例えば右ミドルを想定します。
一般原則に則ると、左足を左斜め前方方向へ踏み出しながら、右半身を左方向へ回し、体の回転に任せて足を放り出します。
しかしこれでは人体構造の特性を生かせず、
単に体全体でぶつけるだけの蹴りになってしまいます。
(人体は関節を通して、遠位から近位へと運動を伝えられます。この特性により、一つの部位を用いた時の何倍もの力を生み出すことができます。)
例として野球のピッチング(右投げ)を想定してみてください。
左足を踏み出し、右半身を回転させながら、回転に沿って腕が放り出されます。
この時、左足はどのようになっているでしょうか。決して外側方向へ向いていないはずです。
(
参考画像→涌井投手のピッチング画像)
もしもピッチングにおいて左足を外側に踏み出していると、右半身の回転に左半身が耐え切れず、骨盤の回転から始まる一連の運動連鎖がふいになってしまい、手投げ状態になってしまいます。
左足が右半身の回転に抗う「ブレーキ」として機能することで、一連の運動を末端部の腕・手に伝えることができるのです。
右ミドルを蹴るときに左足を外側に踏み出すということは、ピッチングにおいて左足を外側に踏み出していることと同じことなのです。
ここでも右ミドルを想定します。
左足を外側でなく、内側へ踏み込むと、左の下半身に右向きの力が働きます。
それと同時に右半身を左方向へ回転させると、
左半身の右向きの力が、右半身の回転に対する「ブレーキ」として機能するのです。
左半身の右方向へのブレーキ、右半身の左方向への回転。
この二つの要素が合わさることで、自動的に「体のうねり」が生み出されます。
よく蹴りを放った際に、全身が一本の棒のようになるよう上半身を入れろ、というような指導がなされますが、それは誤りです。
「全身が一本の棒のようになる」ということは、うねり動作を適切に用いたときに現れる外観であり、それが本質ではないからです。
仮にそのような外観を強引に作ったとしても運動連鎖は起こらず、上半身を強引に力ませることになるため、いたずらに体力を消耗してしまいます。
この「うねり」が発生することにより、上半身や下半身の筋肉(遠位)の力を蹴り足(近位)に伝えることができ、自然と蹴り足の運動量が増幅されます。
<まとめ>
内側に踏み込む
↓
踏み込み側にブレーキがかかる準備がなされる
↓
それとは反対側の半身と回転とぶつけり、ブレーキがかかる
↓
「うねり」が生まれる
↓
運動の連鎖が起こり、蹴り足の運動量が増幅される