キックボクシング・K-1 競技者用wiki - フックでの縦拳・横拳の比較
作成者:ruslan

フックを打つ際、拳を縦にした状態(以後は縦拳)と拳を横にした状態(以後は横拳)を比較します。

まず縦拳では拳を縦に返す動作が大きいのに対して、横拳では返す動作が小さくなります。
そのため動作速度としては、やや横拳のほうが早くなるでしょう。

参考動画 魔裟斗VSキシェンコ 2007年のフィニッシュシーン

(魔裟斗が横拳、キシェンコが縦拳で左フックが交錯しており、横拳の魔裟斗の方が早く到達しています)

拳を縦に返すことで、拳だけでなく手首の関節も内側に反り返るため、肩から先の部位全てが横方向へ一直線に揃います。
そのため縦拳ではヒットする際に、全身で効率よく横方向に力を加えることができるので、貫通力のあるパンチとなります。

対して横拳の場合、手首や拳がまだ反り切る余地があるため、ヒットした際に"ゆるい"状態になってしまいます。
ですから威力では縦拳の方が高くなります

とはいえ縦拳では十分に拳が返っていなかったりヒットする地点を誤ると、グローブの内側で叩くインサイトブローになりやすく、またナックルに当たったとしても拳の外側(薬指・小指側)で叩きがちです。
十分な威力を発揮するためにはナックルの内側で捉えることが必要になるので、「的確にヒット地点を迎えること」と「拳をしっかり返していること」が前提になります。



以上をまとめると以下のとおりです。

縦拳
・拳を返す動作分だけ遅くなる
・貫通力があり、威力が高い
・しかしヒット地点が調整されており、拳が返っていないと威力が発揮されない

横拳
・拳を返す必要が(ほぼ)ないので早い
・ゆるいパンチになってしまい、威力が低い



ちなみに現役選手の中では縦拳で打つ選手がほとんどで、横拳で打つ選手としてはヘビー級のルスラン・カラエフやライト級の久保優太など一部の選手に限られます。
必ずしも縦拳を一概に推奨するわけではありませんが、傾向としては縦拳で威力を重視するほうが多数派のようです。

またアンディ・サワーや魔裟斗などの選手は、場面に応じて条件反射的に横拳も繰り出すこともあるため、どちらも臨機応変に使えることが優位に働くかもしれません。

参考動画 アンディ・サワーVS武田幸三 フィニッシュシーン

(フィニッシュシーンのラッシュでは、サワーが状況に応じて縦拳と横拳を使い分けています)