電し次で其の取締り方針を報告せり
　目下一進会、進歩会は共同して意見を当局に贈り施政の改善を図らしめ我軍並帝国居留民に危害を加へず一般治安を紊す如き激烈の行為なし従て特別取締の必要を認めず
十月中旬駐箚軍司令官は韓国の各種政社に対する方針を各部隊長に訓示す其の訓示左の如し
　　訓示
　目下韓国各地に起る所の政社集会等の中には無頼の凶徒を嘯集し治安を妨害するものなきを保せざるも韓国今日の状勢に徴すれば人民は暴政若は収斂の誅求に堪へずして単に生命財産の安固を図らむが為施政の改善を訴へむとするもの多し斯の如きは前者と大に其の趣を異にするものあり故に各部隊長は慎重に地方の情況を視察し政社集会の軍事上に及ぼす影響如何を顧慮し苟も累を軍事上に及ぼすものに至ては毫も仮借する所なく之が鎮圧の手段を取るべきは勿論なりと雖我軍事行動上若は帝国居留民保護上妨害なきものに至ては之に干渉することなく徒に良民の企望を抑圧して以て官吏の匪行を幇助し却て人民の怨恨を招くの結果に陥るなきを期すべし
十一月二十一日軍司令官は一進会取締方針に関し左の諸件を大本営に報告す
　一進会会員中には内閣を組織するに足る人物を有せざるも会員の多数派韓国官吏の暴政に堪へずして自己の生命財産の安全を企図する為之に加入したるものにして大官中にも之に同情を表するものと之が撲滅を計るものとの二様あり甲者は概ね親日派より成り乙者は親露党より成る而して皇帝は之（※一進会）が絶滅を希望して已まず我軍は断然之が抑圧の手段を取らんか其の撲滅固より易易たるのみ況や同会を嫌忌する皇帝の歓心を沽ふに足るべしと雖も斯の如きは徒に皇帝に阿りて自己の権勢を恣にせむとする奸臣の欲望を達せしめ収斂貪婪厭くを知らざる地方官吏の爪牙を逞せしめ良民の怨恨を招くの結果に陥るなきを保せず然れども絶対に之を放置せば政府は盛に負褓商若は其の他の反対党を使嗾し或は兵力を使用し之が撲滅に努めしめ進歩会員は之に反抗して終に一大争擾を発生するに至るべきは自然の趨勢なりとす
若し我軍に於て一進会を保護せむか同会は忽にして其の勢力を昂め終に驚くべき大勢力を有するに至るべし
一進会の殺活は実に我軍の行動如何に由る其の之を庇護するは固より必要なきも一意皇帝の意を迎へむが為に力を一進会の撲滅に致す如きは亦策を得たるものにあらず之を対岸の火災視して終に治安を害するに至らしむる如きも亦軍の職責上談じて恕す能はざる所なりとす故に不偏不党我帝国臣民の利益と軍事行動上の安全と一般に於ける治安の維持とを基礎とし同会が以上三箇の要件に妨なき限は敢て之に干渉するを要せずと雖も苟も常軌を逸する行動あるに至らば断乎たる処置を取らざるべからず若又韓国政府の同会に対する行動にして治安を害する如き場合に於ては之を掣肘して禍乱の本源を除去するに努めざるべからず我軍は同会及政府の行動を監視し以て之が取締を厳にすること将来に於ても敢て此方針を変ずることなかるべし
十二月上旬に至り一進会は各地方の進歩会を合同し一進会支部と称せしめ益党勢を張り要路大官及地方観察使に申言し施政の改善を促し我軍に対しては厚意を以てして鉄道工夫の供給等に利便を図りたり
反対党たる進明会は一進会に連合を拒絶せられ其の後屡次開会せしも党勢振はず十二月中旬に至り共進会と改称して一進会と対抗すべく会員を募集し其の他党勢拡張に奔走せり
政府の大官中参政申箕善、内部大臣李容泰、参賛許蔿内蔵院長署理金永振等は一進会を撲滅すべく隠に甚しく十二月ニ十一日全州に於ける地方官の後援に頼る義兵と称する反対派は武器を取て一進会を城外に駆逐し若干の死傷者を出せり是に於て一進会は地方会員に避難上京すべく通告せり又平安道方面に於ても官吏と一進会との軋轢益甚しく両者共に我軍に頼りて相陥擠せむとし黄州より安州に至る沿道の如きは鉄道工事に要する人夫を一進会より無賃供給を以て我軍の同情を得むとし官吏は同会を以て日本に不利なるものと誣告す軍威を藉りて之を解散せしめむと欲する等の奇劇を演ぜり
十二月ニ十六日内部大臣李容泰は各道観察使に訓令して曰く「義兵と称する集会を解散し又は会民と称し上京発程の者には各法律を設け国境通過を厳禁し各其の業に安ぜしむべし若し違法者を出す如きことあらば観察使は其の責を免れざるべし」と然れども此訓令は単に李容泰が表面を衒ふ一手段に過ぎざりしなり
十二月二十八日韓国政府は一進会長尹始炳炳及副会長兪鶴柱を警衛院に引致せり一進会員の多数は之が為京城に集合し不穏の状ありしかば軍司令官は憲兵を以て一進会を抑圧し其の集合を解散せしめ一方政府に警告して会長以下を放還せしめたり翌二十九日韓国歩兵一中隊京城美洞一進会事務所に至り会員に退散を命ず会員之に応ぜざりしかば韓兵武器を執て数十名を傷け且つ我巡察将校及憲兵に投石し数名を負傷せしめしを以て憲兵は兵力を増加して暴行の韓国将校以下十五名を逮捕し之を憲兵隊に引致し政府に対して暴行事件の責任を問ひ参政申箕善、内部大臣李容泰、軍部大臣李允用、警衛院総管権重奭の免官及加害将校下士卒の厳罰を要求せり是に於て韓国政府は十二月三十日を以て関係各部大臣を革職し暴行の将校下士卒を処分して其の罪を謝せり
同三十八年三月中旬全州に於ける一進会は同地官吏の醜行を弾劾し一方には政談演説会を催してその匪行を論議し両者の軋轢日に甚しく互に相反目し遂に武器を執り対抗し形勢頗る不穏となりしを以て駐箚軍司令官は四月上旬同地に於ける治安維持の為駐箚憲兵隊をして韓国地方官及警察機関に代り警察権を執行せしめしかば爾来両者互に行動を慎みて平穏に経過せり
五月下旬日本海の戦捷により排日派の大官等は大勢の帰する所を覚り従来相反目せし一進会に昵近せむとし入会する者漸次増加し為に一進会は日に益振ふに至れり
同四十年七月京城事変以来幾多の結社団体の行動動もすれば過激に亘り民心を煽動せむとするものあるを以て統監は韓国政府をして保安法を発布して之が取締を厳にせしむ八月内部大臣は更に危険思想を鼓吹する数箇の団体に解散を命じ爾余の者に対しては其の監視を厳ならしめしかば勢力なき社団は自然自滅の姿となり一進会をして遂に其の名を成さしむるに至れり
京城に於ける結社の状況上述の如くにして政社組織のものにありても政府党と非政府党とあり而して非政府党中亦野心家其の大部を占む左に大小の結社を表示し其の概況を述べむとす（以下略）

*1 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードB0305061040、２〔明治４２年〕１２月２９日から〔明治４３年〕１月２２日、22画像目。
*2 : 内田良平関係文書、国立国会図書館サイト
*3 : 「平壤地方情勢視察報告書提出件」。 “一進會支部長等ノ言一進會支部長等ノ言ニ曰ク吾等ハ李容九宋秉畯ノ言ニ聽キ毆傷ニ耐ヘ瀕死ヲ忍ヒ唾罵捽擊セラルゝヲ顧ミス一意日本ニ信賴スレハ暴政必ス除カルヘク文明決シテ進趣スヘシト斷決シタリ果然制度日ニ革マリ虐吏氣ヲ斂メ開花ノ運豫期スヘキヲ祝スルニ逢ヘリ然ルニ宋秉畯ノ明夷ト俱ニ西敎猝カニ勢ヲ逞フクシ一進會ハ日ニ衰ヘ貪官汚吏ハ再ヒ良民ヲ戕賊シ生靈ノ塗炭却テ舊ニ勝サルモ匡正ノ力ナク會員ヲ目スルニ國賊ニ汚名ヲ以テスルニ至ル二十三郡十萬餘名ノ會員ハ今ヤ減退シテ三萬餘名ニ過キス且ツ會員タルモ義務ヲ視ルコト恬然タリ故ニ內ハ財計ニ窮シ外ハ西敎ト官吏トニ迫害セラレテ此衰弱ノ狀ヲ呈セリト…右報告上申ス　明治四十年四月十五日　內田良平　統監伊藤侯爵閣下”
*4 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードB03050610300、１〔明治４２年〕１２月７日から〔明治４２年〕１２月２８日、1-3画像目。 “明治四十二年十二月八日接受　主管　政務局　乙秘第二七一一号　十二月七日　日韓合邦論に対する韓人の言動韓国興学会副会長朴炳哲は日韓合邦問題に対し左の通り言明し居れり。我が韓国に於ける政治的団体の重なるものは第一、大韓協会、第二、西北学会、第三、一進会の三種にして大韓協会は恰も日本に於ける政友会の如く全国民多数の会員を有し韓国民全般を代表し居る政治団体と謂ふも強ち過言にあらず。又西北学会は文字の示すが如く平城、平安道、咸鏡道、黄海道等韓国西北地方に属する政事敵学術の進歩を図る政治団体たるに過ぎず。又一進会は或る一部の人士より成る政治団体にして其勢力も我が韓国に於ては大韓協会の如く厖大ならず其会員は僅か三千人内外に過ぎず。”
*5 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードA05020350600、韓国警察報告資料巻の３、444画像目。 “大韓協会隆熙元年十一月一日（明治四十年）、尹孝定、呉世昌、権東鎮等の発起により一、教育の普及、二、産業の開発、三、生命財産の保護、四、行政制度の改善、五、官民弊習の矯正、六、勤勉貯蓄の実行、七、権利義務責任服従の思想鼓吹の綱領を以て組織せらる。其真想は隆熙元年七月日韓七協約に反対を以て成立したるものと云ふを得べし。京城に種々の政党と称する者あるも比較的多数の会員と人材を有するは大韓協会なりとす。現会長は金嘉鎮にして会員中の有力者は権東鎮、尹孝定、呉世昌等なり。該会が今日迄勢力を保ち居るは排日党なりしが為めにして一進会が会長の専制的なるに反し大韓協会は評議員の合議に依り行動するを以て多少敏活を欠くの嫌あり。昨年末一進会と殆んど連合の内約成らんとして一進会は日韓合邦を提唱したる為め遂に連合談破れ行掛り上大韓協会は一進会の提唱に反対し現状維持の態度を執り今日に至れり。爾来勢力に甚しき消長なし。”
*6 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードA05020350200、韓国警察報告資料巻の１、222画像目。 “一六、政社其他の会の状況会員の行動及官民の会に対する感情　一進会は各道全く萎靡沈衰に陥り平安南道の如きは会員中一進会を口にするだに避くるの風を生じ…大韓協会は各道を通じ会員中流以上者に属し会員少数なりと雖も一進会を凌駕せんとし平安南道の如きは一部の民心を支配するの潜勢力を有すと。然れども全道僅に五十内外の支会にして会員又六千を出でず一般より見るときは会勢不振の状況にあり。”
*7 : 『外交史料　韓国併合（下）』海野福寿編、不二出版、2003年、657頁。“憲機第二三六五号今回一進会の発表したる声明書の主謀者は内田良平にして…而して昨日菊池謙譲は内田に対し大要左の如き忠告を与へたりと…二、各会中声望あるは大韓協会なるを以て該会に反対すれば到底希望を満し能はざるにより大垣丈夫と協議決定すべしと”
*8 : 「京城政界ノ現情」。 “當國ノ二大政黨ハ一進會ト大韓協會ナルカ一進會ハ宋秉畯ノ辭職退官ノ爲メニ打擊ヲ受ケ振ハス將來何等カノ發展策ヲ講スルニアラスンハ現狀ノ維持困難ナラン之ニ反シ大韓協會ハ巧ミニ民心ニ投合スルヲ以テ目下若干ノ進境ニ在ルヲ認ム同會員ノ數ハ精確ナラサルモ今ヤ一萬ニ近カク而シテ一進會ノ數ハ之ニ倍スルモノアラン一進會ハ李容九,宋秉畯不在ノ爲メ副會長洪肯燮カ萬事ヲ處理シ其外ニ尹始炳,崔永年,兪鶴柱,韓錫振 (國民新聞社長) 尹定植,李熙悳,金澤鉉等目下ノ有力ナル者トス”
*9 : 「一進会創立略史」。 “光武八年十月至九年九月自高陽郡至黃海道平安南北道會員之自擔輸送赴役人員及軍用鐵道役夫十四萬一千八百三十七人費用額十一萬六千六百八十八圓也… 光武九年六月十日至十月二十日日本陸軍北進時總會長李容九挺身跳赴領率會員組織輸送隊諸般運輸及餉糧等節每日應役一千一百五十人計日按月則統計人員各十一萬四千五百名死傷者四十八人籌欵費額爲十三萬四千二百三十圓也”
*10 : 葛生能久「日韓合邦秘史. 上巻」黒竜会出版部、1930年、163.166-167頁。 “北進輸送隊之部…総人員三千一百五十人　一千一百五十人毎日応役者　一千一百人交代休暇人　五百五十人病傷者　一百三十人五十人長及十人長　五十人各所出張所主任　五十人司察員　九十人賄方　三十人医院”
*11 : 亡命韓人千章郁件
*12 : 佐々充昭 (2018). “旧韓末における羅喆の訪日活動－朝鮮開化派亡命政客および玄洋社系人士との交流を中心に－”. 立命館文学 (657): 41頁
*13 : 声明文全文は戸叶薫雄, 楢崎観一「朝鮮最近史 : 附・韓国併合誌」蓬山堂、1912年、19-21頁
*14 : 「乙巳保護條約後韓國社會動靜報告件」。 “一進會ハ今回ノ宣言ニ付世上ノ攻撃ヲ受ケ會員中異論者ヲ生シ一ト先解散說ヲ唱フル者アルモ會長之ニ肯セス國民敎育會ハ之ヲ傳聞シ頻リニ一進會ノ解散說ヲ鼓吹シツゝアリ… 右及報告候也明治三十八年十一月十六日警務顧問丸山重俊印特命全權公使林權助殿”
*15 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードA05020350600、韓国警察報告資料巻の３、443・444画像目。 “右の如く一進会は一時地方に勢力を有したりしも光武九年（明治三十八年）日韓保護条約締結当時進で日本の保護を仰ぐの可なるを宣言してより大に勢力を失墜し隆熙元年（明治四十年）日韓新協約発布せられ軍隊解散と共に各地に暴徒蜂起するや日本官憲に反抗的態度を執ると共に売国奴一進会員を殺すべしと唱へ会員中其毒刃に斃れたる者多く殆んど一進会員たるの甚危険なるを感ずるに至らしめたり。昨隆熙三年十二月日韓合邦論を提唱してより世論益売国奴を以て之を目し攻撃一層甚しきに至れり。只一進会が今日尚相当勢力を保ちつゝある所以は宋秉畯は親日派として常に日本官憲に接近し其後援を有せりと称せらるゝと勢力盛なる当時種々の口実の下に獲得したる利権あるに依り、尚日韓合邦は近き将来に実行せらるべく其暁には再び我党の天下たるべしと夢想し会員の離散を防ぎつゝあり。一進会は官吏の㧙政及両班の横暴に反抗せんが為めに起ちたるものなるを以て其会員の多数は常民なりとす。従て宋秉畯、李容九等二三の輩を除くときは殆んど有力の士なし。”
*16 : 1907年4月15日付「平壤地方情勢視察報告書提出件」。 “一進會支部長等ノ言一進會支部長等ノ言ニ曰ク吾等ハ李容九宋秉畯ノ言ニ聽キ毆傷ニ耐ヘ瀕死ヲ忍ヒ唾罵捽擊セラルゝヲ顧ミス一意日本ニ信賴スレハ暴政必ス除カルヘク文明決シテ進趣スヘシト斷決シタリ果然制度日ニ革マリ虐吏氣ヲ斂メ開花ノ運豫期スヘキヲ祝スルニ逢ヘリ然ルニ宋秉畯ノ明夷ト俱ニ西敎猝カニ勢ヲ逞フクシ一進會ハ日ニ衰ヘ貪官汚吏ハ再ヒ良民ヲ戕賊シ生靈ノ塗炭却テ舊ニ勝サルモ匡正ノ力ナク會員ヲ目スルニ國賊ニ汚名ヲ以テスルニ至ル二十三郡十萬餘名ノ會員ハ今ヤ減退シテ三萬餘名ニ過キス且ツ會員タルモ義務ヲ視ルコト恬然タリ故ニ內ハ財計ニ窮シ外ハ西敎ト官吏トニ迫害セラレテ此衰弱ノ狀ヲ呈セリト…右報告上申ス　明治四十年四月十五日　內田良平　統監伊藤侯爵閣下”
*17 : 朝鮮新報1908年8月4日「一進会の追悼式」。 “昨年来一進会員の暴徒の為殺害されし者一千余名に達せるは既報の如くなるが同会本部にては来る八日午後一時より独立館に於て之が追悼の式を挙ぐる由”
*18 : 1906年12月17日「江原道北部地方視察特別報告書提出件」。 “去ル四日小隊長ハ二十四名ヲ率ヰテ討伐ニ向ヒ昨夕卽チ七日ヲ以テ歸營シタリト而シテ未發火ノ火繩獵銃一ヲ齒獲シ賊二ヲ殪シ賊徒ヲ潰走セシメテ凱旋シ意氣大ニ揚レリト云フ本討伐ニ隨ヒシ一ノ巡檢ハ新任セラレシ一進會員ナリ…該地ニハ侍天敎民アリ又一進會員アリテ我ニ於テハ今ヤ嚮導ニ最便ヲ有セルモ…右急ニ特報シタテマツル　明治四十年十二月八日夜　華川郡ニ於テ內田良平　長谷川大將閣下”
*19 : 朝鮮新報1907.11.15「暴徒彙報」。 “▲賊魁逮捕銃殺す　暴徒の首魁任王汝ば近頃広州郡実村明煕岐洞に一戸を借り受け家族と共に潜伏せることを探知し巡査部長以下巡査巡検並に一進会員を合せ十名去る九日夜暗に乗じ…”
*20 : 「一進會動靜에 관한 私信」寒中御苦勞御察申候數度御報告被下忝存候陳者他ヨリ報告ニ依レハ貴中方御巡視之直接地方ニハ非サルモ國難鎭撫ヲ名トシ一進會カ黨勢ニ汲々タル結果時ニ或ハ暴行シ又ハ脅迫シ又ハ斷髮ヲ强制シ良民之カ爲メニ反テ不安ノ念ヲ生シ容易ナラサル形勢ニ立至リ居リ候樣ニ相聞ヘ申候是ハ旣ニ貴兄方カ御出發ノ際懇々申入候如ク己ヲ捨テ全ク國家ノ爲メニ盡力セラルゝニ非サレハ近クハ一進會ノ爲メニモ相成不申候遠キハ國家ニ尙ホ一層ノ困難ヲ可殘結果ニ終ルヘク候條此邊充分ニ御考慮相成度候一進會員ニシテ果シテ前段ニ陳ルカ如キ處置アルニ於テハ無用捨斷然タル處分ニ出ルノ外途ナキニ至ルヘク候是亦十二分ニ御含置被下度候且ツ貴兄方ハ御出發前ニ小生ヨリ李用九氏ニ申入候事ヲ決シテ無御忘却地方ニ對シ御處置有之度候又地方ノ情形ニ依リテハ一進會員ノ巡視ヲ暫時御見合可然歟トモ存候元來一ヲ得テ十ヲ失フカ如キコトハ爲國家決シテ採ラサル所ニ候此際良民ノ感情ヲ害スルカ如キ事決シテ有之間布吳々モ御銘心肝要ニ候李用九氏ト御熟談可然存候右申入度草々不備十二月九日曾禰荒助內田良平殿”
*21 : 朝鮮新報1906.09.17「鎮南浦電報　一進会員の紛擾」。 “三和郡一進会員は土地樹木を学校設立のため売却せしも未だ設立せざるを以て三和郡リクショ（？）は村民数百名を集め本日該一進会事務所に迫り不穏の旨…”
*22 : 朝鮮新報1907.01.20「咸興憲兵分隊報告」。 “甲山なる守備隊より第十三師団司令部への電報に依れば本月十六日午前十一時頃甲山人民二三百名集合して同地一進会の非行に対し郡守に迫り守備隊に訴状を提出したるを以て郡守は一進会員の不良者を逮捕せしかば同十七日人民一同は解散”
*23 : 朝鮮新報1907.06.05「白馬付近不穏」。 “白馬駅付近の韓人部落に於ては同地方一進会支部会員が不法の伐木をなしたるより守旧派の韓人は激昂し一進会員を襲撃せんとて形勢不穏なりと。”
*24 : 朝鮮新報1907.11.26「暴徒情報」。 “安平紛擾は一進会員非行に対し村民激昂し断髪令其他銃器に付ても容喙したる形跡あり。
*25 : 朝鮮新報1908.02.22「一進会員強奪」。 “全羅北道古阜警察分署長より去十二日付其筋へ左の報告あり。金溝郡水流面院坪店一進会員劉道源は同会員十一名を集め郡港一進会討伐隊と称し各所を徘徊するを以て取調るに其下部たる呉相玉姜允徳の二名は扶宋郡上東面居申箕善の家宅に闖入し銀簪四個及木綿類を掠奪せる事実発見せるを以て目下取調中なり。”
*26 : 朝鮮新報1907.06.28「一進会員の非行」。 “京畿道豊徳郡の一進会員は是迄度々其会の勢力を濫用し或は官憲に抗し或は徴税を拒否する等所行ありし由なるが…”
*27 : 内田良平『日本の亜細亜 : 皇国史談』黒竜会出版部、1932年、289頁。“自強会が決死隊を募って暴動を起し、韓国の大臣及び一進会長並びに同会顧問たる著者をも暗殺せんと謀った時”
*28 : 「韓日合邦에 대한 一進會의 聲明書 등 對策에 관한 報告書寫本送付件」。“憲機第二三六五号　今回一進会ノ発表シタル声明書ノ主謀者ハ内田良平ニシテ、仝人ガ該書ヲ齎ラシタルコトハ蔽フ可カラザルモノニシテ、発表後、以外ニモ国民及政府ノ反対激烈ナルタメ、殆ンド今日ニテハ其成算ニ苦ミ居レリト。而シテ昨日、菊池謙譲ハ内田ニ対シ大要左ノ如キ忠告ヲ与ヘタリト。一、今日ノ事件ハ時機未タ熟セズ、一般ノ反対ヲ受ケ平和ヲ破壊スル而已ナラズ、平地ニ風波ヲ起スモノナレバ、一進会ノ指揮ハ東京ニ於テ之レヲ為サス、一切之レヲ京城ニ移シ、且ツ内田等ハ潔ク関係ヲ絶チ、間接ニ一進会ヲ援助スベシト。”『外交史料　韓国併合（下）』海野福寿編、不二出版、2003年、657頁にも掲載
*29 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードB03050610500、３隆煕４年〔明治４３年〕１月７日から〔明治４３年〕２月１８日、42画像目。 “乙秘第二五〇号　一月二十九日　菊地忠三郎ノ行動　日韓電報通信社長菊地忠三郎ハ内田良平ガ退韓後同人ニ代リ一進会操縦ノ任ニ当リ居リタルガ”
*30 : 「韓日合邦에 대한 一進會의 聲明書 등 對策에 관한 報告書寫本送付件」。“憲機第二三六五号　今回一進会ノ発表シタル声明書ノ主謀者ハ内田良平ニシテ、仝人ガ該書ヲ齎ラシタルコトハ蔽フ可カラザルモノニシテ、発表後、以外ニモ国民及政府ノ反対激烈ナルタメ、殆ンド今日ニテハ其成算ニ苦ミ居レリト。而シテ昨日、菊池謙譲ハ内田ニ対シ大要左ノ如キ忠告ヲ与ヘタリト。一、今日ノ事件ハ時機未タ熟セズ、一般ノ反対ヲ受ケ平和ヲ破壊スル而已ナラズ、平地ニ風波ヲ起スモノナレバ、一進会ノ指揮ハ東京ニ於テ之レヲ為サス、一切之レヲ京城ニ移シ、且ツ内田等ハ潔ク関係ヲ絶チ、間接ニ一進会ヲ援助スベシト。”『外交史料　韓国併合（下）』海野福寿編、不二出版、2003年、657頁にも掲載
*31 : 内田良平『日本の亜細亜 : 皇国史談』黒竜会出版部、1932年、284頁。“武田は著者と天祐侠以来の同志にして、博学且韓国流の漢文を書くことに於て唯一人者であった。同人の漢文は韓人が之を読んで、日人の筆に成ったと観るものなき程の文章家である。武田の着京するや、曩に杉山より桂首相に内覧同意せしめたる合邦請願書の草案を示し、原文の意を以て漢文となさしむる為め、芝浦竹芝館に籠居せしむること一週日の後、上奏文及び韓国統監に上る書、総理大臣李完様に上る書の三通を脱稿し、準備は茲に全く完成した。”
*32 : 海野福寿編『外交史料　韓国併合（下）』不二出版、2003年、611頁。“一進会李容九の名において曾禰荒助統監に提出された合邦請願書は、内田良平の下で合邦運動に従事していた武田範之が起草し、一二月一日に再渡韓した内田が持参した原稿に若干の修正を加えたものである。”
*33 : 内田良平『日本の亜細亜 : 皇国史談』黒竜会出版部、1932年、288頁。“著者は渡韓の途中、下の関に於て暴風雨に沮まれ、予定より一日後れて三十一日乗船、十二月一日京城に入り、即夜清華亭に李容九、武田範之、菊池忠三郎の三人と会合して、携帯せる合邦上奏文及び建議書を李容九に渡し、之が提出の手順を議定した。”
*34 : 内田良平『日本の亜細亜 : 皇国史談』黒竜会出版部、1932年、292頁。“十一月（引用者注：十二月の誤りか）二日、武田は一進会中の能文家崔永年と共に、合邦の上奏文其他の字句修正を行ひ、李容九にも熟読せしめて慎重に協議する所ありしが、僅かに二三句を刪正したるのみにて之を終り、能筆家たる崔永年の子息をして、一室に籠居浄書せしめた。三日、一進会は三派の提携を断絶すると同時に、本部に於て大会を開き、合邦の上奏案を討議し、満場一致を以て一気呵成的に之を可決した。”
*35 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードA05020350800、韓国警察報告資料巻の４、7画像目。 “一進会員ノ如キハ始メ本部ヨリ『皇室尊重人民仝等合致宣言書頒布』ノ電報ニ接シ次ニ国民新聞（引用者注：一進会の機関紙）ニヨリ宣言書ノ内意ヲ知リタルモノニシテ中ニハ其突然ノ発表ニ驚キタルモノアリ中ニハ自党ノ問題タルニ係ハラス反対ノ言ヲ吐ク者アリ又四面ノ攻撃ニ耐ヘスシテ脱会ヲ公示シタル者アリシカ各地多クハ本部ノ諭示ニヨリ何レモ慎重ノ態度ヲ持シ他ノ動静ヲ観望スルニ怠ラス”
*36 : 内田良平『日本の亜細亜 : 皇国史談』黒竜会出版部、1932年、286頁。“十五日（引用者注：1909年11月）、杉山（引用者注：杉山茂丸）を訪ひしに、杉山告ぐるに『山県公、桂首相に武田起草の上奏文を示し、一進会は之を提出して合邦を請ふの手順となれるを語り、更に寺内陸相にも示し、陸相の質問に対し答解し置きたる』を以てし”
*37 : 海野福寿『伊藤博文と日韓併合』青木書店、2004年、178-179頁。“黒龍会編『日韓合邦秘史』によれば、伊藤の死後まもなく宋秉畯・内田良平・武田範之が合邦請願書の草案を作成し、山県・寺内・桂の同意を得たという。”
*38 : [韓日合邦에 관한 一進會의 請願書趣旨에 대한 請訓件]。 “往電第三六號　明治四十二年十二月五日午後六時二○分發　曾禰統監　桂首相 …殊ニ內田ハ韓人ニ對シ此事ニ付テハ桂首相寺內陸相ノ密旨ヲ受ケ來レルコトヲ聲言シ居レルカ如シ是最モ憂フヘキノ事ト存ス”
*39 : 「日韓合邦問題ニ關スル件」。 “警秘第三四三號天眞樓滯在中ノ內田良平ハ去四日來訪シタル大阪每日通信員山本光三ニ對シ語リタリト云フ談片ヲ聞クニ日韓合邦問題ニ關シ一進會カ活動ヲ開始シタルニ對シ世人或ハ突飛的ノ感情ヲ起スモノナキヲ保セサルモ同問題ハ旣ニ伊藤公生存中ヨリ萠芽シ來レル宿題ニシテ日本內閣員中桂總理·寺內陸相·後藤遞相等ノ間ニ於テ專ラ秘密ニ劃策セラレツゝアリテ…”
*40 : 「日韓合邦問題ニ關スル件」警秘第三四三號天眞樓滯在中ノ內田良平ハ去四日來訪シタル大阪每日通信員山本光三ニ對シ語リタリト云フ談片ヲ聞クニ日韓合邦問題ニ關シ一進會カ活動ヲ開始シタルニ對シ世人或ハ突飛的ノ感情ヲ起スモノナキヲ保セサルモ同問題ハ旣ニ伊藤公生存中ヨリ萠芽シ來レル宿題ニシテ日本內閣員中桂總理·寺內陸相·後藤遞相等ノ間ニ於テ專ラ秘密ニ劃策セラレツゝアリテ…”
*41 : [一進會釀成事件의 系統 및 關係者에 관한 報告書寫本] (憲機第二三六九號) 今回一進會ノ釀成事件ノ系統及關係者左ノ如シトノ說アリ遞相後藤男爵ハ朝鮮硏究會ト結ヒ宋秉畯ハ後藤男ヨリ金五萬圓ヲ受ケ一進會ノ相談役タル杉山茂九及內田良平ヲ使嗾シタルモノニシテ內田ハ五千圓ヲ以テ渡韓シ當地ニ於テハ新橋榮次郞 (後備輜重兵少尉) 菊池謙讓等モ多少ノ金ヲ貰ヒ運動ヲナシツゝアリ內田良平ニ屬スル井上藤三郞·武田範之等ハ東京ノ相場士又ハ各通信員等ト結托シ米穀ノ騰貴ヲ計リ一儲セン爲メナリト云フ明治四十二年十二月七日”
*42 :
*43 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードB03050325700、３明治３８年１月１０日から明治４２年１０月１９日、8画像目。 “今回一進会組織の当初林公使萩原書記官は共に扇動的態度なりしに不拘中途一変某々は宮廷より数万円の解散料を玄暎運を介して着服し尚ほ一進会解散保証の下に公然大東俱楽部資金として韓皇より三万円寄付せしめ将た日本に於ても批難の声ある荒蕪地問題を一進会解散と交換問題として韓廷を威迫したるが如き之れ決して信義ある行動と認むべからず
*44 : 日本外交文書デジタルアーカイブ第37巻第1冊(明治37年／1904年)「12　韓国関係雑纂」中の「8、一進会ノ行動」487‐488頁
*45 : (110) 「李載現이 金仁洙를 거쳐 李範晋에게 보낸 밀서에 관한 續報」。 “長谷川大將モ亦屢々謁見シテ壓迫ヲ加ヘツゝアリ加之ナラス同大將ハ亡命者ト祕ニ書面ヲ往復シ通謀スル所アリ或ハ買官賣職ヲ禁斷スヘシト一方ニ勸告ヲ與ヘナカラ又一方ニハ韓人某々ト謀リ官職賣官ヲ爲シ或ハ金滿家韓人ヨリ多額ノ金額ヲ徵發セリト述ヘ又一進會ヲ敎唆シ之ヲ全國ニ配送シテ財産均等主義ヲ鼓吹セシメ地方民心ヲ攪亂セントスル傾キアリ”
*46 : 葛生能久『日韓合邦秘史（上巻）』黒竜会出版部、1930年、43頁。“内田は十月六日を以て宴を恵泉湯に開き、一進会の幹部四十余名を饗して顧問たることを披露し、席上生存競争の理と、日韓合邦の利益とを演説したり。”
*47 : 葛生能久『日韓合邦秘史（上巻）』黒竜会出版部、1930年、43頁。“内田は十月六日を以て宴を恵泉湯に開き、一進会の幹部四十余名を饗して顧問たることを披露し、席上生存競争の理と、日韓合邦の利益とを演説したり。”
*48 : 朝鮮新報1907.05.15「統監と一進会長」“一進会領袖宋秉畯並に会長李容九氏は十三日伊藤統監を官邸に訪問し北韓地方に於ける同会の状況視察の結果並に黄州遭難の顛末に関し数刻会談する処ありたり。”
*49 : 葛生能久「日韓合邦秘史. 上巻」黒竜会出版部、1930年、240頁。“十五日、我陸軍は特に機密費を発して一進会に金十万円を賜与せられたる。長谷川大将其の命を伝へらる。”
*50 : 葛生能久『日韓合邦秘史（上巻）』黒竜会出版部、1930年、268頁。“五、一進会遊説団の期間と廃立の機運　六月九日、李容九一行京城に戻る。一行は前日二十六日発程以来、黄宗、平壌、寧辺、義州を巡説して、旧義州に寺内陸相を迎へ、白馬山を踰えて平壌に還り、武田は同地に於て密に李容九を陸相に謁せしめ、以て其の激励を得たり。”
*51 : 葛生能久『日韓合邦秘史（上巻）』黒竜会出版部、1930年、269頁。
*52 : 葛生能久『日韓合邦秘史（上巻）』黒竜会出版部、1930年、276頁。
*53 : 朝鮮新報1907.06.19「一進会長の訪問」“一進会長李容九氏は昨日午前伊藤統監を官邸に訪問したり”
*54 : 葛生能久『日韓合邦秘史（上巻）』黒竜会出版部、1930年、553頁。 “四十年夏、韓皇譲位の後、内田は一進会々員に産業を与ふるの必要を感じ、其方法を案じて、授産金付与の建議を為せり。幸に伊藤公は之を快諾されしを以て、内田は又直ちに桂侯及び杉山に大使「一進会救済問題に関し、之を伊藤公に謀りたるに、公は忽ち快諾し、帰朝の後、他に相談の上決定すべしとの事なるを以て予め御含置を請ふ」との意を致せしに、桂侯は当時台閣の人ならざりしも、大に之を賛成し、四十年八月伊藤公帰朝の上之れが相談ありしを以て、桂侯は出金の方法を講じ、遂に金五十万円を支出することに定め、該金交付の手続も同時に確定するに至れり。而して此授産金なるものは、一面より言へば譲位及び新協約成立に対する一進会の尽力に報ゆるの意をも含まれたりしなり。（553頁）　宋（宋秉畯）の曰く…彼の授産金に関し、一日統監は余（宋秉畯）と李容九とを招き、曾禰副統監と列席の上、余等に命じて曰く「金員は交付すべきが、之は曾禰と談合して殖産の事に使用すべし。金額二十六万円の内、先づ十万円を付与し、残額は副統監と協議して成案提出の後に交付せん。但し此一事は何人にも洩すこと勿れ。他に此話に与れるは会計課長兒玉秀雄のみなり。」との事なりしが、”
*55 : 葛生能久『日韓合邦秘史（上巻）』黒竜会出版部、1930年、569頁
*56 : 黒龍会『日韓合邦秘史（下巻）』原書房、1966年、89頁
*57 : 一進會釀成事件의 系統 및 關係者에 관한 報告書寫本]“ (憲機第二三六九號) 今回一進會ノ釀成事件ノ系統及關係者左ノ如シトノ說アリ遞相後藤男爵ハ朝鮮硏究會ト結ヒ宋秉畯ハ後藤男ヨリ金五萬圓ヲ受ケ一進會ノ相談役タル杉山茂九及內田良平ヲ使嗾シタルモノニシテ內田ハ五千圓ヲ以テ渡韓シ當地ニ於テハ新橋榮次郞 (後備輜重兵少尉) 菊池謙讓等モ多少ノ金ヲ貰ヒ運動ヲナシツゝアリ內田良平ニ屬スル井上藤三郞·武田範之等ハ東京ノ相場士又ハ各通信員等ト結托シ米穀ノ騰貴ヲ計リ一儲セン爲メナリト云フ明治四十二年十二月七日”
*58 : アジア歴史資料センター、レファレンスコードB03050610500、３隆煕４年〔明治４３年〕１月７日から〔明治４３年〕２月１８日、42画像目。 “乙秘第二五〇号　一月二十九日　菊地忠三郎ノ行動　日韓電報通信社長菊地忠三郎ハ内田良平ガ退韓後同人ニ代リ一進会操縦ノ任ニ当リ居リタルガ”
*59 : [韓國合邦에 대한 李·宋會見內容報告件]
*60 : 1910年2月16日 [菊池忠三郞에 관한 報告移牒]
*61 : 戸叶薫雄, 楢崎観一「朝鮮最近史 : 附・韓国併合誌」蓬山堂、1912年、264頁。 “七月に至り同会々長李容九は新任の寺内統監と一回の会談をなしたるのち”