作成者:ruslan

フックを打つ際、拳を縦にした状態(以後は縦拳)と拳を横にした状態(以後は横拳)を比較します。

まず縦拳では拳を縦に返す動作が大きいのに対して、横拳では返す動作が小さくなります。
そのため動作速度としては、やや横拳のほうが早くなるでしょう。

参考動画 魔裟斗VSキシェンコ 2007年のフィニッシュシーン

(魔裟斗が横拳、キシェンコが縦拳で左フックが交錯しており、横拳の魔裟斗の方が早く到達しています)

拳を縦に返すことで、拳だけでなく手首の関節も内側に反り返るため、肩から先の部位全てが横方向へ一直線に揃います。
そのため縦拳ではヒットする際に、全身で効率よく横方向に力を加えることができるので、貫通力のあるパンチとなります。

対して横拳の場合、手首や拳がまだ反り切る余地があるため、ヒットした際に"ゆるい"状態になってしまいます。
ですから威力では縦拳の方が高くなります

とはいえ縦拳では十分に拳が返っていなかったりヒットする地点を誤ると、グローブの内側で叩くインサイトブローになりやすく、またナックルに当たったとしても拳の外側(薬指・小指側)で叩きがちです。
十分な威力を発揮するためにはナックルの内側で捉えることが必要になるので、「的確にヒット地点を迎えること」と「拳をしっかり返していること」が前提になります。



以上をまとめると以下のとおりです。

縦拳
・拳を返す動作分だけ遅くなる
・貫通力があり、威力が高い
・しかしヒット地点が調整されており、拳が返っていないと威力が発揮されない

横拳
・拳を返す必要が(ほぼ)ないので早い
・ゆるいパンチになってしまい、威力が低い



ちなみに現役選手の中では縦拳で打つ選手がほとんどで、横拳で打つ選手としてはヘビー級のルスラン・カラエフやライト級の久保優太など一部の選手に限られます。
必ずしも縦拳を一概に推奨するわけではありませんが、傾向としては縦拳で威力を重視するほうが多数派のようです。

またアンディ・サワーや魔裟斗などの選手は、場面に応じて条件反射的に横拳も繰り出すこともあるため、どちらも臨機応変に使えることが優位に働くかもしれません。

参考動画 アンディ・サワーVS武田幸三 フィニッシュシーン

(フィニッシュシーンのラッシュでは、サワーが状況に応じて縦拳と横拳を使い分けています)

このページへのコメント

いつも大変興味深く拝見させていただいております。

いきなりで大変ぶしつけですが、私からも一点、ぜひ解説いただきたいお題がございます。

「何故、アーツのハイキックは倒せるのか」

アーツや全盛期ミルコはハイキックで数多くのKO、ダウンの山を築いてきました。
一方、ジマーマンやカラエフといった面々もハイを多用しますが、彼らのハイがクリーンヒットすることは滅多にありません。純粋な蹴りのフォームとしては、後者の面々のそれの方が、いわゆる教科書通りかと思うのですが。

ハイキックを繰り出す局面、体重の乗せ方など、理由は様々かと思いますが、ぜひとも解説いただきたくお願い致します。

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Posted by 修行僧 2011年07月10日(日) 00:51:50 返信

キックボクシング(K-1系含め)の練習ではなぜか皆、声を上げて一発一発を全力で打ち込みます。
しかしこのような光景はボクシングはおろか、もはやMMAでも全く見られません。(少なくともトップどころでは)

確かにキックボクシングでは攻防が分離するため、一発一発の威力が重視されますが、K-1は本来的により柔軟で連続的な競技であるはずです。
ですからそのような練習は淘汰され、脱力されたシャープなパンチを基礎にステップワークを交えた、なめらかなスタイルが生きることになるでしょう。

その点はボクシングの方が一日の長があり、ボクシングトレーナーが交じることで、より加速的に進むことが期待されます。
現にKrushでは瀧谷、日下部、卜部、野杁らがこのようなスタイルで上位に食い込んでおり、むしろ従来型のキックボクサーが苦戦しているのが良い証拠ではないでしょうか。

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Posted by ruslan 2011年05月10日(火) 01:32:48 返信

私にとってK-1がニュートラルポジションで、MMAを見るときには「MMAの息遣いの中での打撃」と一歩身を起こす必要があります。まして打・投・極が融合した高度なMMAを遂行する彼らの打撃解釈は非常に難解です。
この状態で、下手にイメージで書いてしまうと単純に認識違いとなってしまうので、この点に関しては申し訳ございませんが、お答えすることが出来ません。

K-1ファイターについたら・・・ということですが、これに関しては数年前からポツポツ書いてまして、ステップワークと脱力されたパンチが台頭すると思います。
そして現にこのスタイルはKrushにおいて非常に有用性が証明されていることでもあります。

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Posted by ruslan 2011年05月10日(火) 01:26:47 返信

>EAbase887さん

返信が遅れてしまい誠に申し訳ございません。

非常に面白いお話ですが、残念ながら私にとって無理難題すぎるような…(笑)
ローチのスタイルというとパッキャオやカーンが思い浮かびますが、さほどローチ個人について詳しく知っているわけではないので、ここで語っても印象に基づくイメージでしかないので難しいですね。

そしてBJやGSPクラスの選手の打撃を語るには、私の経験値が余りに少ないと思います。
ここではアルロフスキーやハリトーノフ、以前は五味隆典や山本KIDの考察をしたことがありますが、彼らはMMAにおいて打撃だけが露骨に分離したスタイルだったので私でも文字に起こすことができました。

ただBJやGSPの場合は、個々の打撃だけを見ても文字に起こすことができません。

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Posted by ruslan 2011年05月10日(火) 01:24:07 返信

毎回、競技技術の骨格部分や構造などの解説は何かにつけて参考にさせて頂いております。

自分の方からもリクエストがあるのですが、
現在のマニー・パッキャオの師匠であり、MMAにおいてもBJ・ペンやGSPのトレーナーも務めている、現代の、各所でその影が見えるボクシングのフレディ・ローチがもたらした技術とは?戦型とは?そしてK−1ファイターに仮にトレーナーについた場合、いかに戦術に変化があるか?ということをお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。

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Posted by EAbase887 2011年05月07日(土) 02:34:19
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