The Japan Association for Transnational Studies

第3報告

日系中国企業(Y社)での経営改革の実例

 報告者:岡 雄二郎氏(日系企業製造 部門元副事業部長)
 司会者:山内 清史氏(神奈川大学)

報告要旨

海外には数多くの日系企業が進出し、習慣、文化、思考方法の相違から来る経営問題に直面している例が多い。
報告者は東南アジアを中心として、海外での実際の経営に長年携わってきており、直近では中国に経営TOPとして着任し、実際のオペレーションに携わった。この報告は、着任の2004年からの3年間の実態からの体験報告である。
着任した企業は、日本の上場会社の子会社であり、1994年からオペレーション(電子部品の製造・販売)を行っていた。
着任した時点では、品質問題、デリバリー問題、労使問題等にどっぷり浸かっており、操業直後の好調な収益状況から様変わりの赤字突入寸前の経営不振に陥っていた。
 3年間で高収益の経営体質に変革するという目標を掲げ、現場に直接入り込み、現地人との融合を図りつつ、各種の改革を推進した。

その内容は、意識改革、労務・人事、小集団活動、品質管理、収益管理、教育などの幅広い観点から具体的実施内容を逐一説明し、また、着任時点の状態とも対比すると共に、自身での達成度も評価している。
主眼として大きく推進したことは、意識改革であったと言える。その結果として、品質は大幅に改善され、諸問題も好転するとともに、結果として収益は大きく改善された。

 報告者は従前の経営不振の原因は、製品価格の低下、人件費の高騰、顧客の品質要求の高度化等の経営環境の変動に対し、適切な対応がなされなかったと見ている。つまり、日本から派遣されていた経営陣の資質に問題があったとしている。
 そういう意味で、本報告は経営改革の事例を紹介する内容が大半であるが、海外事業の安定的経営を推進するには、派遣される人材の資質は如何にあり、如何に養成されるべきかと問題提起し、日本国際開発学会として取り上げるべき一つの課題であることを示唆したい。
(岡 雄二郎記)


関連ページ:2009年度研究会第1回-22009年度研究会第2回-1

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