The Japan Association for Transnational Studies

第1報告

中国製造業の海外進出戦略 ―日本進出企業の事例研究を中心に─

 報告者:于 欣氏(桜美林大学大学院博士 後期課程)
 司会者:岩井 清治氏(桜美林大学教授)

報告要旨

 本研究は、中国製造業企業の日本進出について、買収の対象となった日本企業4社の実態調査を中心に考察したものです。
 当該4社の事例研究から明らかになったことは、中国製造業企業の対日本進出の目的は、従来の資源獲得型と違い「技術」の習得を目的としていることである。ここで言う「技術」とはいわゆる「技術」そのものと「熟練技能人材」を意味し、この両者がもたらす「総合力」のことである。

進出手段は全部「買収」という形をとる。具体的に4社の事例を見ると、この買収はいずれも金融的な利益を獲得することではなく、企業の発展段階のワンステップとして、「戦略的な買収」と「水平的な買収」の「折衷型」である。
 また、上流や下流の企業を買収するのではなく、同業他社の優位性、あるいは異質共生力を獲得するためにM&Aを行ったことが明らかになった。さらに中国製造業企業の買収相手は大手企業ではなく、比較的参入リスクが低い中小企業であることも一つの特徴と理解される。

買収後の経営業績を分析すると、4社とも売上が伸びているが、この主要な理由は日本市場ではなく、中国国内市場および海外市場における市場シェアの拡大であることが明らかになった。
(于 欣記)


関連ページ:2009年度研究会第1回-32009年度研究会第2回-2

管理人/副管理人のみ編集できます